戦争や 災害の経験を 語り継がねばならぬ人たちがいる
遠野のように 故郷に伝わる昔話を 次の世代に伝える人たちもいる
ならば 私は何を語るのだろう?
その時 思い出すのは Kさんの事だ
Kさんは 子どもの頃から本が大好き おはなしをするのも大好きで
私が初めて出会った頃 Kさんは80歳位だったと思うが イギリスの児童文学者ファージョンの作品を30分以上も語っていた
もちろん 本なしである
Kさんのご自宅で 初対面の私に 自分の半生を滔々と語るKさんに度肝を抜かれた記憶がある
私が話す昔話や 自分で書いたエッセイ 短い創作を いつもにこにこと聴いて下さった
暖かく包容力のあるKさんとは 亡くなるまでの2年半のお付き合いだった
私が今でも「おはなし」を続けているのは Kさんという存在を見ているからだ
私も 子どもの頃 本の中の世界に浸っているのが大好きだった
それを人に語ることになるとは考えもしなかったけれど 今では 聴いてくれる人がいる限り 続けていきたいと思っている