【時事(爺)放論】岳道茶房

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風邪と自殺と沖縄と

2010年06月02日 | 新聞案内人
風邪と自殺と沖縄と

 五月の連休前後からずっと、風邪が流行っているらしい。

 知人の大学教授によると「教室中、咳だらけ」だそうだし、友人の開業医も「このところ風邪の患者が多い」と言っていた。私も風邪でせっかくの連休をフイにした。

 それなのに、新聞には風邪のニュースが載らない。テレビも報じない。とすると、風邪の流行は私の周辺に限った現象なのだろうか。
 作家の山口瞳に同じ思いのエッセーがある。自分の体調がよろしくない。微熱が続き、楽しみにしていた旧制中学の同期会にも出られなかった。そう前置きして、
〈私の知っている人だけで風邪っぴきは十人を下らない。これはもう社会現象だと言っていいと思うが、新聞は少しも騒がない。新聞社はどこそこの小学校で学級閉鎖があったとか何とかにならないと教えてくれない〉

 指摘されればその通りだと、現役記者の頃を思い出して私はうなだれる。
 風邪が流行っていると知っていても、役所が患者数をまとめて発表するまでは、マスメディアはほとんど扱おうとしない。「発表」という後ろ盾があって初めて原稿を書く。私にも覚えがある。
 「発表ジャーナリズム」である。

 昔々「ジャーナリズムはセンセーショナリズムだ」と解き明かした評論家がいた。ご当人は新聞記者出身だったから、言葉にはいささかの信憑性(しんぴょうせい)があった。

 「犬が人を噛んでもニュースではないが、人が犬を噛んだらニュースである」と定義づけた人もいた。この人も元新聞記者だった。

 そうした見方からすれば、ふつうの風邪の蔓延(まんえん)は特段のニュースではなかろう。風邪だけで死ぬ人は滅多にいない。

 しかし「風邪は万病の元」でもある。あらゆる病気の元と言えなくもない。油断するな用心せよ、と昔の人は教えた。なんの風邪ぐらい、と強がって痛い目に遭った人は多い。そこまで行かずとも、仕事にも家事にも支障を来す。
 かりに風邪が流行しているとすれば、そのニュースは人びとにとって有用なはずだ。

 警察庁の発表によると、昨年1年間の自殺者は3万2845人で、前年比前年比1.8%増。12年連続で3万人を上回った。

 ただし、有名人の自殺や練炭を使った自動車内での集団自殺などは別として、一つひとつの自殺のニュースは、ほとんど新聞に載らない。自殺は警察庁が数字を発表した際に、まとめ記事として扱われる程度である。

 けれども、3万人の死は山口瞳の言葉を借りれば「これはもう社会現象だと言っていい」。同じ昨年1年間の交通事故による死者は、警察庁によれば4914人(事故から24時間以内に死んだ人の数)だ。自殺者の方が6.7倍も多い。

 駅のアナウンスが「人身事故のためダイヤが乱れております」と伝える。ほとんどの乗客は「人身事故とは自殺のこと」と知っている。男かしら女かしら、どんな事情だろう、急いでいるのに迷惑だ、などと思う人もいるだろう。
 しかし、たいていの場合メディアは報じない。
 もちろん、プライバシーの問題はある。遺書でもない限り、自殺した原因がすぐにはわからない、といった状況もある。
 3万件をはるかに上回る自殺をいちいち報じていたらきりがない、という考え方もある。なにより、交通事故と違って警察がデータを積極的には発表してこなかった経緯がある。

 だからといって、マスメディアが日々起こっている「社会現象」に触れなくていいものかどうか。3万2845人という数字は、単なる積算の結果ではあるまい。3万2845人の生と死が、そこにはある。いまの社会の姿を映す鏡、という見方も成り立つ。

 1日の各紙朝刊には〈首相退陣論強まる〉=日経新聞、〈首相退陣要求強まる〉=読売新聞、〈首相退陣論が噴出〉=朝日新聞といった大見出しが躍っていた。マスメディアも多忙を極めている。

 さなか、私が選者を務めている「朝日川柳」に、こんな投句があった。

 〈紙面からもう沖縄の記事が消え〉

 読者とは鋭く、油断ならない存在である。

 いまは建て替えられたが、東京・有楽町の東京宝塚劇場は、敗戦から1955年までの9年余、「アーニー・パイル劇場」と呼ばれていた。進駐軍が接収し、米軍兵士の専用劇場で日本人客は入ることを禁じられた。

 パイルは従軍記者だ。1945年4月、沖縄戦で日本軍の銃撃を受け、死んだ。最期の地、伊江島に、いまも碑が立っている。〈歩兵第77部隊は仲間アーニー・パイルをここで失った〉。功績を記念し、その名が占領地日本の劇場に付けられた。当時、そうした例は珍しくなかった。むろん、現在はない。

 と書きたいけれど、現在もある。沖縄に、いくつもある。普天間基地の移転問題で紙面に繰り返し登場した「キャンプ・シュワブ」が典型例だ。アルバート・シュワブは米海兵隊の上等兵。沖縄本島での激戦で、彼は日本軍の機銃掃射の弾幕をものともせず突進。日本兵12人を殺し、敵の機銃陣地を破壊した。英雄シュワブの名が、基地の名になった。

 シュワブの隣のキャンプ・ハンセン訓練場も、海兵師団の司令基地であるキャンプ・コートニーも、すぐ南のキャンプ・マクトリアスも、沖縄戦で戦功をあげた兵士の名にちなむ。米軍の内部文書がそう記している。

 『情報公開法でとらえた沖縄の米軍』(梅林宏道著、高文研)を読むと、こうした事実が詳述してある。その一節。
 〈沖縄の基地を考えるときに重要なのは、米軍が激しい戦闘の末に占領し、それが今日まで続いているという事実だ〉
 〈戦勝者がそのままそこにいるのが現在の沖縄の姿である〉

 風邪も自殺も、マスメディアの手から漏れがちである。
 性格はずいぶんと違うけれど、沖縄の問題も漏れがちである。

 投句からもう1句引く。日米共同声明が主題だ。

 〈共同と言うが降伏文書なり〉

2010年06月02日 新聞案内人
栗田 亘 コラムニスト、元朝日新聞「天声人語」

子ども手当 「社会で育てる」大切に

2010年06月02日 | 社説
子ども手当 「社会で育てる」大切に

 子ども手当の支給が今月から始まった。財政との兼ね合いから、来年度からの満額支給を見直す動きがある。子供は社会が育てるという理念を、少子化に直面する世の中に広げたい。

 本年度の手当は、中学生までの子供一人当たり月一万三千円が支給される。

 民主党政権は、来年度からは満額二万六千円の支給を公約としてきた。ところが財政事情から、減額案が出る一方で、小沢一郎幹事長が大幅修正には慎重姿勢を示すなどなかなか決着しない。

 これまで子育ては家庭に任され、支援策もそれを補助的に支えるだけで、少子化は止まらなかった。社会で子育てを支えようと政策転換したのが民主党政権。同手当はその看板政策になる。

 「社会で支える」という理念は国民が共有すべきだ。所得制限論もあるが、同種手当は保護者の所得に関係なく、すべての子供へ支給するのが世界的な流れだ。

 先月公表された「二〇一〇年版子ども・子育て白書(少子化社会白書)」によると、子育て中の女性が求める少子化対策(複数回答)は、「経済的支援」(72・3%)がトップ、二位の「保育所などの充実」(38・1%)の倍近くで、経済支援は重要だ。

 だが同時に、待機児童解消のための保育所整備や子供の貧困対策、子育てできる労働環境など働き方の見直し、雇用・収入が不安定な非正規が多く結婚しにくい若者の就労支援など、求められている政策や解決すべき課題は多い。

 少子化対策など家族関係社会支出の対国内総生産(GDP)比は、欧州の3%前後に比べ日本は1%未満だ。少子化対策全体への積極的な財政投入が要る。

 しかし現実の財政事情は厳しい。国債発行で借金を重ねれば、当の子供たちにツケが回る。現状のままなら年五・四兆円の財源が必要な満額支給は不可能だろう。ただ、国民には安心できる社会サービスが得られるなら、税負担を受け入れるという理解は広がっている。消費税を含む税制全体の見直しを図るべきだろう。

 子供が国外で暮らす在日外国人にも支給を可能にする制度の矛盾は見直される方向だが、自治体や企業が財源の一部を負担する児童手当制度は残したままで、一一年度以降の制度の検討も進んでいない。子育てに役立てるために、常なる検証と見直しを行い充実した制度にするべきだ。

2010年6月2日 中日新聞 社説

6/2中日春秋

2010年06月02日 | コラム
6/2中日春秋

 <オレと同じくれえかなと思うときは、向こうのほうがちょい上で、うめえやと感心した日にゃァ格段の開きがあるもんです>。落語家の古今亭志ん生の言葉だ。芸事だけでなく仕事にも通じる至言である。

 言わんとするのは、決しておごってはいけないよということだろう。<勝って兜(かぶと)の緒を締めよ>との戒め通り、順風満帆のように見える時こそ落とし穴にはまりやすい。政治の世界もまた、例外ではないようだ。

 歴史的な政権交代からわずか八カ月で、民主党内から「鳩山降ろし」が公然と噴き上がるとは誰が予想できただろう。鳩山首相じゃ戦えない、と参院の改選組から悲鳴が上がる。

 内閣支持率は「危険水域」の20%を切り、政党支持率も泥舟から逃げ出すように有力政治家が去った自民党の後塵(こうじん)を拝した。複数の候補者を擁立した選挙区は共倒れの危機感が漂う。

 つまずきは、ツートップの「政治とカネ」と米軍普天間飛行場の移設問題での総理のリーダーシップの欠如が決定的だったが、それだけだろうか。六時間の審議で強行採決した郵政改革法案に象徴されるおごった国会運営は、悲しいほど醜悪だった。

 野党時代、与党の強行採決にあれほど「議会制民主主義を踏みにじる」と訴えたのに同じことを繰り返す。古い政治を変えたいと願った有権者の心も踏みにじっていることが分からないのだろうか。

首相交代に警戒感 自民

2010年06月02日 | ニュース政治
首相交代に警戒感=本音は鳩山政権で参院選-自民

 鳩山由紀夫首相の退陣論が民主党内に広がる中、自民党は内閣不信任決議案や首相問責決議案を提出して攻勢を強める構えだ。ただ、自民党内には、「政権の顔」が代わることで、民主党が息を吹き返す可能性への警戒感もあり、一気呵成(かせい)に政権打倒とはいけないもどかしさもある。

 「内閣不信任案を早く出すべきだ。一体誰がこの内閣を信任しているのか世に示すべきだ」。1日の自民党総務会では、若手の稲田朋美氏がこう発言した。内閣不信任案や問責決議案を連発し、一気に内閣総辞職や衆院解散に追い込むべきだとの強硬論だ。これに対し、大島理森幹事長は「心得ている。首相が辞めてから出しても意味がない」と応じた。

 参院選の比例代表投票先を問う世論調査で、自民党が民主党を上回るなど、自民党内には明るい展望も見え始めている。政権奪還を目指す同党としては、「まずは現政権を倒さないと、次に進めない」(中堅)との思いも強い。

 ただ、同日の役員会では、鈴木政二参院国対委員長が「首相問責決議案は通ってしまう可能性がある」と早期提出に慎重な考えを示し、若手からも「民主党代表選で新しい人が登場すれば、自民党の影は薄くなる」と懸念する声が出た。

 参院(定数242)の与党議員は、社民党の連立離脱で122議席と過半数を辛うじて維持している。仮に民主党議員の中から造反が出れば、問責決議案は可決される可能性がある。決議案に法的拘束力はないものの、身内の造反による問責可決は政権には致命傷となり、影響は大きい。

 支持率が20%を切った鳩山内閣で参院選に臨みたいのが、自民党の本音。首相と小沢一郎民主党幹事長の再会談について「かたずをのんで見守っている」と語った自民党首脳の表情には、首相続投への期待がにじみ出ていた。

2010/06/01 時事通信

郵政法案 参院で徹底的に審議せよ

2010年06月02日 | 社説
郵政法案 参院で徹底的に審議せよ

 郵政民営化に逆行する郵政法案が31日夜、衆院を通過した。

 極めて問題の多い法案を民主、国民新の与党は衆院総務委員会と同様、衆院本会議でも採決を強行した。「数の論理」で強引に進める手法は民主党がうたってきた議会制民主主義を踏みにじるものであり、情けない。

 法案審議は参院に移るが、徹底審議を行うべきだ。法案の全面的修正や出し直しが必要である。

 与党が採決を急ぐ背景には、参院選での郵政票への期待があるとされる。党利党略を優先させ、国民をないがしろにするのであれば国を誤りかねない。

 「郵政解散」で国民の信を問うた郵政民営化を根本から見直す以上、政府・与党は審議を通じてその内容や意義を国民に丁寧に説明する責務がある。委員会審議を約6時間という異例の短さで打ち切ったのは説明責任の放棄だ。小泉政権時代、郵政民営化法案が衆院だけで約110時間の審議を尽くしたこととあまりにも違う。

 民主党出身の横路孝弘衆院議長の対応も問題が多い。与野党協議を積極的に斡旋(あっせん)しようとしなかったばかりか、慎重審議を求める野党側が本会議の延期を申し入れに来た、その目の前で開会のベルを鳴らした。国会ルール以前の礼儀を欠いた行為といえよう。議事進行の公平性を保つことが議長の最低限の使命のはずだ。

 そもそも、この法案は「非効率な官業を見直し、資金の流れを官から民に変える」という郵政改革の根幹理念を見失っている。衆院本会議で、自民党の小泉進次郎議員が「行政の肥大化につながる本法案は国民に対して無責任」と指摘したのも当然だ。

 特に問題なのが民業圧迫だ。郵貯と簡保の株を政府が3分の1超保有し続ける上、預入限度額を約2倍に引き上げる。これには民間金融機関が「政府の関与を残したままでは預金が郵貯に流れ、公平な競争条件が確保されていない」とそろって反対しているが、政府は明快な説明をしていない。

 亀井静香郵政改革・金融相は1日の会見で「5年前に可決された無謀な法律(郵政民営化法)をひっくり返す状況になった。日本が良識を取り戻しつつある」と語ったが、全く認識が逆であろう。

 政府は参院でこうした疑問にしっかり答える必要がある。このまま強引に成立させれば、将来に大きな禍根を残す。

2010.6.2 産経新聞 主張

6/2産経抄

2010年06月02日 | コラム
6/2産経抄

 コップにビールが半分入っているとする。「もう半分しか残っていない」とがっかりするか、「まだ半分も残っている」と喜ぶかは、個人の勝手だが、後者の方がずぶとく楽しい人生を送れるのではないか。

 鳩山由紀夫内閣の支持率が小社とFNNの合同世論調査でも19・1%と2割を切った。政権発足直後と比べれば、50ポイント近く急落した。コップの中のビールはほとんど消えてしまったが、民主党のお歴々は「まだ2割近くも残っている」と喜ぶべきだろう。

 鳩山首相の不人気ぶりに、今夏に改選を控えた民主党の参院議員からは「これでは当選できない」と悲鳴があがっているが、滑稽(こっけい)な話だ。6年もある任期中の議員活動に自信がない証拠である。

 毎月のように世論調査を大々的に報じておいて天に唾(つば)するようなものだが、政治家は支持率の数字に一喜一憂すべきではない。内閣や政党の支持率は、その時々の人々の気分を正確に反映しているが、世論ほど移ろいやすいものはないからだ。

 それでも支持率が気になるセンセイは、きのう発売された月刊正論に載っている西部邁氏の「文明の敵・民主主義を撃て」をお読みになるといい。西部論文を要約する愚は避けるが、「『民衆の声は痴愚の声』だ、と真実を喋(しゃべ)る者が出てきてよい時期である」と小気味いい。

 国政の舵(かじ)取り役である首相には、高い見識と固い信念、困難な政策を実行する指導力が求められる(そんな人はいないが)。小欄は鳩山さんにいずれの能力もないと思っていたが、民主党は昨年、自信を持って首相候補として送り出し、衆院選で圧勝した。ならば、民衆が選挙で「ノー」というまで続投させるのが筋だろう。汚れた表紙を変えてもダメなものはダメなのである。

税収見通し:09年度37兆円超

2010年06月02日 | ニュース政治
税収見通し:09年度37兆円超 バブル後最低下回る

 財務省は1日、2009年度の一般会計税収は4月までの累計で前年同期比16.4%減の32兆8485億円だったと発表した。ただ、企業業績の改善で法人税収は想定を超えるとみており、最終的な税収は37兆円超と、第2次補正予算後の見積もり(36兆8610億円)を上回る可能性が出てきた。

 09年度税収は、5月末までに納付された3月期決算企業の法人税などを加えて確定する。税収が補正予算後の見積もり額を上回れば4年ぶりとなるが、バブル後最低だった03年度(約43兆3000億円)を大幅に下回る見通しだ。

 4月までの主要税目の収入累計は、所得税が前年同期比13.8%減の12兆8504億円、法人税は60.6%減の2兆7647億円。消費税は5.1%減の8兆336億円だった。菅直人財務相は1日の記者会見で、09年度税収額は昨年12月に策定した第2次補正予算後の見積もりを超えるとの見通しを示した。

2010年6月2日 毎日新聞

鳩山首相進退 民主党は密室排し広く議論を

2010年06月02日 | 社説
鳩山首相進退 民主党は密室排し広く議論を

 鳩山首相の進退をめぐって、民主党内が混乱している。

 参院選の改選議員を中心に、首相退陣論が噴き出した。米軍普天間飛行場移設問題などによる内閣支持率の下落や、社民党の連立政権離脱に伴う参院選への悪影響を懸念してのことだ。

 党内の厳しい声を伝えるため、小沢幹事長と輿石東・参院議員会長が、1日夜、鳩山首相と会談した。首相らは会談の中身を明らかにしなかったが、この日は結論を持ち越し、引き続き協議することになったという。

 だが、政権の行方を左右する重大な局面で、党首脳ら3人が密室で対応を決めてよいのか。

 改選議員らの首相進退を問う発言も、記者会見などでの意見開陳に過ぎず、党内では一度も論議されていない。全議員による懇談会や、広く党員や地方組織にも意見を聞くなど、オープンな場で堂々と議論するのが筋である。

 そもそも、鳩山政権が失速した一義的な責任が首相にあるのは確かだとしても、首相だけが責任を負うべきものなのか。

 小沢氏は、自らの資金管理団体の政治資金規正法違反事件で、国会での説明責任をいまだに果たしていない。

 普天間問題での連立与党内の調整にも積極的に動かなかった。社民党の連立離脱では、小沢氏の責任も重大だ。

 小沢氏に距離を置く仙谷国家戦略相や前原国土交通相らは、鳩山首相の続投を支持している。

 首相だけが交代し、小沢氏が幹事長にとどまれば、誰が後継首相になっても、小沢氏が党の実権を握る「二重支配」が継続する。これを懸念しているのだろう。

 だが、仙谷氏らが、そうした党内力学を優先した発想で、首相の続投を支持するのは無責任だ。むしろ、首相と小沢氏の連帯責任を問うべきではないのか。

 民主党内ではこれまで、首相や小沢氏の「政治とカネ」の問題が表面化しても、2人の進退を問う声がほとんど出てこなかった。その結果、自浄作用の働かない政党という印象を強めたことも、有権者の民主党離れの一因である。

 今回、首相の退陣を要求している参院議員たちも、他の民主党議員同様、これまで沈黙してきた責任は免れない。落選の危機を感じてようやく批判の声を上げるのは、あまりにご都合主義だ。

 参院選への逆風を吹かせてしまったのは、民主党自身であることを自覚すべきである。

2010年6月2日 読売新聞 社説

6/2余録

2010年06月02日 | コラム
6/2余録「首相進退で緊迫」

 「御身持(おんみもち)よろしからず、しばらく御慎みあるべし」。殿様の前にある日、家老、重臣がそろって現れ、こう言上する。それが「押込(おしこめ)」の執行宣言だという。すぐ家老の指揮により目付や物頭が殿様から大小の刀を取り上げ、身柄を拘束した。

 「押込」とは悪政や遊蕩(ゆうとう)で家臣や領民を困らせた主君を家臣団が監禁することだ。監禁の末に主君が改心して君位に復帰することもあったが、だめならば強制隠居となった。いわば御家(おいえ)存続を大義名分にしたクーデターだ。

 この「押込」、日本史家の笠谷和比古さんの研究で江戸時代に広く慣行化されていたことが明らかになる(「主君『押込』の構造」講談社学術文庫)。いわば「殿様おろし」だが、主家がからんだ家臣の権力闘争や、家臣による主君の藩政改革つぶしにも利用された。

 普天間飛行場移設問題の迷走と社民党の政権離脱で鳩山由紀夫首相の退陣を求める声が民主党内に吹き荒れている。世論調査の内閣支持率も政権末期を示す水準に低落する中、これでは参院選を戦えないとの悲鳴にも似た声が参院側から一気にわき上がってきたのだ。

 「鳩山おろし」と評されるこの動き、なかには「押込」ができた昔をうらやむ向きもあろう。いきおい実権派家老、小沢一郎幹事長と輿石東参院議員会長の首相との面談が注目されたが、幹事長その人も首相共々「政治とカネ」で政府与党の信用失墜に責任ある身だ。

 一存で家臣を切腹させることができた殿様も「御家」の大義の前に「押込」にあった。「国家国民のため」と自らの役割を語っていた首相だが、「御慎み」を求める声はどうにも聞こえないらしい。

郵政改革法案強行採決

2010年06月02日 | ニュース政治
郵政改革法案強行採決 議論なく“肥大化”まっしぐら

 ■日銀総裁「金融に影響」/資金シフト懸念を一蹴/「民業圧迫」聞く耳なし

 民営化路線を抜本的に見直す郵政改革法案が衆院で強行採決されたが、最大の焦点である郵便貯金と簡易保険の限度額引き上げについて、ほとんど審議されないまま素通りとなった。政府は来年10月の法律施行時に引き上げ幅を見直すとしているが、国会審議と同様に十分な議論を行わないまま、強行突破で“肥大化路線”を突っ走る構えだ。

 「政府のかかわり方が金融システムに影響を及ぼすことを念頭に、制度運営しなければならない」

 日銀の白川方明(まさあき)総裁は31日に都内で開かれた講演で、郵政改革法案についての質問にこう答え、限度額引き上げが地域金融機関の経営を圧迫することへの強い懸念をにじませた。

 政府は政令によって郵便貯金の預け入れ限度額を1千万円から2千万円に、簡易保険の保険金上限額を1300万円から2500万円に引き上げる方針だ。だが、法案には明記されていないため、わずか6時間で強行採決された衆院総務委員会では、政府からの具体的な説明はなかった。

 自民党議員が民間から郵貯への資金シフトについてただしたが、亀井静香郵政改革・金融相は「急に動くと短絡的にとらえることはない」と根拠も示さず、かわした。

 限度額引き上げは、全国一律のユニバーサルサービスを提供するコストを賄うことを大義名分にしている。実際のコストについては、「過疎地の郵便局の金融事業で年464億円の赤字が出る」と委員会で説明されたが、これは大塚耕平郵政改革担当副大臣が旧郵政公社時代のデータをもとに個人的に試算したものに過ぎない。

 亀井氏が打ち出した最大6万5千人の非正規社員を正社員化するには、年2千億円以上の人件費がかかるとされるが、その費用をどう捻出するかも、まったく示されていない。

 郵政改革の最大の問題点は、政府が持ち株会社である日本郵政に3分の1超を出資する「暗黙の政府保証」を維持したまま限度額を引き上げ、民間から資金を吸い上げることにある。

 「民業圧迫」に加え、かき集めた資金をどう運用し、損失が発生した場合に誰が責任をとるのかという議論が行われた形跡はない。かつての財政投融資が復活し、官主導で非効率な分野にお金が流れ込むとの懸念もまったく解消されていないのが実情だ。

2010年6月1日 産経新聞

首相退陣論加速 「小鳩」双方に責任がある

2010年06月02日 | 社説
首相退陣論加速 「小鳩」双方に責任がある

 混迷は深まるばかりだ。鳩山由紀夫首相の退陣を求める声が選挙を控えた参院を中心に民主党内に一気に広がり、首相は小沢一郎幹事長らと対応を協議した。首相の進退をめぐり、緊迫した状態が続いている。

 米軍普天間飛行場の移設問題が迷走したうえ社民党は政権を離脱、各種世論調査で内閣支持率は2割前後に低迷するなど、鳩山内閣は窮地にあえいでいる。責任を問う声が出ること自体はむしろ当然だが、「政治とカネ」をめぐる不信や、政府と党の意思疎通の混乱も政権の混迷をもたらした大きな要因だ。責任をめぐる論議は首相、小沢氏双方に対して行われるのが筋である。

 一種の倒閣運動と言っても過言ではあるまい。退陣論の震源となったのは、夏の参院選を直前に控える参院側だ。高嶋良充参院幹事長は「どのような形で対応されるかは首相の決断にかかっている」と述べ、首相の自発的辞任を公然と促した。異例の事態である。

 普天間問題をめぐる首相の対応は拙劣であり、リーダーとしての資質に大きく疑念を抱かせた。党内に責任論が噴き出すのはある意味で自然だろう。

 だが「鳩山首相では選挙を戦えない」との議論ばかりが出る有り様にも首をかしげてしまう。政権の混迷をこれまで静観していた参院側に退陣論が急速に広がったのは党を束ねる小沢氏が首相に距離を置いた、との見方が広がってからだ。社民党の連立離脱に激高しているのも、参院選の選挙協力で得られる組織票への懸念からだろう。政権運営を問い直すより、ひたすら選挙怖さでうろたえているのが実態ではないか。

 責任問題で首相と同様に無視できないのが小沢氏の動向である。資金管理団体をめぐる問題では東京地検特捜部が再度の不起訴処分を決めた。だが、衆院政治倫理審査会への出席をはじめ、国会での説明責任はいまだに果たされていない。

 毎日新聞の最新の世論調査でも、小沢氏に辞任を求める人は73%で、首相の引責退陣を求める58%を上回るなど、不信は解消されていない。そもそも、政治主導のシステムがうまく機能しないのも首相、小沢氏が政策と党務を分業する構想の失敗による。首相と小沢氏の関係は「一蓮托生(いちれんたくしょう)」と言わねばなるまい。

 社民党の政権離脱で与野党が拮抗(きっこう)する参院に野党が首相問責決議案を提出する構えをみせるなど、国会は緊迫の度合いを増している。このまま体制を維持して果たして首相が言うところの「国難」に立ち向かうことができるのか。政権の要である首相と小沢氏が安易にもたれ合うようでは、解決になるまい。

2010年6月2日 毎日新聞 社説

6/2編集手帳

2010年06月02日 | コラム
6/2編集手帳

 フランス語の知識がそれほど行きわたっていなかった明治の昔、その人は一部で「チョピン」と呼ばれたという。国文学者の池田弥三郎さんが『世俗の詩・民衆の歌』(講談社文芸文庫)に書いている。

 綴(つづ)りの〈Chopin〉を英語式に読んだのだろう。ゲーテの「ギョエテ」のようなものらしい。甘美な抒(じょ)情(じょう)と物悲しさと、『夜想曲』などで知られる“ピアノの詩人”に「チョピン」はどうも似合わないようである。

 ポーランドの作曲家フレデリック・ショパンの今年は生誕200年にあたる。記念の演奏会や催しに出かけた方も多かろう。

 『ピアノ・ソナタ第2番・第3番』はこれまで20回ほど録音を試みたが、演奏に納得できず、すべて消去した――来日した現代最高のショパン弾きの一人、ポーランド出身のピアニスト、クリスチャン・ツィメルマン氏が本紙に語っていた。万人に愛され、音楽家には賛仰と畏怖(いふ)の対象でありつづける。大作曲家とはそういうものなのだろう。

 〈六月や読めねど譜面美しき〉(堤一巳)。梅雨入りも近い。ショパンの『雨だれ』を聴きながら、夜想にひたる宵もいいだろう。

首相 退陣要求応じず

2010年06月02日 | ニュース政治
首相、退陣要求応じず 小沢、輿石氏と協議継続

 鳩山由紀夫首相(民主党代表)は党内の退陣要求の高まりを受けて1日夕、小沢一郎幹事長、輿石東参院議員会長と国会内で会談した。党関係者によると、党側は7月に想定される参院選の厳しい情勢をあらためて伝え辞任を促したが、首相は応じなかった。3氏は協議を継続することで一致した。改選を目指す議員を抱えた参院執行部は首相への反発を強めている。

 会談内容は3氏とも明らかにしていないが、参院幹部らの話を総合すると、主に輿石氏が進退について首相の決断を迫ったのに対し、首相は直接答えなかった。参院側は、事実上の拒否回答と受け止めており、幹部は2日の参院議員総会で「不満が噴出する」と指摘した。

 これに対し、国民新党の亀井静香代表は小沢氏との会談で、鳩山政権を支える意向を伝えた。小沢氏は会談について副幹事長らに「いろんなことを話したが、結論は出なかった」と述べた。

 平野博文官房長官は首相と小沢氏らの会談後、記者団に「今後も3者で意見交換していくことになった」と強調。官邸筋は「続投は決まっていないが、方向性はそれでいい」と自信を見せた。

 小沢氏側は2日にあらためて会談する意向を持っているが、首相の日程と意思次第になる。

2010/06/02 共同通信

【6/2】ささゆり

2010年06月02日 | 誕生日の花

6/2誕生花「ささゆり」Lilium japonicum
花言葉 清浄、上品

細い葉がささに似ているので、ささゆりと命名されました。欧米でユリが聖なる花であるように、日本でも古来から祭礼に欠かせない花でした。

■今日生まれのあなたは・・・
頭の回転がはやく、何事もてきぱきとこなすタイプ。周囲が自分のテンポに合わずイライラすることも多いはず。戸外に出て、意識的にストレス解消をはかりましょう。

○横浜港開港記念日,長崎港記念日
1859(安政6)年、日米修好通商条約の締結により、それまでの下田・箱館のほか、神奈川(横浜)・長崎の港が開港しました。