sky-sky!diary

横浜在住Tuba吹きの小さな日常。Don't worry,be happy.

かつて無い戦争映画だと思う。

2006-12-15 21:35:23 | Movie!
正確には「日本軍を描いた映画としては」という枕詞がつきますが。
200612152134000_1硫黄島からの手紙
 
 
 
 
 
 
日本人が日本軍を描いた映画(テレビドラマでも良いけど)は、まず間違いなく感動的な音楽が流れ、登場人物が泣き叫び、戦争中とは思えないキレイな顔立ちの美男美女が悲劇的なお涙ちょうだいのお話を展開する。戦争をテーマにすればどうしたってそうなり易いのは分かりますが、同じ日本人の自分が観たってうんざりするような作品しか観たことが無かった。戦争というテーマが重いという事と同時に、そういう作品しか無いというのが、戦争映画を積極的に観ようと思えなかった理由でもある。かといって洋画の戦争モノも必要以上に派手で格好良すぎるしねぇ。で、前置きが長くなりましたがこれは見事に裏切られました。それも良い方に。まず驚いたのがBGM。オーケストレーションはゼロ。ほぼピアノとTpのソロだけでメインテーマを奏でるという地味なもので、硫黄島の殺伐とした感じの表現なんだろうなぁと思う。暑くて、水も無くて、硫黄の匂いが立ちこめる中でひたすら穴を掘るという軍隊とは思えない日々の中で、自分たちを殺しに来る敵の大軍を待つ気持ちというのはいかなるものか。間違っても鳥肌が立つような劇的な音楽はそこには無いだろうな。そして最も驚いたのは、もの凄くドライに、淡々とストーリーが進んでいったということ。アメリカ人が表現する日本軍、日本人の戦いというのはこうなのかと。もしかしたらクリント・イーストウッドの視線なのかもしれないけど、でもかえってその方が僕としてはすんなり受け入れる事が出来た。過度な演出は極力排除されている映像。一部分を除いてモノクロである画面とも相まって、自分もそこに居ると思わされる程のリアルさ。いきなり始まった自決シーンなどは、そこに居るはずは無いのに「次は自分だ」なんて思ってしまってドキドキしてた。おそらく日本人には作ることが出来ない戦争映画だと思う。同じキャストでも、全く違う演出になっちゃうだろうなぁ。印象に残ったのは、渡辺謙が演じた栗林中将が、決戦の前に士官を集め、兵士たちに放送した演説の最後に「天皇陛下万歳」というシーン。普通なら、背筋を伸ばし、両腕を目一杯伸ばして「万歳!」と叫ぶのでしょうが、ここでは猫背になり、上目遣いになったまま少しだけ腕を上げて押し殺すように「万歳・・・」と。本当にそういうものだったのかも知れませんが、周りの士官たちは普通に叫んでいるだけに、より印象的でした。上級士官でありながら戦況をまるで知らされずに硫黄島へ送り込まれ、絶望的な戦いに臨まなければならない指揮官はどういう気持ちだったか。このシーンに凝縮されているように思います。なによりイーストウッド監督がこれをキチンと理解しているのが驚き。でなければああいう演出は出来ないはず。アメリカでは「硫黄島からの手紙」の評価がかなり高いらしい。感情移入出来るという点では「父親たちの星条旗」の方がアメリカ人には向いているんじゃないかと思うんですがそうでもないようです。普通の日本人なら「父親たちの星条旗」の方がいいと思うのかも知れませんが、逆の事がアメリカ人にも言えるのかも知れません。

コメント
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