仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

のめる / 柳亭市馬(四代目)

2021年10月17日 | エンタメ
落語『のめる柳亭市馬(四代目)。
噺は、「何かと"つまらねぇ、つまらねぇ"と言うたつ公に、"陰気臭いからやめたほうがいい"と助言したところ、お前だっていつも、"のめる、のめる"って言ってるじゃねえかと返された八っつぁん。お互いに悪い口癖だから、一言でも口癖を言ったら、一回一円の罰金を取ろうと取り決めたのだが・・・」という内容。
罰金と言い出したのはたつ公。
賭けを切り出すだけあって少しずる賢い人のようだ。
八っつぁんのほうは、何だか呑気な人らしく、たつ公の策にすぐに引っ掛かってしまうのだった。
相談され、面白がって策を授けるご隠居さんも楽しんでいるようなのがいい。
さて、演者の四代目柳亭市馬師匠の出囃子は、吾妻八景(あづまはっけい)という長唄。
これは、四世杵屋六三郎(一世六翁)が作曲したものの(作詞者は不詳らしい)ようで、文政12(1829)年に初演されたのだという。
日本橋、御殿山、高輪、駿河台、浅草、隅田川、吉原、池の端といった江戸の八景を四季の移り変わりとともに歌っているのだそうだ。

妾馬 / 柳亭一馬

2020年12月31日 | エンタメ

落語『妾馬』柳亭市馬(四代目)。
噺は、「大名に見初められて側室となった町娘のおつるが、殿様の世継ぎを生み、"おつるの方" と呼ばれる身分になった。"我に一人、がさつなりといえども兄がございます。どうぞ一辺会うてやってくださいまし"との口添えがあり、屋敷に呼ばれた八五郎。長屋の大家から紋付、羽織、袴と足袋と草履まで借りて丸の内へと出掛けるのだが・・・」という内容。
大家に呼ばれ、「おつるが大変なことになったぞ」と聞いた八五郎は「ありゃぁ、何か持って逃げた?」と、あっけらかんと言ってのける。
屋敷に着いてからも、桐と鳳凰が描かれた襖絵を見て、「ゆんべ、これが一枚きてりゃあなぁ」と、場所が変わっても言いたいことばかり言っているのが面白い。
これは、『八五郎出世』とほぼ同じ内容の噺なのだが、元々は『妾馬』として演じられていた噺が、近年は最後まで演じられることがあまりなくなり、『八五郎出世』として演じられていることも多いらしい。
確かに "妾(めかけ)" という言葉は、今となっては死語だ。
さて、演者の四代目柳亭市馬師匠の趣味は、「流行歌を聴き、歌うこと」とのことだが、『柳亭市馬の懐メロ人生50年』(白夜書房)という著書もあるようだ。
『夜行列車』という音楽CDも出されているし、随分と多才な師匠のようである。
(^_^)


八五郎出世 / 柳亭市馬(四代目)

2018年10月12日 | エンタメ
落語『八五郎出世柳亭市馬(四代目)。
噺は、「大家に呼ばれた八五郎は、赤井御門守のお屋敷に奉公に上がっている妹のお鶴が世継ぎを産んだと聞かされた。さらにそのお屋敷にも呼ばれてしまった八五郎は、大家に着物と履き物を借りて、お屋敷では丁寧な言葉を使いなさいと助言を受けて送り出されるのだった。丸の内の屋敷に着いた八五郎は、側用人・田中三太夫に御前まで案内されたのだが・・・」という内容。
八五郎はとにかく言葉が汚いので、大家から「言葉の頭に"お"を付けて、言葉尻には"ござる"か、"奉る"と付けておきなさい」と言われたのだが、使い慣れない言葉を使っているうちに自分でも何を話しているのか分からなくなってくるのが面白い。
友達と話すようにしてもいいと言われて、あぐらをかいて、いつもの調子で話し始めるのだが、「殿様、お互い見栄の張りっこはやめましょうよ」と、すっかり酔っぱらってしまって言いたい放題だ。
何も分からないというのはホントに幸せなことだ。
(^。^)
枕では、「落語家は真打ちを目指していろいろ辛抱をいたしますが・・・」というような話をされていた市馬師匠だが、真打昇進は1993(平成5)年。
2014(平成26)年からは、柳家小三治師匠の後を継いで落語協会の会長職に就いている。
落語家は真打になると師匠と呼ばれるようだが、今は師匠ではなく会長と呼ばれているのだろうか。
(^_^)

二番煎じ / 柳亭市馬(四代目)

2018年07月02日 | エンタメ
落語『二番煎じ』柳亭市馬(四代目)。
噺は、「ある冬の夜。番太郎だけでは心もとないので、町内の旦那衆も夜回りを行うことになった。大宮さんの提案で二組に別れて回ることになったものの、寒くて手を出したくないので懐の中で拍子木を打ったり、冷えた金棒を握りたくないので紐を腰に結わえて引きずって鳴らしたり、提灯を股ぐらに入れて暖をとったりと皆が横着で不真面目。挙げ句には掛声どころか威勢よく歌い始める始末だ。あっという間に町内を一周し、火の番屋に戻ってきたその第一班は・・・」という内容。
江戸時代には町ごとに木戸があり、夜になると閉じられていたそうで、番太郎というのは木戸の番をする人。
木戸番屋とか火の番屋と呼ばれるその小屋に住み込んでいたのだという。
役人の見回りもあるという番小屋で暖をとっていると、ちょっと一杯やりませんかと酒を出す黒川先生。
立場を考える月番の男は、ひょうたんの中身を土瓶に移させ、火にかける。
"煎じ薬"なら問題なく飲めるだろうと言うのだが、自分もちゃんと一升瓶を携えて来ていたのだから、皆さん考えることは一緒だったようで、しかも、しし鍋の用意までしているのだから笑える。
(^。^)
演者の柳亭市馬師匠の、煮えてる鍋のネギを熱そうに食べる様子が本当に美味しそうだ。
(^_^)
これは何とも素晴らしい芸だと思うのである。

長屋の花見 / 柳亭市馬(四代目)

2018年04月12日 | エンタメ
落語『長屋の花見柳亭市馬(四代目)。
噺は、「貧乏長屋などと言われ世間で良い評判がたっていないことを知っている大家が、花見に出掛けようと長屋の連中に声を掛けた。店賃の催促かと思っていたが、宴会の割り枚も要らないと言うので大喜びでお礼を言う店子たちだが、あまりにも皆が素直に喜ぶことに気がとがめた大家は、早々にネタを割る。実は一升瓶の中味は番茶を煮出して水で薄めたもの。玉子焼きに見えるのは沢庵で・・・」という内容。
用意された三本の一升瓶は、ラベルは違うものの中は一緒だという。
この時点で「ん!?」という感じだ。
(^_^;)
お茶と沢庵を持ってしぶしぶ花見に出掛けることになった長屋の連中だが、貧乏なりに楽しもうとするのは大家だけ。
あとの連中は、荷物を担いで出掛ける時、まるで出棺の時のように「ご親類の方は揃いましたか?」と言ってみたり、毛氈に見立てたむしろを敷いて車座になり「いい色出したねぇ」と酒(!?)に妙に感心したりもして、付き合わされている感がありありで、どうにも適当だ。
店賃をため込んでいたり、それなりの理由があって大家には逆らえないのだろう。
(^。^)
しかし、貧乏なりに暮らしを楽しんでいるようにも思えて、面白い。
さて、演者の四代目柳亭市馬師匠は、『落語集』、『名演集』など、多くの落語CDを出されているようだが、2008(平成20)年には、♪夜行列車♪という楽曲で歌手デビューも果たしているのだそうだ。
すごいね。
(^_^)

三軒長屋 / 柳亭市馬(四代目)

2018年03月19日 | エンタメ
落語『三軒長屋』柳亭市馬
噺は、「九尺二間の三軒長屋。取っ付きが鳶の頭・政五郎。真ん中が質屋・伊勢屋勘右衛門のお妾さん。一番奥に剣術道場を開いている楠運平橘正国(くすのきうんぺいたちばなのまさくに)という先生が住んでいる。ある日、鳶の辰が喧嘩の仲裁をしなければならないので二階を貸してほしいと、頭の所にやって来た。頭が不在だったので、あねさんと慕う政五郎の女房と交渉するのだが・・・」という内容。
喧嘩をするんじゃないよ、静かにするんだよ、お前は酒を飲むんじゃないよ等と言ったところで、威勢のいい鳶職の連中だ。
顔を立てる立てない、でかいツラするな、俺の酒が飲めねぇのか、なんてことになると、おとなしくするという約束など守れる訳がない。
内輪もめが始まってしまうのは時間の問題だ。
(^_^;)
演者の四代目柳亭市馬師匠は、五代目柳家小さん(1915年~2002年)師匠の弟子。
共に剣道家であるといい、「剣道をやっていたから弟子になれた」なんてことらしいのも面白い。
(^_^)

お神酒徳利 / 柳亭市馬(四代目)

2018年02月04日 | エンタメ
落語『お神酒徳利』柳亭市馬
噺は、「日本橋馬喰町にある旅籠・刈豆屋吉左エ門。暮れの十二月十三日は、例年昼間にすす取りをして、夜は店の者の宴会をするのが恒例だった。その際、夕方には家宝である三つ葉葵の紋がついたお神酒徳利を蔵から出し、主が神棚に手を合わせる。昼間、二番番頭の善六は、台所に無造作に置いてあるお神酒徳利を見つけ、"不用心だな。ここに入れておけば盗まれることも落とすことも無いだろう"と、お神酒徳利を水がめの中に沈めた。ところが、そそっかしくて物忘れが激しい善六は、そのことをすっかり忘れてしまい、家宝の紛失騒ぎに発展してしまうのだった。主が気分を悪くして寝込んでしまい、宴会も中止となって、仕方がなく家に帰った善六は、鉄瓶に水を足そうと水がめの蓋を開けた瞬間に、"あっ"と思い出した。そのことを嫁に相談する善六だったが・・・」という内容。
善六の嫁は主にことのほか気に入られているのだそうで、父親が占い師をしているのも知っている主は、「生涯に三つどんなことでも分かる益の書という巻物が家にあって・・・」と言う善六を疑うこともない。
にわか易者となった善六は、そろばんをパチパチとはじいて、お神酒徳利の在処を言い当てるのだが、自分が置いた所を言うだけなのだから、これは出てきて当たり前。
(^_^;)
おかしな騒ぎにもならず一件落着となるはずだったのだが、そこは落語のお話。
善六には数奇な運命が待ち構えているというわけだ。
これはなかなかに面白い噺で、しかも、演者の柳亭市馬師匠がはじくそろばんの音が、素晴らしく良い音なのだった。
(^。^)