【時事(爺)放論】岳道茶房

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日本シリーズ 野球人気よ、ふたたび

2010年11月09日 | 社説
日本シリーズ 野球人気よ、ふたたび

 少々眠い。でも、どこかさわやかな後味だった。技術や戦略の理屈を超えた連夜の延長戦。球史に残る日本シリーズは、地域に元気を残していった。あっぱれだ、ロッテナイン。来年こそ、竜戦士。

 地元としては悔しいが、おもしろいシリーズだった。

 連夜の延長、合わせて十時間三十九分の息詰まる攻防に、実況のアナウンサーも「野球史に残る死闘」と絶叫し、「もう、何が起きるかわかりません」と、しばしば言葉を失った。

 第七戦九回裏、先頭の和田外野手が三塁打を放った時には、まちじゅうの歓声が、決着の瞬間にはため息が、それぞれ聞こえて来るような、連帯感を味わえた。

 名古屋と千葉。地方都市に本拠地を置く球団同士の戦いに、在京キー局は冷ややかだった。地上波の全国中継がない日もあった。

 バレーボールの女子世界選手権、フィギュアスケートのグランプリシリーズと、昨今人気のスポーツ中継が重なったこともあり、国民的娯楽の多様化によるプロ野球人気の凋落(ちょうらく)が強調された。

 ところが終わってみれば、さすがに元祖筋書きのないドラマ。第六戦、六時間近い熱戦をフジテレビは最後まで、午後十一時以降はCMなしで放送し続けた。第七戦、名古屋地区の平均視聴率は34・6%、瞬間では48%超、関東、関西の平均も20%を超えた。

 実はペナントレースでも、ローカル局による地元球団の中継は、関東を除いて二けた視聴率を維持している。ここ十年ほどの間に、東京と関西に偏在していた球団が、北海道や仙台などにも散らばり、根を張った。全国中継の低迷は、人気凋落というよりも、球界の地方分権化が進んだ結果とみるべきだ。むしろ地デジ化多チャンネル時代に沿った進化といえないか。だとすれば、TBSが横浜球団の身売りを模索するのもうなずける。

 「地域ぐるみ」という言葉をしばしば耳にする。しかし、地域ぐるみで何かを共有できる機会は多くない。プロ同士の意地と意地、力と力とのぶつかり合いに名古屋と千葉が地域ぐるみで燃え上がり、その熱が他地域にも伝わった。異形の日本シリーズは、プロ野球が、まだこの国を元気にできる可能性を示してくれた。

 さて落合ドラゴンズ。「何かが足りなかった」と敗軍の将は語った。足りないものを、いつ、どこで、どうやって見つけるか。来季まで、その道のりを楽しみたい。

2010年11月9日 中日新聞 社説


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