【時事(爺)放論】岳道茶房

話題いろいろだがね~
気楽に立寄ってちょ~

虫歯・歯周病を根治する「殺菌水」療法

2010年06月23日 | 健康
殺菌水を使った歯の治療器具。この先端を歯周ポケットに差し込む

虫歯・歯周病を根治する「殺菌水」療法 原因菌いなくなればOK

 虫歯や歯周病の原因菌を死滅させる“殺菌水(口腔機能水)”を使った画期的な歯科治療が脚光を浴びている。国内で歯周病をもつ人は約8000万人(成人の約80%)といわれるが、もう歯を失わずに済む時代がやってきそうだ。

【原因菌が10秒で死滅】

 殺菌水は「パーフェクトペリオ」と呼ばれ、白血球と同じ殺菌成分である「次亜塩素酸」と「炭酸水素ナトリウム」を組み合わせた電解水。

 現在、全国300以上の歯科施設が、この殺菌水を使った虫歯・歯周病治療を導入している。

 「歯周病は老化現象ではなく、細菌感染によって起きている感染症。原因菌がいなくなれば進行は止まるし、予防もできる」と話すのは、5年前に殺菌水の開発に成功したデンタルサロン・パンデミック(栃木県小山市)の野口宗則院長。従来の治療は効果的に原因菌を除去する手立てがなく、歯石を取ったり、歯を磨いたり、人と原因菌の一進一退の攻防を繰り広げてきたわけだ。しかし、この殺菌水を歯と歯茎の間に噴射すると原因菌は10秒で死滅するという。

【治療の通院は3回】

 殺菌水を使った具体的な治療内容はこうだ。

 《1回目の治療》上下の歯と歯周ポケット、舌の表面など原因菌の住みつくすべての場所を高濃度の殺菌水で殺菌。

 《2回目の治療》高濃度の殺菌水を噴射させながら、上のすべての歯の歯石や歯周ポケットの奥底に付着している原因菌の出した毒素を除去。

 《3回目の治療》下の歯を2回目の治療と同様に行い、すべてが終了。

 治療の間隔は1-2週間あくが、その間は朝晩の歯磨き後、家庭用の殺菌水でうがいを行う。3回の治療終了後も殺菌水のうがいを続けていれば原因菌が増殖することはなく、顕微鏡を使った検査も年1回受ければ十分だという。

【うがいだけでも有効】

 殺菌水は弱アルカリ性の電解水で薬剤ではないので、副作用や耐性菌の問題はなく、歯が溶けるような心配もない。

 殺菌水治療の専門施設である野口院長のもとでは、これまで1000人以上が治療を受け、約1万人が家庭用殺菌水の処方を受けている。1日4人受け付けている治療の予約は来年2月までいっぱいだという。

 自由診療のため治療費は3回分で計9万円(重度歯周病の場合、15万円)と、施設によっても異なるが少々高額ではある。さらに、家庭用殺菌水は1カ月分で約4-5000円が必要になる。

 「治療費がネックになる人もいると思うが、毎日のうがいだけでも十分効果がある」と野口院長。

 何といっても歯は一生もの。口臭が気になってきたら選択肢の1つとして検討してみては。

★殺菌水治療を導入している全国の施設は「デンタルサロン・パンデミック」のHPに掲載。

2010.06.23 ZAKZAK

「工場労働者の反乱」で中国経済の漂流が始まる

2010年06月23日 | 情報一般
「工場労働者の反乱」で中国経済の漂流が始まる

中国で賃金引き上げを求める工場労働者の“反乱”が燎原の火のように全土に広がっている。台湾系EMS(エレクトロニクス製品の受託製造会社)大手の富士康(FOXCONN)で起きた生産ライン労働者の連続自殺がきっかけだが、底流には急激な経済成長にもかかわらず低賃金と劣悪な環境にとめ置かれてきた中国の最底辺労働者の蓄積した不満がある。富士康や、同じくストライキが起きた広州ホンダは賃金引き上げに応じたが、この勢いで中国全土の工場労働者の賃金が急上昇すれば、「世界の工場」としての中国の競争力が揺らぐのは間違いない。中国は今、過去10年の無理な急成長のツケに苦しみ始めた。

■富士康が実現した中国の成長モデル

 富士康は世界最大のEMSである台湾の鴻海精密工業が中国に工場展開する際に設立したグループ会社だが、実質的には鴻海グループそのものといってもよいほど大きな存在となっている。鴻海が受託する製品の8割以上は、富士康が中国全土に展開する工場で生産されているからだ。ノキア、アップル、デル、ヒューレット・パッカード、ソニー・エリクソン、任天堂、モトローラなど世界の大手エレクトロニクスメーカーでは、鴻海に生産を委託していない企業を見つける方が難しいほどだ。売り上げは7兆円前後と、委託するエレクトロニクスメーカーと肩を並べるどころか凌駕する規模だ。

 中国にとっても富士康の持つ意味は大きい。富士康は広東省、福建省、江蘇省、山東省など沿海部はもちろん、山西省、重慶市など内陸にも工場を広く展開、82万人もの中国人を雇用しているからだ。中国に進出している外資企業のなかで売上高、輸出額ともに2005年以降、トップを維持している。

 1978年にトウ小平氏が開始した改革開放政策によって中国は「世界の工場」にのし上がったが、その根幹は低コストの労働力を提供し、世界から生産拠点を集め、つくった製品をグローバル市場に輸出するモデルだった。その成長モデルを最も忠実かつ大規模に実現したのが富士康、すなわち鴻海だったといってよい。

 それが意味するのは、富士康の給与、待遇が中国全土の工場労働者のベンチマークになっていたということだ。他の外資はそれぞれの地域にある富士康の工場の給与や待遇をみたうえで、自社の待遇を決めていた。富士康が中国の労働市場に与える影響はきわめて大きかった。

■新世代が直面する社会矛盾

 発端となった富士康の深セン拠点の連続自殺の原因ははっきりしない。今年に入って13人もの自殺者(未遂を含む)があり、その大半が飛び降りというのも偶然というには無理がある。勤務の過酷さや行きすぎた管理体制が影響しているとみるべきだろう。そうした過酷さ、管理体制は「中国版女工哀史」として既に批判されている通りだ。だが、女工哀史的な労働現場なしには中国の輸出産業は成り立たないというのも間違いない事実だ。

 重要なのは、中国全体が貧しく、現金収入のために農村から沿海都市部に出稼ぎに来るほかなかった90年代までなら我慢できたものが、中国全体の生活水準が急激に向上し、生活コストの上昇で出稼ぎの実質可処分所得が減った現在、多くの労働者は境遇に耐えられなくなっているということだ。トウ小平氏は「20世紀末までに1人あたりGDP(国内総生産)を1000ドルに出来れば中国社会は小康を得る」とした。この目標は、すでに2000年に実現し、中国は平均でみれば貧困段階を抜け出したが、その後の10年足らずのうちに1人あたりGDPは3700ドルに達し、中国は中進国にまで進化した。もはや外形的には女工哀史の段階ではない。

 見落とせないのは農村からの出稼ぎも80年代末に始まった第1世代の子供の世代に主軸が移っている点だ。「80后(80年代以降)」「90后(90年代以降)」と呼ばれる「新世代農民工」たちだ。彼らは農村での生活経験が薄いうえ、農業の経験も少ない。一方、教育水準は親の世代よりもはるかに高く、海外の知識やITの能力も持つ。過酷な待遇にじっと我慢する世代ではない。同時に忍耐力は弱く、挫折しやすい繊細な面も持つ。富士康での連続自殺はまさにその繊細な面が原因になったともいえるだろう。

 北京や上海などの都市部に生まれた若者が当たり前のように大学に行き、何不自由ない生活を送る一方、農村に生まれたばかりに中学や専門学校止まりで、工場で得た給与も親に仕送りしなければならないという境遇の矛盾に悩む新世代農民工も多い。今、起きている労働者の賃金引き上げ要求は、深刻な社会矛盾、経済構造の歪みが原動力になっており、経済欲求だけに突き動かされた過去の賃金引き上げストなどとは意味合いが異なっている。

 富士康は6月1日に給与を30%引き上げ、さらに10月1日付けで業績が一定水準に達した社員についてはさらに66%引き上げると発表した。6月以前には900元(約1万2600円)だった基本給は10月以降、2000元(約2万8000円)になる。親会社の鴻海の創業者兼会長の郭台銘氏は「今後は社員に高賃金を払う企業として業界を先導する」と表明した。起業から30年余で売り上げ7兆円企業を築いた経営者の直感が賃金の大幅引き上げを決断させたとみれば、中国の製造業の流れが大きく変わったとみるべきだ。

■削がれる輸出競争力

 ひとつは、中国はもはや低コストを売り物にした組み立て(アッセンブル)中心の製造業では立ち行かなくなるということだ。低コストの組み立て工場を必要とする外資や中国企業は今後、ベトナムやインドネシア、ミャンマーあるいはインド、バングラデシュなど、中国よりはるかに人件費が安く、労働力も豊富な国に生産を急速に移転していくだろう。

 もちろん中国の強みは残る。部品や素材の調達で中国ほど多様な産業が集積し、調達に有利な国はないからだ。市場としての規模、魅力は言うまでもない。だが、そうした利点も中国から部品、素材を調達し、組み立てや加工した後に再び中国に輸入すれば済む話にすぎない。その生産モデルは90年代まで中国自身がやっていた。人件費の差が十分に大きければ、物流や在庫のコストを差し引いても成り立つ。工場を海外ではなく、相対的に賃金の安い中国内陸部に移転するという選択肢もあるが、今回の賃金引き上げの波は内陸にも確実に及んでおり、沿海部に比べた人件費の安さは早晩失われる。米欧が強く求めている人民元の切り上げは、言うまでもなく内陸部にも容赦なく襲いかかり、輸出競争力を削ぐ。

 ふたつめは、今後、低賃金国に流出する産業を何で穴埋めし、雇用を確保するか、という問題だ。今より高い賃金を払い、大規模な雇用を提供できる産業が今の中国にあるのか、といえば難しい。広東省がトップの汪洋・共産党委員会書記の号令で「産業高度化」を進めようとしているのは、賃金高騰のなかで労働集約型産業の行き詰まりを最も早く実感しているからだ。だが、焦ったところで中国は競争力のある高度な産業を育てる努力を怠ってきた。進むべき道は見えにくい。

■「賃金引き上げ」が招く強烈な副作用

 アジアで外資の製造業の誘致で中進国に成長したモデルにマレーシアがある。マレーシアの1人あたりGDPは7700ドル。3700ドルの中国とはまだ開きがあるが、中国は05年の1700ドルから5年足らずで2倍以上に伸びた。マレーシアの水準は決して遠いものではない。だが、両国の経済構造は似ているようで異なる。マレーシアの輸出品目でトップは電機・電子製品だが、2位は原油、3位はパーム油だ。液化天然ガス(LNG)の輸出も大きい。原油、天然ガス、鉄鉱石、大豆などを大量に輸入しなければ成り立たない中国経済とは逆に、1次産品輸出である程度経済を成り立たせられるのだ。資源を持つ人口2700万人の国の有利さであり、13億人の中国には真似ができない。

 胡錦濤国家主席-温家宝首相の中国指導部は、経済成長に伴って起きた米欧との貿易摩擦を回避し、人民元切り上げ圧力を押し返すために、内需拡大の道を選択した。労働者や農民の所得引き上げはその目的に沿ったものであり、国内の経済格差を縮める目的にも適った。だが、それがもたらす強烈な副作用には目をつむったままだ。むしろ2011年からスタートする第12次5カ年計画で所得倍増を目指す方針も打ち出そうとしている。

 共産党という看板を掲げ続け、「執政党」としての地位を維持するには、所得倍増は合理性のある政策だが、その所得に見合う付加価値を創出する産業があるのかは疑問だ。

 最底辺の工場労働者の反乱におびえているのは富士康や広州ホンダの経営者ではなく、中国共産党なのかもしれない。中国経済の漂流がいよいよ始まる。

6月23日 フォーサイト
筆者/ジャーナリスト・高村悟

民主党 つまずいた「政治主導」

2010年06月23日 | ニュース政治
民主党、つまずいた「政治主導」=企業献金禁止は掛け声倒れ?-参院選

 昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で民主党が掲げた「政治主導」。官僚依存から脱却し、有権者と日々接する政治家が政策を決めるとしたが、鳩山前政権下では、重要政策で閣僚間の調整不足がしばしば露呈し、政権への信頼を低下させた。政治とカネの問題でも「企業・団体献金の禁止」は実現せず、現時点では「掛け声倒れ」となっている。

 衆院選公約では、与党議員100人以上が政務三役として政府に入り、政治主導で「政策立案や決定を担う」と明記した。昨年9月の政権交代後、閣議案件を事前調整する事務次官会議を廃止して、閣僚による「閣僚委員会」が政府内の調整を担うように変更。各府省でも閣僚、副大臣、政務官の政務三役主導で、政策立案や決定を行うようにした。

 しかし、懸案の米軍普天間飛行場の移設問題では、首相や関係閣僚の認識の違いがしばしば表面化。内閣の迷走ぶりをさらけ出した。特に、鳩山由紀夫前首相は、移設問題に長年取り組んできた外務、防衛両省よりも、与党議員や知り合いの学者らから独自に収集した情報を重視し、両省内では「首相官邸は何を考えているのか分からない」と不満が募った。

 また、郵政事業の見直しに当たっても、亀井静香前金融・郵政改革担当相と他の閣僚が郵便貯金の預入限度額の引き上げをめぐって「衝突」するなど、調整に手間取った。

 「政治主導とは、官僚が必要ないとの意味ではない」。政権を引き継いだ菅直人首相は、官僚を積極的に「活用」する姿勢を鮮明にした。「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)が主催した20日の「政権実績・参院選公約検証大会」では、参加した民間団体から「政治家が政治主導の意味を取り違えた」など、厳しい評価が相次いだ。

 「政治主導」のための整備も遅れている。国家戦略室を「局」に格上げする政治主導確立法案や、副大臣と政務官の増員を盛り込んだ国会改革関連法案はともに、通常国会で継続審議になった。

 また、鳩山前首相、小沢一郎民主党前幹事長の「政権2トップ」が政治とカネの問題に見舞われたにもかかわらず、政権として、衆院選で掲げた「企業・団体献金の禁止」はもとより、信頼回復に具体的に取り組むこともなかった。3月の与野党国対委員長会談で、民主党は与野党協議機関の設置を呼び掛けたが、自民、共産両党が「小沢氏らの国会招致が先」と条件を付け、以来、動きは止まったままだ。

2010/06/23 時事通信

「外国資金」による「社会資本整備」が「北京政府」の狙いか?

2010年06月23日 | 情報一般
「上海バブル」の行方。「マンション」から「ミニカー」にまで及ぶ「狂乱物価」。「外国資金」による「社会資本整備」が「北京政府」の狙いか?

■5年ぶりの上海で中国経済の限界を見せつけられた
 
 日本政府は、高度経済成長が続く中国からの観光客を増やすために、中間所得層にも観光ビザを発給する方針を固めた。

 これまで年収25万元以上だった所得制限を今年(2010年)7月から概ね6万元以上に緩和する見通しだ。

 これまでも、九州などには中国からの観光客が大挙して訪れている。ビザの発給要件が緩和されれば、日本の観光産業には恵みの雨となりそうだ。

 ただし、単純に中国の経済成長がこのまま続くのかという点に関しては、私はかなり懐疑的な見方をしている。

 最近、5年ぶりに訪れた上海で中国経済の限界を見せつけられた思いがしたからだ。

 中国経済は明らかにバブルの様相を呈しており、そのバブルがはじければ、世界経済に大きなマイナスの影響が及ぶだろう――。

 それが多くのエコノミストの見方だ。私も、そう思う。

■室内の明かりがついているのは10戸に1戸ぐらい
 
 上海で建設中の高層マンションの分譲価格は、日本円に換算して2億~3億円程度。

 1人当たりのGDP(国内総生産)が日本の10分の1ほどしかない中国で、東京よりも高いマンション価格がついているのは明らかにおかしい。

 また、すでに完成しているマンションを夜間に訪れると、10戸に1戸ぐらいしか室内の明かりがついていないところがいくつもあった。

 多くの住戸が投機目的で買われているため、内部に人が住んでいないのだ。

 ご存知の方も多いと思うが、私はミニカーのコレクターである。

 上海でもミニカーを買おうと、ある店に立ち寄ったところ、なんとその店では1台1万円ほどもする商品が売られていた。

 もちろんモノにもよるが、ミニカーの価格も日本より高いのだ。しかも、その店主によれば、そうした高額商品を複数まとめて購入する地元の人も珍しくないという。

 上海は、私が5年前に訪れた時と様相を一変していた。

 まるで1980年代末のバブル期の東京のように、なにやら街じゅうが浮かれている印象を受けた。

■「グローバル経済」と「ドメスティック経済」が併存
 
 現地を訪れて、中国経済、少なくとも上海経済がバブルであることを改めて実感した。

 このバブルがいつはじけるのかは、誰にも予測し難い。

 過去の世界各地のバブルにも共通していえることだが、いくらおかしなことが起きていても、値上がりが続いているうちは矛盾が表面に現れることはほとんどないからだ。

 とはいえ、もしかしたらバブルが崩壊する前に、中国経済が急減速する可能性も十分にあり得る、と私は考えている。

 中国経済が破竹の快進撃を続けてこられた最大の要因は、「国内経済の二重構造」にあった。

 中国には「グローバル経済」と共産主義時代を引きずる「ドメスティック経済」が併存しているのだ。

 グローバル経済を象徴する上海中心部には、摩天楼がそびえる。その地域で販売されているのは、外資系企業の商品が多く、値段も世界共通のグローバル価格だ。

 たとえば、コンビニエンスストアには、明治製菓や日清食品、サントリー……など日本企業の商品も数多く売られており、日本製のペットボトル入り飲料(日本からの輸入品)の値段も150円程度と日本国内とほぼ同一だ。

■5年前の倍近くか、旧市街で吹き荒れる物価高の嵐
 
 一方、ドメスティック経済を象徴するのは上海の旧市街だ。

 木造住宅が立ち並ぶ旧市街の商店には、旧国営企業がつくった商品が並び、その値段は世界価格と比べると極端に安かった。

 これまでの中国経済では、物価の安い旧市街に住む住人が、低賃金労働者として中国企業の経営を支えてきた。

 ところが、上海万博に至る開発ブームは、旧市街を次々に破壊してしまった。

 さらに、残された旧市街には物価高の嵐が吹き荒れている。私の実感では、上海の旧市街の物価は、この5年間で2倍近くにも跳ね上がっている。

 5年前には、1元もあれば、旧市街でジュースや軽食を飲み食いできた。ところが、いまや店売りのジュースが2元、「中国風ピザ」という揚げパンのような食べ物が4元もした。

 もしや店側が外国人と侮って値段をふっかけたのではないか――。

 あまりの値段の高さに驚いた私は、そんな疑念を抱きながら、店の近くでしばらく様子を見ていたら、やはり地元の人も中国風ピザを4元で買っていた。

 私はその光景を見た瞬間、旧市街の物価が大幅に上昇していることを実感した。

■中国の縮図、上海躍進の要因は内部の「途上国経済」
 
 ただし、それでは住民が生活できないから、賃金を上げざるを得ない。現に、上海の一般労働者の賃金は猛烈に上がっている。

 今回の訪問で驚いたのは、上海万博のボランティアの月給が2万円程度だったことだ。

 10年ほど前には、現場労働者(正社員)の賃金が月1万円程度だったと記憶している。そのことから考えると、上海の賃金高騰には目を見張るものがある。

 思えば、上海の都市としての競争力が高まった要因の1つには、市内に旧市街がたくさん存在し、そこに良質な低賃金労働力を豊富に抱えていたことにある。

 いわば、上海は内部に「途上国経済」を抱えているような構造だった。そして、それは中国の縮図でもあった。

 ここにきて、その構造に亀裂が入り始めた。

 当然のことながら、現場の賃金が上がれば、輸出産業の競争力は弱まるし、内需型のサービス業でもコスト(人件費)の上昇で収益が圧迫される。

 それは中国経済の急成長にブレーキをかけることになるのだ。

 もしかしたら、北京政府はそうした事態も織り込み済みなのかもしれない。

■仮にバブルがはじけても、膨大な社会資本は残る
 
 そもそも、マルクスは資本主義を否定していなかった。理想の共産主義社会を実現する前の資本蓄積の過程で資本主義を必要悪として認めていたのだ。

 仮にバブルがはじけたとしても、バブル期につくられた高層ビル群や高速道路、電力設備、あるいは東京を抜いて世界最長となった地下鉄網など膨大な社会資本は残る。

 たしかに、バブルが崩壊すれば、外資系の企業や金融機関などは傷つくかもしれない。

 しかし、たとえば、これまで投機対象に過ぎなかった高層マンションの住戸なども、事業主や投機家らの安売り・投売りによって地元の人たちが格安で入手できるかもしれない。高速道路や地下鉄、電力設備なども、引き続き地元の人が利用できるだろう。

 想像をたくましくすれば、それが北京政府の狙いだったのではあるまいか。

 すなわち、政府がわざとバブルを仕かけ、外国の資金で上海のような世界に通用する大都市をつくり上げる。そして、そうした社会資本を生かして、理想の共産主義社会をつくる――。

 私は最近、そんなふうにも思い始めている。

2010年 6月22日 日経BP
森永卓郎(もりながたくろう)
1957年東京都生まれ。東京大学経済学部卒。日本専売公社、日本経済研究センター(出向)、経済企画庁総合計画局(出向)、三井情報開発総合研究所、三和総合研究所(現:UFJ総合研究所)を経て2007年4月独立。獨協大学経済学部教授。テレビ朝日「スーパーモーニング」コメンテーターのほか、テレビ、雑誌などで活躍。専門分野はマクロ経済学、計量経済学、労働経済、教育計画。そのほかに金融、恋愛、オタク系グッズなど、多くの分野で論評を展開している。日本人のラテン化が年来の主張。

饒舌と寡黙――W杯と野球賭博報道

2010年06月23日 | 新聞案内人
饒舌と寡黙――W杯と野球賭博報道

 大いなる饒舌(じょうぜつ)と大いなる寡黙。最近の紙面で、そんなことを感じている。

 饒舌の一つは、サッカーW杯報道だ。

 私はこの10数年、首都圏で催されるサッカー日本代表のほとんどの試合に足を運んできた。それなりのファンということになるだろう。
 南アフリカで催されているW杯の中継は、日を追っていや増す疲労にもかかわらず、できるだけ見ている。25日未明の対デンマーク戦(午前3時半キックオフ)については、前夜は早く寝て目覚まし時計で起きるか、ほかの試合を見続けて一次リーグ突破をかける注目の一戦に到るか、頭を悩ませている。どちらをとるにせよ、翌日の仕事に差し障りが出ることは間違いない。

 そんな私だけれど、W杯報道の洪水には辟易(へきえき)する。もちろんサッカーは世界でもっともファンの多いスポーツであり、4年に1度のW杯には厳しい予選を勝ち抜いてきた参加国の誇りがかかっている。そう分かってはいても、新聞を読みつつ、しばしば「こりゃ、なんじゃ」と口に出してしまう。

 たとえば岡田監督に対する評価である。
 周知の通り、対カメルーン戦(14日)の前まで、この人に対するサッカーファンの評価は相当に低かった。むろん理由があって、テストマッチの無残な結果からすれば、当然かもしれない。

 しかし、カメルーンに勝って以後は絶賛の嵐である。愚かな指揮官は、傑出した名将になった。同一人物とは、とうてい思えない。
 テレビで、喜色満面のファンの一人が「岡ちゃん、悪口ばかり言ってごめんね」と叫んでいるのを見た。
 気持ちは分かる。私も仲間と悪口ばかり言っていたから。

 プロスポーツは結果がすべてだ。激しい練習を積んでも、負ければ何の勝ちもない。
 ところが勝つと、それまでの練習、努力は賞賛の的になる。スポーツ面だけでなく社会面でも大きく扱われる。

 まことに「勝てば官軍」だ。しかしながら、スポーツ紙ならばともかく、一般紙の紙面がファンの一喜一憂、喜怒哀楽に寄り添いすぎるのはどんなものだろう。

 第2戦の対オランダ戦(19日)を報じる各紙の1面大見出しは「惜敗」のオンパレードだった。
 確かに日本代表はよくやった。でも「惜敗」だったかどうかについては、異論もあるに違いない。

 翌20日朝刊のあらたにす3紙のうち、私の好みでは、日本経済新聞のスポーツ面が一番よく出来ていた。
 大見出しで〈高かった1点の壁〉〈岡崎 決定機に不発〉。
 その通りだ。阿刀田寛記者は、まず〈後半、そろりと前に出てきたオランダが、得点を決めた後すぐに、アクセルを緩めた気がした。先手を許した日本にゲームを覆す力はないと見越したのか〉と書く。
 〈ボールをそらす角度を誤ったGK川島の小さなミスが痛恨の失点になった〉
 その通り。あれはミスだ。
 〈終了間際には岡崎が絶好の得点機をフイにして、複雑な後味を残した)
 〈存外に慎重居士だったオランダが1得点だけにまけてくれたような〉というくだりもある。となると「惜敗」は甘すぎることになる。

 繰り返すが、この記事を評価するのはあくまで私の好みに沿っているからだ。「客観報道」などという言葉を持ち出す気はないけれど、国際試合になるとスポーツ記事は甘くなる、ときには大甘になる傾向がある。ナショナリズムにどっぷりと身を浸す。しばしば「精神力」を持ち出して鼓吹する。

 対カメルーン戦に「1―0」で勝ったとき、「快勝」と1面でうたった新聞(あらたにす3紙ではない)があった。確かに日本代表はよくやった。しかし、「快勝」と書かれると、勝利を祝福しつつ私の口からは「こりゃ、なんじゃ」という言葉が出る。監督の采配を含め、カメルーン側の不協和音にかなり助けられた面が大いにある、と考えているからだ。

 岡ちゃん人気の急上昇。
 それは鳩山→菅とバトンタッチしただけで世論調査の内閣支持率がV字型回復を果たした現象と重なる。

 饒舌と寡黙のもう一つの例は、角界の野球賭博報道だ。  どこまで続く泥沼ぞ。大関や関脇にとどまらず、賭博熱は親方をも巻き込んでいた。
 麻薬汚染、横綱の暴力、維持員席と暴力団の黒々とした関係、そして野球賭博。残念ながら「伏魔殿」なる言葉がよく似合う。

 誰が手を染めていたか。各紙は連日、大見出しで報道している。名古屋場所まで3週間。果たして予定通り開催できるのかどうか。日本相撲協会の武蔵側理事長は「協会設立以来の大変な危機」と言うけれど、これまでの振る舞いを見ると、危機をどこまで認識しているのか、私は疑問を抱く。

 現在ただいまは洪水のごとき報道だが、この件、新聞が火をつけたのではない。
 週刊新潮5月27日号が〈「大麻」「朝青龍」に続く第三の衝撃! 角界に蔓延する「野球賭博」の罠 大関「琴光喜」が「口止め料1億円」と脅された!〉と取り上げたのが始まりだった。同誌はその後も、先行気味にこの事件を報じている。

 となると、読者は素朴に思うのではないだろうか――日ごろ大相撲を担当している記者たちは、大勢の力士、親方らがかかわり、ここまで日常的に蔓延している事態をまったく知らなかったのだろうか、気づかなかったのか、と。

 細かい事情は分からない。確かなことは一つ、週刊誌報道以前に各紙がこの件については大いに寡黙だったことである。

 1974年、文藝春秋に立花隆さんが発表した「田中角栄研究/その金脈と人脈」のことを、私ははからずも思い出した。

2010年06月23日 新聞案内人
栗田 亘 コラムニスト、元朝日新聞「天声人語」

5年で2倍!理由は…プラチナ価格が高騰

2010年06月23日 | ニュース一般
5年で2倍!理由は…プラチナ価格が高騰

 産業用や宝飾品に幅広く使われるプラチナの価格が高騰している。

 産業用需要の増加を見越した投資マネーの流入に加え、経済の急成長が続く中国で、宝飾品としての人気が高まっていることも相場を押し上げている。    

 プラチナの市況は、直近では1グラム=約5000円と、年平均で過去最高値だった2008年の5409円(田中貴金属工業の小売価格)に迫っている。結婚指輪の定番商品として、東京・銀座の「GINZA TANAKA」で売られている標準的なプラチナリングの価格は、05年5月の2倍にあたる5万円に急騰している。

 価格の上昇は「中国など新興国の需要増が一因」(業界関係者)だ。自動車の排ガスを浄化する触媒や、液晶テレビの透明度を保つ部材としての産業用需要の増加が目立つ。

 さらに、宝飾品としての人気も価格上昇に拍車をかけている。

 特に中国では花嫁衣装の主流が伝統的な赤いチャイナドレスから欧米や日本で定番の白いウエディングドレスに移りつつあり、衣装に似合うプラチナの指輪を選ぶ花嫁が急増。09年の中国のプラチナの需要は1998年の約3倍にあたる約63トンに増え、世界のプラチナ需要の3分の1を占める。このうち宝飾用は54トンと約9割に達する。

 一方、日本ではプラチナより2~4割ほど安いホワイトゴールドに売れ筋が移り、結婚指輪のほかはプラチナ製品を置かない宝飾店も増えている。バブル期の90年代前半は、日本は世界の宝飾用プラチナ需要の8割を占めたが、現在はピーク時の2割程度に過ぎず、長引くデフレの影響もうかがえる。(笹子美奈子)

2010年6月22日 読売新聞

財政再建 公約が破綻している

2010年06月23日 | 社説
財政再建 公約が破綻している

 政府が財政運営戦略と中期財政フレームを決めた。二〇一一年度予算編成で国債発行の上限額を縛る一方、菅直人政権は子ども手当の上積みなどを公約している。いったい、どこに財源があるのか。

 財政運営戦略は一五年度に基礎的財政収支赤字を国内総生産(GDP)比で半減、二〇年度に黒字化する目標を掲げた。内閣府の試算では、日本経済が順調に成長した場合でも巨額赤字が残る。

 菅首相は「だから増税を」と訴えるが、国民に負担増を求める前に、まず政府と国会議員が自ら身を切るべきだ。

 天下り問題の根幹にある公務員制度や独立行政法人、公益法人の改革を放り出したままで増税論議をするのは手順が違う。

 必要な政策をどういう順番で進めるか。まさに政治の判断力こそが問われているのに、いまや菅首相は民主党政権の原点だった脱官僚路線を投げ捨て、財務省依存で突っ走っているかのようだ。

 財政再建は国民の納得感が大前提である。官僚が言うなりの数字合わせでは、けっして達成できないと強調しておきたい。

 一一年度予算編成でも高いハードルがある。中期財政フレームは一一年度の国債発行上限額を一〇年度並みの約四十四兆円、国債費を除く一般会計歳出上限額も約七十一兆円と縛りをかけた。

 ところが内閣府試算では税収増を見込んでも一一年度の赤字は約四十九兆円に上る。国債発行四十四兆円とすれば、五兆円が足りない。高齢化に伴う社会保障費の自然増約一兆円もある。つまり、不足は合計六兆円に達する。

 一方で、民主党は参院選の公約で、子ども手当の上積みや高速道路無料化と農家への戸別所得補償の段階的実施、さらにはガソリン税暫定税率の廃止も「引き続き取り組む」と約束している。

 財源がないのに、どうやって数兆円規模の新政策を追加するのか。荒井聡国家戦略担当相は「新政策には恒久財源を探す」と言うが、きわめて難しいだろう。

 仙谷由人官房長官は「無駄削減で捻出(ねんしゅつ)できるのは、せいぜい二兆円」と語っている。ようするに、今回の閣議決定と参院選公約、仙谷長官発言を全体としてみれば、民主党の政策パッケージは首尾一貫していず、事実上破綻(はたん)していると言えるのではないか。

 もともとの公約では予算組み替えで財源を生み出すはずだった。できなかったからといって、増税では話にならない。

2010年6月23日 中日新聞 社説

6/23中日春秋

2010年06月23日 | コラム
6/23中日春秋

 今年もアリが目につく季節になった。<アリの列金のない日におもしろい>とは以前、立川談志さんが紹介していた古い川柳。

 <どれもこれも3に似ている>というルナール『博物誌』の有名な表現を借りれば<333333333333…>。旧約聖書が「なまけ者はアリを見習え」と言わず、イソップがキリギリスと対比などせずとも、3が列なしてせっせとエサなど運ぶ健気(けなげ)な姿を見れば「勤勉」のイメージは自然とわく。

 かつて日本人はよくアリにたとえられた。勤勉を通り越し働くしか能がないのニュアンスさえあったろう。実際、ワーカホリック(仕事中毒)の外来語も定着し、逆にカローシ(過労死)は、そのまま英語になった。「働き過ぎ」への反省は長らくわが国の大きな課題だった。

 昨日、マツダの元期間従業員の男が広島県の工場内を車で暴走、十一人をはね、一人を死亡させる事件が起きた。男は「クビにされた恨み」と言い、会社は「自分から退職した」と食い違うが、どのみち、こんな蛮行に正当な理由のあるはずがない。

 ただ近年、働くことをめぐる問題の中心がいわば「働き過ぎ」と正反対の「仕事がなさ過ぎる」点にあることは確かだ。そして、それが過去にも暴発と呼ぶしかない事件の土壌になっていることも。

 気がつけば、日本が「仕事中毒」を気に病んだ時代は、もう遥(はる)かである。

メタボの人は禁酒より“禁食"

2010年06月23日 | 健康
メタボの人は禁酒より“禁食"肝機能アップの常識ウソ、ホント

 深酒や暴飲暴食がたたったのか、健康診断の結果は肝機能数値がいつも高め。あまりにもひどい状態なら即受診だが、微妙に高い数値に対しては、自己対処で何とかしたいもの。しかし、専門医によると、ちまたでいわれる肝機能改善の常識には、必ずしも正解でないものもあるという。

 そもそも暴飲暴食を続けると、フォアグラのような脂肪肝になる理由は、肝臓の働きと関係が深い。肝臓の主な役割は代謝で、腸から吸収された糖はグリコーゲンに再合成され貯蔵される。飢餓状態になったときに、グリコーゲンを糖に変えて使う仕組みだ。

 ところが、貯蔵庫があふれると中性脂肪になって肝臓に沈着、これが脂肪肝。そのため、禁酒をしても食べ過ぎ状態が続くと、脂肪肝は解消されない。東海大学医学部付属東京病院消化器肝臓センター長の西崎泰弘副院長は「肝臓の貯蔵庫を空けるには、食べる量を減らすことが肝心。一般的に、BMI(体格指数)を25から24に減らすなど適正体重(BMI22)に近づけば、肝機能は改善されます」と説明する。

 一時しのぎの禁酒ではなく、メタボの人はむしろ“禁食”が必要なのだが、が空いては戦はできぬ。できれば、肝臓を守るような食材は口にしたい。

 一般的には、酒を飲んだ後にシジミ汁を飲むと良いといわれているが、それも期待は薄いという。西崎副院長は、「シジミに含まれるタウリンは、肝硬変の薬としても使用されています。しかし、シジミに含まれる量はごく微量で、シジミ汁を何杯も飲むと逆に塩分の摂り過ぎによる高血圧が心配」という。

 肝機能に役立つのは、ビタミンA、B群、C、タウリンなどのアミノ酸。レバーには、ビタミンAやCが含まれているが、「レバーは鉄が多いので肝臓専門医として勧めたことはない」と西崎副院長はいう。

 一方、昔から生薬として知られる「熊の胆(い)」は、ウルソという成分が含まれており、肝機能改善に役立つそうだ。しかし、サプリメントで知られるウコンは、「肝障害の人が常用した場合、鉄分によって悪化するケースもあります。また肝臓は、薬を代謝する器官でもあり、薬によるダメージを受けやすい。自分勝手に薬やサプリメントを乱用しないように、注意してください」(西崎副院長)。   食事以外では、食べてすぐに横になるのは良いそうだ。身体を休めると、肝臓へ血流が集まりやすくなり代謝もアップ。特に、右を下にしてゴロンと寝るのがベター。ただし、メタボな人は、貯蔵庫に空きを作るための運動も忘れずに。

2010.06.22 ZAKZAK

9党首討論会 負担伴う政策も率直に議論を

2010年06月23日 | 社説
9党首討論会 負担伴う政策も率直に議論を

 国政選挙は、日本の将来にかかわる重要政策を論じる格好の機会だ。各政党は、税制改革や成長戦略、外交などの論点を有権者に分かりやすく示してもらいたい。

 24日の参院選公示を前に、日本記者クラブ主催の9党党首による討論会が開かれた。

 消費税について、菅首相は、社会保障費の財源を赤字国債に頼る現状を是正し、国債の増加に歯止めをかけるため、税率引き上げの必要性を訴えた。超党派による議論の開始も改めて呼びかけた。

 消費税率10%への引き上げを公約に掲げる自民党の谷垣総裁は、議論の前提として子ども手当や高速道路無料化など民主党政権公約の「無駄」の見直しを求めた。

 民主、自民の2大政党が、国民に負担増を求める政策で足並みをそろえるのは、画期的なことだ。各政党は従来、増税は選挙にマイナスとの意識から、大衆迎合的な政策を公約に掲げがちだった。

 今回は、それだけ国家財政が危機的状況にあるうえ、国民にも消費税率引き上げへの理解が広がっているとの判断があるようだ。

 菅首相は、超党派の議論を呼びかける以上、まず民主党のバラマキ政策を大幅に見直す必要がある。消費税論議でも、当面、自民党と同じ税率にとどめておけば批判は少ないという安易な態度でいるとしたら、無責任だ。

 与党・国民新党の亀井代表は、政権離脱カードをちらつかせ、公然と増税に反対している。

 だが、菅首相は、動じるべきではない。選挙戦で論議を重ねたうえ、税率アップで合意できる野党との連携を視野に入れ、財政健全化に取り組むのが筋だろう。

 日米関係について、菅首相は、「北東アジアの緊張関係はかなり高い」との認識を示したうえ、米軍の抑止力を評価し、日米同盟を深化させる考えを強調した。

 谷垣総裁は、急速な軍備増強を続ける中国が、日本にとって「脅威」にならないようにすることが日米同盟の意義だと指摘した。

 菅首相が「現実主義」的な外交に転換したことで、民主、自民両党の安保政策の違いは以前よりは小さくなっている。

 討論会参加者が9人にも上り、各テーマの議論が深まったとは言えなかった。各政党は今後の論戦を通じて、有権者に必要な判断材料を提示してほしい。

 今回の参院選は、昨年の政権交代を中間評価する重要な選挙となる。有権者も、各政党の主張の当否を見極める目が問われよう。

2010年6月23日  読売新聞 社説

6/23余録

2010年06月23日 | コラム
6/23余録「マツダ工場の暴走車殺人」

 ドイツには「カラスは仲間の目玉をえぐらない」ということわざがあるという。動物行動学者のローレンツはこれはことわざとしては例外的に正しいと述べる。あの鋭いくちばしで仲間の目を突いていたら、カラスはすぐに絶滅するからである。

 一方、彼は小さなくちばししかもたぬキジバトとジュズカケバトを飼っていた。ある日彼が帰ると、キジバトが羽毛ばかりか皮までむしられ、倒れている。ジュズカケバトはその上からなおも相手の傷をつついていたのだ。

 ローレンツによれば、強い牙やツメ、くちばしなどのある動物は同種への攻撃を抑制する本能をもつ。それに対し無力な動物は仲間への攻撃の歯止めを欠き、人間もその一つらしい。だが文明は、攻撃性の抑制がきかない人間に武器という攻撃力を与えたというのだ。

 広島県内のマツダの工場で42歳の男が乗用車を暴走させて従業員を次々にはね、11人を死傷させた。男は同社の元期間工で、「マツダをクビになり、うらみがあった」「むしゃくしゃしていた。どうでもよくなった」などと自暴自棄ともいえる供述をしているという。

 男のいう「うらみ」が何であれ、自ら一時でも製造にかかわった車を凶器とし、かつての同僚らに向けられた歯止めのない攻撃だ。まったく理不尽な悪意にその未来を突然にのみ込まれた被害者の無念を思えば言葉を失う。

 車であれ、刃物であれ、自分がどうなってもいいという殺意に操られればたちまち多数の人命を脅かす。攻撃を抑制する本能に代えてモラルや情理を蓄えた人間の社会だが、それをあざ笑うかのような攻撃衝動は今どうして噴き出るのか。

暴力団関係者に逮捕状 琴光喜関への恐喝容疑

2010年06月23日 | ニュース一般
暴力団関係者に逮捕状 琴光喜関への恐喝容疑

 大相撲の野球賭博問題で、警視庁は22日、大関琴光喜関から約350万円を脅し取った疑いが強まったとして、恐喝の疑いで暴力団関係者の男(38)の逮捕状を取った。近く逮捕する。

 男は、野球賭博に関与していた阿武松部屋の現役力士の兄で、自身も元幕下力士。関係者によると今月、大阪府の実家に電話し「恐喝はしていない。心配はいらない」と親族に話したという。

 警視庁は、賭博への関与を認めている力士や親方らの事情聴取をほぼ終え、既に琴光喜関から被害届の提出も受けている。恐喝事件を契機に、暴力団との深いつながりが指摘される角界の野球賭博の全容解明を目指す。

 捜査関係者によると、暴力団関係者の男は昨年12月、琴光喜関側が野球賭博の「勝ち金」500万円の支払いを阿武松部屋に所属する現役力士に求めた際、口止め料として現金を琴光喜関から脅し取った疑いが持たれている。その後も1億円を要求した疑いがあるという。

 琴光喜関は、数年前から、胴元との仲介役だった阿武松部屋の床山(29)を通じて野球賭博を始めた。この床山らに試合の予想を伝えるなどして日常的に高額な賭け金で賭博を繰り返したとみられ、数千万円の「負け金」を抱えていたという。

 警視庁は、琴光喜関については野球賭博の常習性が高かった可能性があるとみており、関与の度合いを慎重に見極め、書類送検など立件の可否を判断する方針。

2010/06/23 共同通信

◆W杯 ウルグアイが1―0で勝つ

2010年06月23日 | ニュース一般
ウルグアイが1―0で勝つ メキシコとともに決勝Tへ

 【ルステンブルク(南アフリカ)共同】サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会第12日は22日、ルステンブルクなどで1次リーグを行い、A組は最終戦でウルグアイがメキシコに1―0で勝ち、2勝1分けの1位で決勝トーナメントに進出した。メキシコも1勝1分け1敗の2位でベスト16入りした。

 開催国の南アフリカは前回準優勝のフランスを2―1で下して1勝1分け1敗としたが、得失点差でメキシコに及ばず、1分け2敗のフランスとともに敗退した。開催国の1次リーグ敗退は初めて。

 B組はアルゼンチンがギリシャと、韓国はナイジェリアと対戦。

2010/06/23 共同通信

財政健全化 破綻回避の道筋が見えぬ

2010年06月23日 | 社説
財政健全化 破綻回避の道筋が見えぬ 

 菅直人政権が向こう3年間の予算の大枠「中期財政フレーム」と中長期の新財政健全化目標を盛り込んだ「財政運営戦略」をまとめた。破綻(はたん)寸前に陥った財政を立て直す目的だが、中身は極めて説得力に欠ける。

 新目標は(1)国と地方を合わせた基礎的財政収支赤字を対国内総生産(GDP)比で2015年度までに半減し20年度までに黒字化(2)債務残高対GDP比を21年度から引き下げる-の2本柱だ。財政規律としては、オバマ米政権が復活した歳出増や減税にはそれに見合う財源を義務付ける「ペイアズユーゴー」原則を導入する。

 問題はその道筋だ。同時に示された一定の経済前提による試算だと、20年度の赤字は21・7兆円で、今年度赤字30・8兆円の半減にもならない。これを黒字化しなければ債務残高も低下しない。

 手段は増税などによる歳入増か歳出削減しかない。だが、一方だけではこの膨大な赤字には対応できない。小泉政権時代の「骨太2006」が示したような歳出・歳入一体改革しか道はないが、具体的言及は何もない。

 「中期財政フレーム」も同様だ。3年間の予算編成では、国債費を除く基礎的財政収支の対象である一般歳出と地方交付税に前年度を上回らないという「歳出の大枠」を設けた。民主党政権が自ら廃止した概算要求基準(シーリング)の形を変えた復活である。

 しかし、「骨太06」の分野別シーリングには踏み込まなかった。これでは昨年の概算要求でみられた混乱が再現され、歳出圧力に歯止めがかからなくなろう。

 しかも、菅首相の「増税による成長」を踏まえたのか、恒久的歳入増を確保すれば「歳出の大枠」に加算が可能とする抜け穴まで設けた。「ペイアズユーゴー」原則には反しないが、増税収入を歳出に投入してしまえば財政健全化への寄与は乏しく、結局は増税だけが残ることになる。

 来年度の国債発行額は44・3兆円の今年度以下にするという。今年度はいわゆる特別会計の埋蔵金を10兆円もかき集めてしのいだが、それもほぼ底を突いたからその達成も難しいだろう。

 菅政権がせっかく「ペイアズユーゴー」原則を掲げたのなら、今年度予算分の財源なき政権公約の撤回から始めたらどうか。財政破綻を回避するには、せめてそれくらいの覚悟は示すことだ。

2010.6.23 産経新聞 主張

6/23産経抄

2010年06月23日 | コラム
6/23産経抄

 亡くなってから17年もたつというのに、出版界ではちょっとした「角さんブーム」が起きている。週刊誌が小沢一郎・民主党前幹事長の“失脚”にひっかけて田中角栄元首相の特集を組めば、月刊誌「新潮45」は生前の演説をCDにして付録につけた。

 ロッキード裁判が進行中だった昭和50年代後半の演説を1時間10分にまとめたものだが、故郷・新潟を中心に売れているという。演説では中国共産党の本質を「これは便宜共産主義です」と言い当て、「公明党は危急存亡の時は、自民党と一緒になる」と未来の自公連立を予測している。

 そうした先見性以上に聞きどころは、独特のだみ声で繰り出される角栄節だ。小学生のころ、吃音(きつおん)がひどくていじめられたが、浪花節を覚えることで克服した。後年、評論家の大宅壮一氏は「田中角栄という男は浪花節そのものだ」と喝破した。

 いまどきの政治家の演説は、角さんの前座も務まるまい。きのう開かれた日本記者クラブ主催の9党首討論会は実につまらなかった。守る菅直人首相は安全運転を心がけて防戦一方だったし、攻める野党も迫力に乏しく、テレビ中継を見ながらついうたた寝をしてしまった。

 最近の政治家の演説や討論がつまらないのは、政治家自身が語るべき言葉を持っていないことにほかならない。信念のない言葉は、ただの記号であり、人々の心に残らないのは当たり前だ。

 田中氏にかわいがられた小沢氏は、長い演説もたまにしているが、報道陣を閉め出して行うのが常だ。参院選の応援もほとんど隠密で行動するという。なぜ国民に自らの考えを堂々と開陳しないのか。「一郎は『政治とカネ』だけをおれから受け継いだ」と草葉の陰で角さんも嘆いていることだろう。