【時事(爺)放論】岳道茶房

話題いろいろだがね~
気楽に立寄ってちょ~

W杯11日開幕 アフリカ大陸で初開催

2010年06月10日 | ニュース政治
W杯11日開幕、日本初戦14日 アフリカ大陸で初開催

 【ヨハネスブルク共同】サッカーの第19回ワールドカップ(W杯)は、初めてのアフリカ開催となる南アフリカ大会が11日午後4時(日本時間同11時)から、同国最大都市ヨハネスブルクのサッカーシティー競技場で開催国の南アとメキシコが対戦し、1カ月に及ぶ熱戦の幕を開ける。

 数十万人の熱狂的なファンが南ア代表のパレードに参加するなど、ヨハネスブルク市内は同代表のユニホームを着た人々でごった返し、待望のビッグイベントに興奮は最高潮に達しようとしている。

 大会には日本を含む32チームが参加。A~Hの8組に分かれて1次リーグを行い、上位2チームずつの計16チームが決勝トーナメントに進出する。4大会連続出場の日本は1次リーグE組で14日にカメルーン、19日にオランダ、24日にはデンマークと対戦する。

 自国開催以外での初勝利やベスト4進出を目標に掲げる日本は拠点を置く南部ジョージで最終調整を続けている。初戦の相手となるカメルーンは9日に東部ダーバンに到着し、ポール・ルグエン監督は「好条件で事前練習し、チーム力は向上した」と自信を示した。

2010/06/10 共同通信

民主“高支持率"で強気モード 亀井も降伏

2010年06月10日 | ニュース政治
民主“高支持率"で強気モード 亀井も降伏、郵政棚上げか

 菅直人首相(63)の高笑いが止まらない。報道各社の世論調査で、新内閣の支持率がいずれも60%超という高い数字を弾き出したのだ。参院選の投票先でも、民主党が自民党をダブルスコアで突き放した。通常国会の会期末は16日。亀井静香金融・郵政担当相(73)率いる国民新党は「連立離脱」をチラつかせて郵政改革法案の会期内成立を求めているが、民主党内では、この勢いのまま参院選に突入するため、「1日延長論」という仰天プランも浮上している。

 「国民の皆さんが、この内閣に対し、大きな期待を持っていただいたことを大変うれしく、心強く思う」

 菅首相は9日夜、官邸で世論調査の集計結果について、こう語った。就任会見では厳しい表情を崩さなかったが、さすがにこの日は満足そう。女房役である仙谷由人官房長官(64)も「いやー、大変うれしい」と顔をほころばせた。

 確かに、報道各社が10日に一斉公表した調査結果はすさまじかった。先月末、鳩山由紀夫(63)前内閣の支持率は、普天間問題の迷走や「政治とカネ」の問題などもあり「退陣水域」といえる10%台まで下落していた。

 ところが、鳩山氏が2日、小沢一郎前幹事長(68)を道連れにする電撃的辞意を表明し、菅氏が「脱小沢」の閣僚・党人事を断行した結果、閣内や党内を覆っていた沈うつな空気は一変し、わずか1週間で支持率を40ポイント以上も戻したのだ。

 まさに「菅マジック」といえ、来月に迫った参院選についても、「民主党単独過半数」「会期延長をせず、当初予定の7月11日投開票すべし」との声が高まっているが、これに水を差したのが「静かじゃない男」こと、亀井氏その人。

 亀井氏は9日午後の記者会見で、国民新党の悲願であり、連立政権の合意事項である郵政法案について「何も心配していない」と述べ、会期内の成立は当然との認識を強調した。会期末が16日に迫る中、これは事実上の会期延長要求といえる。

 10日午前には、都内で仙谷氏(64)と会談。亀井氏はあくまで今国会での法案成立を求めたが、仙谷氏はその後の記者会見で「今国会で郵政改革法案が成立できるかはともかく、早期成立を期すとの連立合意を誠実に履行したいと伝えた」と述べ、今国会での法案成立は見送る考えを伝えたことを明らかにした。

 これに先立ち、民主、国民新党両党の国対委員長が国会内で会談。民主党側は参院側から延長に反対する意見が強いことを伝えたが、国民新党側は「亀井代表は連立離脱の覚悟だ」と述べ、物別れに終わった。

 普天間問題をめぐって先月末、福島瑞穂党首(54)率いる社民党が「普天間飛行場の辺野古移設は絶対に認められない」「県外か国外だ」などと条件闘争を展開し、最終的に連立離脱に至ったことを思い起こさせる、まさにチキンレース風の展開となってきたが、民主党関係者は冷静にこう語る。

 「社民党と国民新党では、条件も状況も違う。社民党は鳩山内閣の支持率が低迷する中、『普天間問題で存在感を示して参院選を有利にしよう』とソロバンを弾いた。一方の国民新党は60%以上の高支持率を誇る菅内閣が相手。ここで連立離脱して少数野党となっても展望はない。与党で閣僚ポストを得ているから政策実現ができる。海千山千の亀井氏としては、条件次第ですべてを飲み込むはずだ」

 そして、同党国対関係者の「1日延長」という仰天プランを明かす。

 「郵政法案の今国会成立は無理だが、国民新党の顔も立てて連立を維持させる案だ。11日に首相の所信表明演説を行い、14日と15日に各党の代表質問を受ける。16日は閉会予定日だが1日延長して、予算委員会を開く。ここで、国民新党からの質問に対し、首相が『次の臨時国会で成立を必ず期する』と答弁して、納得してもらう」

 参院選間近の終盤国会。与党間の調整はうまくいくのか。

2010.06.10 ZAKZAK

菅総理 途中で投げ出すことなかれ

2010年06月10日 | 情報一般
菅総理に求めることはただ一つ、途中で投げ出すことなかれ

 菅直人内閣が正式に発足した。

 鳩山首相の突然の辞任を受けて代表選に出馬、樽床伸二議員を大差で破り、念願の内閣総理大臣の座を射止めた。

 国会議員わずか4人の社民連から政治人生をスタートさせ、少数野党の悲哀を味わいながらも、菅は首相になるという夢を一度もあきらめなかった。

 元政策秘書の松田光世氏は、菅と初めて会った学生時代のことを、今も鮮明に覚えているという。

「“市民ゲリラ”の菅直人がやってくる、なんていう看板が学園祭の会場に飾ってあった。なんだろう、この人は? というのが最初の印象だった。今の菅とまったく変わらない。菅直人という政治家は30年間、一貫して首相になったら――ということばかり考えている人だ」

 筆者が、菅直人と初めて会ったのは96年の春のことだった。旧軽井沢の鳩山別荘で、新党立ち上げの密談現場に居合わせたものだった。ただし、会ったといっても所詮、人気絶頂の国会議員と別事務所の秘書の間柄である、会話などもちろんない。

 ただ、鳩山兄弟と語らう菅氏は、とにかくよく喋りよく笑い、そして何時間でも政治談議をすることができるエネルギッシュな人物だという印象を受けた。

 当時、「イラ菅」とも綽名された菅首相だが、実際、きわめて激しい人物だった。

 おそらく夏の東京都議会議員選挙の時のことだったと思う。渋谷ハチ公前での街頭演説に向かう菅の乗った車が大渋滞に巻き込まれ、到着が遅れてしまったのだ。最初は車の中で静かだった氏だが、なかなか進まない渋滞の中でいよいよ痺れを切らした。同乗している若いスタッフに対して怒りを爆発させたのであった。

「なんでこんな道を通るんだ」

「誰だ、こんな遊説スケジュールを組んだのは」

菅の怒りが収まる気配は一向になかった。手刀を切るような独特の手振りで、若手スタッフに対して罵倒を続けている。

 そうこうするうちに、遊説車は渋谷ハチ公前に到着した。車のドアが開く。鬼の形相をスタッフに向けたままなのだろうか。

 菅の靴が地面に着いた。ふとその表情を見れば、なんと満面の笑みに変わっている。そこにはまったく別人の菅直人が立っていた。

■駆け引き上手で平気で惚けるクレバーな政治家

 バルカン政治家――。

 菅直人の印象といえば、筆者はいつもこの言葉を思い出す。

 ヨーロッパの“弾薬庫”とも呼ばれたバルカン半島は常に政情不安定の中にあり、ゆえにそこでは、巧みな駆け引きに長けている政治家でないと生き残れないとされた。

 日本では、少数派を率いた三木武夫元首相や、新党さきがけの武村正義元大蔵大臣がそう呼ばれる。少数政党で生きてきた政治家特有の嗅覚があるのだろう。前出の元秘書の松田氏も、そうした菅氏の柔軟性を認める。

「駆け引き上手で、平気で惚けることもできてしまうクレバーな政治家だ」

 権力も、カネも、相対的にもっていなかった菅直人が、どうして首相の座に上り詰めることができたのか。

 民主党時代でいえば、菅は鳩山という「カネ」に寄り添ったかと思えば、今度は突然に小沢という「権力」に近づいたりすることで、自らの地位を強固にしてきた。何より、そうした絶妙な距離感を保つことがうまかった。

 もちろん、失敗もある。衆議院選への初出馬以来、3回連続で落選し、民主党代表選にも3度敗れている。

 だが、菅はそうした中から這い上がってきたのだ。

 元秘書のひとりはこう分析する。

「菅さんは『太陽』のような政治家だよ。距離感を持って接すれば、暖かく、誰にとっても有益で、しかも明るく輝いている。だけど近づきすぎてはダメだな。あまりにも近くに寄りすぎると、暑くて堪えられないどころか、焼け死んでしまうからね」

 菅直人の魅力はそうした欠点も含めた激しさにある。それが、これまでの首相と違った強さに感じるのだろう。

■世襲のお坊ちゃま総理たちが日本の国際的信頼を毀損した

 日本は、安倍、福田、麻生、鳩山と4代連続で首相を輩出した家で育った世襲議員が国のトップを務めてきた。そうしたお坊ちゃま宰相の特徴が、任期途中での辞任や、世間と遊離した発言の繰り返しであることはもはや説明に及ばないだろう。

 この4年間で日本の国家的信頼は大きく毀損された。それもそうだろう。サミットが終わる度に会談を持ったばかりの日本の首相は辞めていなくなってしまうのだ。

 世界は、日本の交渉窓口を探していた。だが、いまや政治が機能していないことを悟り、もはや国際政治のプレイヤーとして認めなくなってしまった。

 菅直人首相に求めることはただひとつである。

 首相を途中で辞めないこと――。

 きわめて低いハードルだが、それこそが今の日本の首相に求められる最低限の任務なのである。

2010年6月10日 ダイヤモンドオンライン
上杉隆 ジャーナリスト

中国に失望、軍拡を懸念 米統参議長

2010年06月10日 | ニュース一般
中国に失望、軍拡を懸念=哨戒艦事件対応も不満-米統参議長

 【ワシントン時事】マレン米統合参謀本部議長は9日、ワシントン市内で講演し、中国がゲーツ国防長官の訪中を拒否したことについて「相互理解の機会を逃すことになり、失望した」と述べるとともに、中国の軍拡に強い懸念を示した。

 マレン議長は「海軍の遠洋展開能力と空軍力向上のために中国が行っている莫大(ばくだい)な投資は、中国の主張する領土防衛の意図と一致しない」と指摘。軍拡に「心底憂慮している」と語った。

 また、韓国の哨戒艦沈没事件への対応について、「国際社会の要請に中国が十分応じていない」と指摘。「米国は韓国を全面的に支援し、数週間のうちにその連帯を示す」と述べ、米韓合同演習を計画していることを強調した。

2010/06/10 時事通信

政治とカネ 「透明性」掲げたからには

2010年06月10日 | 社説
政治とカネ 「透明性」掲げたからには

 新政権の出足を左右しかねない。船出した菅内閣に「政治とカネ」の火の粉が早くも降りかかっている。荒井聡国家戦略担当相の事務所費をめぐる問題が浮上、小沢一郎・民主党前幹事長の資金管理団体の問題に関する国会での説明責任も改めて問われている。

 鳩山内閣の退陣を教訓に透明性を掲げ菅内閣が発進した直後だ。荒井氏は「問題ない」と語り、政府・民主党も同じ認識を示しているが、野党側は国会で追及する構えだ。事実関係の解明から逃げていては自浄能力を発揮したとは言えまい。菅直人首相の姿勢が早くも問われる。

 問題となったのは荒井氏が東京都内の知人宅を「主たる事務所」として届けていた政治団体だ。収支報告書によると03~08年に合計約4222万円の経常経費が計上され、事務所費約1013万円も含まれる。ところが知人は毎日新聞の取材に「家賃は受け取っていない」と話すなど、活動実態に疑問が持たれている。

 事務所費をめぐる疑惑や不祥事は07年以降、自民党政権時代に閣僚を相次ぎ辞任に追い込み、内閣に痛撃を与えた。家賃や電話代、光熱費などが不要な場所に事務所が置かれたのに高額な費用が計上され、不明朗会計と批判されたためだ。

 荒井氏は菅首相の側近として知られ、国家戦略担当相は政治主導を実現するエンジンだ。政府は「党の調査結果として(事務所費の)内訳の積算合算額が合致しており、問題はない」(仙谷由人官房長官)と説明するが、不十分だ。新政権の出足に支障を来さぬためにも本人がさらに説明し、活動実態を裏づける領収書など、十分な資料を示すべきだ。

 「政治とカネ」をめぐり同様に気がかりなのが小沢前幹事長の国会での説明責任だ。菅氏は小沢氏の証人喚問や政治倫理審査会への出席について「幹事長を辞任したことは一定のけじめだ」と述べ、慎重な姿勢を示している。

 鳩山内閣がそもそも政策の推進力を失ったのは、鳩山由紀夫前首相と小沢氏のツートップが政治とカネをめぐる渦中に置かれてしまったことだ。首相は代表選出馬にあたり「政治とカネにけじめをつけたい」と語ったはずだ。ぜひとも言行一致でのぞんでほしい。

 毎日新聞の世論調査では、菅内閣の支持率は66%に達し、「脱小沢」の体制を敷いた新政権への期待の高さを裏づけた。焦点となっている国会の会期延長問題では延長せず参院選に突入する意見が党内に広がっているが、小沢氏の国会での説明を棚上げする思惑も働いているのではないか。そんな守勢では、せっかくの期待もしぼみかねない。

2010年6月10日 毎日新聞 社説

6/9有明妙

2010年06月10日 | コラム
6/9有明妙

 〝脱小沢〟。民主党の小沢一郎前幹事長の影響力について語る時、本人は心外だろうが、どうしても人の口をついて出る言葉。時代が昭和から平成に変わってこの二十余年、日本の政治は小沢一郎という政治家の動向に大きく左右されてきた。〝政変〟の真ん中に必ずこの人がいたからである。

 30年以上前、自民党県選出の愛野興一郎代議士(故人)の選挙応援にやって来た若き小沢氏を見た。当時、全く知らない顔。愛野さんに「あの人は?」と訪ねたら、「若いのにたいした男だ」。その言葉通り、小沢氏は47歳で大自民党の幹事長に就くなどずっと党中枢に。

 1990年代当初、鉄の結束を誇っていた自民党最大派閥竹下派には〝7奉行〟と呼ばれたすご腕の政治家がいた。梶山静六、橋本龍太郎、小渕恵三、奥田敬和、渡部恒三、羽田孜、そして小沢一郎である。しかし、派閥会長だった金丸信・自民党副総裁が〝政治とカネ〟で失脚。これが政変劇の序奏だった。

 金丸失脚の渦中、繰り広げられた梶山氏と小沢氏のいわゆる「一・六戦争」。この内輪もめに端を発し、今度は小渕氏を次期会長に推す橋本氏と、羽田氏を担いだ小沢氏との「一・龍戦争」へ。この権力抗争の果ての混乱で1993年6月、ついに自民党は下野。戦後38年に及ぶ一党支配の終焉(しゅうえん)となった。

 以後、日本の政治は連立政権の時代に。政権交代もあったが、わずか8カ月で退陣した鳩山政権の後を受けて菅直人政権が発足した。どん底にあった支持率も上昇した。この好感は国民の政治刷新への素朴な期待と願いにほかならない。勘違いはだめだ。

 無役となった小沢氏の政治とカネの問題に決着がつけられるかどうか、本当の〝脱小沢〟はそこにある。

為政者が心すべき沖縄問題の歩みと県民感情

2010年06月10日 | 新聞案内人
為政者が心すべき沖縄問題の歩みと県民感情

 普天間問題を抱える菅首相は、記者会見で「数日前から『琉球処分』という本を読んでいる。まだあまり進んでいないが、沖縄の歴史も私なりに理解を深めていこうと思っている」と述べた。

 それも悪くはないが、菅氏が国政の場に登場したのは、沖縄が復帰してかなり後のことである。「小指の痛みは全身の痛み」と言われた戦後の「沖縄問題」の歩みを再認識してかかることの方がむしろ大事ではないか、私はそう考えている。

○アンビバレントな感情

 第2次大戦中、日本で唯一悲惨な地上戦が行われた沖縄は、敗戦後本土から切り離され、極東米軍の指揮下に置かれた。さらにサンフランシスコ講和条約では、沖縄の行政、立法、司法はアメリカの施政下に委ねる、と規定された。同条約が発効した1952年4月28日は、本土にとっては「独立達成の日」だが、沖縄にとっては「屈辱の日」であり、子どもたちは長い間「日本から捨てられた日」と教えられてきた。

 このように祖国復帰を切望しながら、他方で同胞としての思いやりが感じられない本土政府の対応や、広がる格差への恨みと焦り、そうしたいわばアンビバレントな県民感情が形成されていった過程を為政者は心に留め置き、対処する必要があると思う。それは政治部記者時代、沖縄問題の取材にあたった私の原体験でもある。

 意外に思う人がいるだろうが、沖縄の祖国復帰運動の原点は、日の丸掲揚と教育制度の本土との一体化であった。教職員組合が中核になって祖国復帰協議会を結成し、「日の丸を立てよう運動」の展開に乗り出したのが始まりである。

 「60年安保騒動」のさなか、アイゼンハワー米大統領が沖縄を訪れた時、復帰協は祖国復帰の意思を表明する最も効果的な方法として「全島各家庭で日の丸を掲げ、沿道には手に手に日の丸を持って参集する」ようアピールを出した。

 日の丸が学校や市町村役場など公共施設にも掲揚が認められるようになったのは、それから2年後の池田首相・ケネディ大統領会談である。沖縄の施政権はアメリカが掌握している以上、国旗はあくまで星条旗であるというのがそれまでの米側の方針であった。

 65年8月、佐藤首相が日本の首相として初めて沖縄を訪問した。首相は、那覇空港での歓迎行事から日の丸の中をパレードしたが、同夜は、首相との面会を求めて宿舎を取り囲んだデモ隊の座り込みでホテルに帰れず、米軍司令部の迎賓館で一夜を明かすという屈辱的な体験を味わっている。

 この時首相は「沖縄問題はなかなか複雑、困難な面がある。任重くして道遠しの感がある」と述懐している。

○普天間返還合意

 普天間基地返還は、佐藤首相の門下生、橋本首相が、クリントン大統領に働きかけ、副大統領まで務めた米民主党の重鎮モンデール駐日大使との数度にわたる膝詰め談判で実現にこぎつけた。直後に首相は大使とともに沖縄の太田知事に電話し、返還合意のあらましと県内移転である点を伝えた。大使に対する知事の返事は「ありがとう」であったが、県民の間には不満と反発が残った。

 後継の小渕首相は、2000年の節目の年に日本に回ってきたミレニアム・サミット(主要国首脳会議)の開催地に沖縄を選んだ。突然の死でホスト役を果たせなかったのは惜しまれるが、普天間問題への配慮も当然あったはずだ。

 成算もないまま期待感ばかりをあおった鳩山前首相の政治手法は、そうした努力の積み重ねを台無しにするものだ。菅首相は8日の記者会見で、名護市辺野古周辺に移設する日米合意の履行を強調した。まず民主党政権に対する地元の不信感を解きほぐすことから始めなければならないが、最初の関門は、8月末が期限の代替施設の工法の決定だ。

 沖縄本島の基地を中心に同心円を描くとベトナム、カンボジア、中国、モンゴル、ロシア、シベリア地域まで3000キロから4000キロの範囲にすっぽり入る。情報管理、軍事機能面で地政学的に重要な位置付けにある。日本周辺では、朝鮮半島情勢に加えて、近年は、海軍力の増強目立つ中国艦隊の外洋進出で、東シナ海、南シナ海が緊張状態に置かれている。普天間基地の県外移設は、やはり困難と言わざるを得ない。

 日米安保条約は、アジア、太平洋地域の紛争を抑止し、安定と繁栄を担保する国際公共財と頼りにする国々がある。南シナ海の島をめぐって中国と領有権を争っているベトナム、マレーシア、台湾なども日米合意の行方に注目している。

2010年06月10日 新聞案内人
島 脩 元読売新聞編集局長

日本を次に待ち受けるのは危機

2010年06月10日 | 情報一般
日本を次に待ち受けるのは危機=竹中平蔵・慶大教授

 【ベトナム・ホーチミン】日本は、危機の到来をただ待つだけなのか。竹中平蔵・慶応大学教授(59)はそう考えているようだ。なぜ日本では過去4年間で5人もの首相が誕生しているのかとの問いに、竹中氏は、怠慢をその原因に挙げ、危機が迫っていると警告した。

 竹中氏は、現在ベトナムで開催されている世界経済フォーラム東アジア会議に出席する傍ら、本紙のインタビューに応じ、日本は典型的な「CRICサイクル」の最終段階にあると説明した。CRICとは、モルガン・スタンレー証券チーフエコノミストのロバート・フェルドマン氏が提唱する考え方で、Crisis(危機)、Response(反応)、Improvement(改善)、Complacency(怠慢)の頭文字を取ったもの。

 サイクルの第一段階では、危機(Crisis)が小泉首相を誕生させた、と竹中氏は述べる。小泉氏は、日本の経済問題に対して、銀行の不良債権処理を含め、当時経済財政政策担当相の竹中氏を中心に、厳しい施策で積極的に対処(Response)していった。そして、その結果、事態は改善(Improvement)した。

 「小泉政権後から現在まで、われわれは怠慢(Complacency)の段階にある。その意味で、次に予想されるのは、新たな危機の到来と新たなリーダーの誕生だ」と、竹中氏は話す。

 竹中氏と4日に首相に正式に指名された菅氏は、経済政策については明らかにお互い反対の立場にいる。二人の見解がいかに異なるかは、昨年12月に内閣府で行われた、日本の成長回復に必要な政策に関する非公開会合で明らかになった。

 竹中氏は、外部の視点から、商品やサービスを創造する際の制約を少なくし、供給サイドの成長を促す必要性を強調した。一方、当時内閣府特命担当相の菅氏は、景気回復には需要サイドに関する取り組みの方が重要だとし、竹中氏と小泉元首相が取った政策は社会の格差を拡大したと反論したという。

 「菅さんは当時、問題を明確に理解していなかった」と竹中氏は述べる。「わたしが言いたいのは、需要サイド政策と供給サイド政策は、互いに代替的なものでも、競合するものでもない。補完し合うものだということだ。新政権が、この点を理解してくれることを期待する」

 竹中氏は、菅内閣が力を入れる「財政再建」には、消費税の大幅な引き上げが不可避だと述べる。現在の財政赤字を補うために必要な40兆~50兆円の国債を毎年発行するには、消費税率を直ちに25%にまで引き上げる必要があるという。

 「しかも、菅さんは、社会福祉費も増やすつもりだ。そんなことは不可能だ。したがって、遅かれ早かれ、何らかの増税が必要だ」

 だが、供給サイド政策の根っからの支持者である竹中氏は、日本の問題解決はそれほど難しいものではないと主張する。手っ取り早い解決策として、竹中氏は次の2つを挙げる。まず1つは、法人税率を現在の40%から、香港と同水準の17%程度にまで引き下げること。そして、もう1つは、羽田空港を24時間運用とすること。そうすることで、例えば、香港への日帰り出張などが可能になり、東京をアジアの金融ハブへと変貌させることが可能だという。

 「北アジアで、この種のハブ空港を持っていないのは、北朝鮮と日本だけだ」

 だが、菅内閣のメンバーに関する竹中氏の評価は高い。「非常にいい」人選だとし、菅氏の人事手腕の高さが発揮されていると述べる。国家戦略・経済財政・消費者担当相の荒井聡氏と、官房長官の仙谷由人氏はいずれも、マクロ経済を理解している現実主義者だと話す。また、古川元久氏と福山哲郎氏の副官房長官への起用についても称賛している。

 では、日本が待ち望んでいる危機到来の引き金となるものは何か。

 竹中氏は、政府の債務残高は今後2、3年で約1100兆円に達する見込みだと指摘する。これは、日本の純国民金融資産とほぼ同水準だ。

 「つまり、その水準を超えると、政府の借金を国民資産で賄うことが不可能になるということだ」と竹中氏は述べる。国内貯蓄で政府債務を吸収できなくなったときが、危機の到来だ。すなわち、円は売られ、債券・株式相場は下落し、金利は上昇する。

 竹中氏は今でも、外貨建て資産の金利上昇は、一部の日本人の間に「暗黙の、静かな資金流出」を招くと考えている。

 新政権が、そうした危機を回避できるかどうかについては、竹中氏は控えめに次のように述べるにとどまった。「現時点では、菅さんがこの体制を変えることができるかどうかは不明だ」

6月9日 ウォール・ストリート・ジャーナル

米原油流出 海からの警告なのか

2010年06月10日 | 社説
米原油流出 海からの警告なのか

 米メキシコ湾の原油流出は、発生から一カ月半を過ぎても衰えず、史上最大の環境汚染といわれ始めた。われわれは、海を蝕(むしば)む油の染みさえ容易に止められない。消し去る力も持っていない。

 どうして早く止められないのと、多くの人が思うだろう。だが、原油の激しい流出は、今この瞬間も続いている。これが現実だ。後手後手に回る対応策は「オバマ政権のカトリーナ」とも呼ばれ、秋の中間選挙への影響すら懸念されている。

 米国南部ルイジアナ州のメキシコ湾沖合約八十キロ。英国の国際資本、BPの石油掘削施設が爆発、沈没し、約千五百メートルの深海底から地中に延びる深さ五千五百メートルの掘削パイプが折れた。史上最深の油井を採掘したとして、注目を浴びたばかりの施設である。

 一日最大三千キロリットルが噴き出していて、総流出量は、一九八九年にアラスカ沖で座礁したタンカー「エクソン・バルディズ号」から流れ出た、当時最悪の約四万キロリットルをすでに大きく上回る。

 流出原油の帯は日に日に伸び、米国屈指のエビ漁場である海や、鳥が憩う水辺の生態系、そして漁民の暮らしにも深刻な影響を及ぼしている。日本の需要を支える大西洋クロマグロの産卵海域にも打撃を与える恐れがある。

 当初は早期沈静化の楽観論があった。しかし、人類は宇宙以上に海の中を知らないとすらいわれている。深海では、人も機械も思うようには動けない。油井に泥を流し込む作戦や、ロボットを使った封じ込めなど、最先端技術の挑戦も次々退けられた。

 われわれは、流出した原油を消し去る魔法を持っていない。回収技術は、二十年前からほとんど進んでいない。バルディズ号から出た原油の一部は未回収のまま今も生態系を汚しているという。

 BP側の責任を問うだけだった米国政府は五月末になってようやく、対策の先頭に立つ姿勢に切り替えた。

 初動の遅れが残念だ。豊かな海にじわじわと広がる赤黒い油の染みは、あらためて警告を発しているようにも見える。

 第一に、海の中には人間や科学の力がまだ遠く及ばない。第二にはそうでなくても、技術を過信するのは危険である。第三に、生態系は傷つきやすく、汚染に遭うと元に戻すのが難しい。そして、海に囲まれ、海の恩恵を受けているわれわれも、遠い米国の環境汚染に、無関心ではいられない。

2010年6月10日 中日新聞 社説

6/10余録

2010年06月10日 | コラム
6/10余録「ペリカンの受難」

 米ルイジアナ州の州旗にはペリカンの巣の中の親鳥と3羽のヒナが描かれている。よく見ると親鳥の胸の上には、三つの赤い点が見える。これは親鳥が自らのくちばしで胸を傷つけ、したたる血をヒナに与えている様を描いているのだという。

 実はこの図柄、中世ヨーロッパから伝わる「敬虔(けいけん)なペリカン」という由緒ある紋章らしい。ペリカンは死んだヒナを自ら流す血で蘇生させるといわれ、「自己犠牲」を表すシンボルとなり、キリストの受難図にも描かれた。

 ルイジアナが「ペリカンの州」と呼ばれるのは、初代州知事が沿岸に生息するペリカンを見て、この図像を州章に用いたからという。だが今その生息地からは「親鳥もヒナや卵も姿を消していく」との悲痛な声が聞こえる。

 米南部沖のメキシコ湾で続く原油流出による生態系への影響が深刻化している。油はすでにルイジアナ州はじめ4州の沿岸に漂着、漁業や観光に大きな損害を与えているばかりでなく、ミシシッピ河口近くの海や湿地からは油まみれのペリカンの映像が伝わってくる。

 ペリカンの保護と油の洗浄を行っている現地の保護施設では、運び込まれる鳥の3割はすでに死んでいたという。巣に残されたヒナや卵も全滅は免れそうにない。もちろんペリカンの悲劇はルイジアナの海と沿岸の全生態系を襲っている惨事のほんの一端にすぎない。

 オバマ大統領が来週4回目の現地視察を行うのも、海鳥のショッキングな映像が被害の深刻さを全米に印象づけたことと無縁でなかろう。血を流す図そのままに、身をもって生命の海の危機を告げるペリカンの受難に人類はどう応えるのか。

都城市の牛に口蹄疫の疑い 畜産王国

2010年06月10日 | ニュース一般
都城市の牛に口蹄疫の疑い 畜産王国、9頭殺処分へ

 宮崎県都城市で口蹄疫感染の疑いがある牛が見つかり、記者会見する県の担当者=9日夜、宮崎県庁
 宮崎県は9日、同県都城市の農場でよだれなどの症状のある牛3頭が見つかり、同じ建物で飼育中の牛を含め9頭に口蹄疫感染の疑いがあるとして、殺処分することを決めた。

 感染の有無を調べる遺伝子検査のため、検体を動物衛生研究所の関連施設(東京)に送っており、検査結果は10日朝に出る見通し。結果が陽性であれば、県は同じ農場でほかに飼育する牛241頭も処分する。

 全国有数の“畜産王国”にも感染が疑われる牛が見つかる事態となり、周辺の自治体の警戒はさらに強まりそうだ。

 政府は10日午前、官邸で対策本部の会合を開き、対策を協議する。

 県は結果にかかわらず、農場を中心に半径10キロの家畜の移動制限区域と、同20キロの搬出制限区域を10日に設定する。鹿児島県の一部も牛や豚を動かすことができなくなる可能性がある。

 県によると、9日午後2時40分ごろ、獣医師がよだれや、舌のただれなどの症状がある牛がいると、都城家畜保健衛生所に連絡した。同日夕、県は写真判定で9頭に感染の疑いがあると判断した。

 都城市はこれまで感染が広がっていた同県東部の川南町などと約50キロ離れ、鹿児島県と接している。

2010/06/10 共同通信

国会延長問題 予算委での政策論争が必要だ

2010年06月10日 | 社説
国会延長問題 予算委での政策論争が必要だ

 通常国会の会期が残り1週間を切り、会期を延長するかどうかが焦点となっている。

 国民新党は、郵政改革法案を今国会で成立させるべきだとして、会期延長を主張している。

 野党各党も、小沢一郎・民主党前幹事長らの「政治とカネ」の問題や、米軍普天間飛行場移設問題などをテーマに、会期を延長してでも予算委員会を開催するよう求めている。

 これに対し民主党は会期延長に消極的で、党内には、首相の所信表明演説と代表質問だけで国会を閉会すべきだとの意見が強い。

 菅内閣の支持率が高いうちに、16日に国会を終え、7月11日投開票の日程で参院選を実施した方が有利、と判断しているようだ。

 会期末とはいえ、首相交代という異例の事態である。菅首相が真っ先になすべきは、内閣として取り組む政策目標を提示して、それを実施する具体的な道筋を明らかにすることだ。

 参院選の争点を明確化するためにも、与野党が積極的に政策論争を行うことが求められる。

 質問と答弁が一方通行の代表質問では、首相の政治姿勢や内政・外交全般にわたる考え方は十分わからない。やはり予算委を開催して、一問一答形式で双方向の議論をかわすべきだ。

 論戦の機会を奪い、選挙の得失だけを考える。そうした姿勢は、大正から昭和初期にかけ、政友会と民政党などが、交互に野党側の質疑をさえぎる形で衆院解散を繰り返し、政党政治への信頼を失墜させたことを想起させる。

 今回同様、通常国会中に首相が交代した2000年の森首相の場合、所信表明演説と代表質問だけでなく、衆参両院の予算委で質疑に応じてから衆院を解散し、総選挙に臨んでいる。

 首相が交代した以上、国会論戦を通じて、有権者が1票を行使するための判断材料を提供するのは当然のことだ。民主党は予算委員会の開催に応じるべきだ。

 「政治とカネ」の問題も、置き去りにされている。

 小沢氏がいったんは出席の意向を示した政治倫理審査会も開催されないままだ。これで国会を閉じれば、「疑惑隠し」のそしりは免れまい。

 菅首相は野党時代、予算委で政府を厳しく追及してきた。首相に就任したとたん、守勢に回るのでは、論客の名が泣くだろう。攻めの姿勢で野党との論戦に臨んでもらいたい。

2010年6月10日 読売新聞 社説

6/10産経抄

2010年06月10日 | コラム
6/10産経抄

 「『君が代』はどういう位置を占めているのだろう」。作家の佐藤優さんが、5日付「サンケイエクスプレス」紙への寄稿のなかで、菅直人首相に対して、こんな疑問を呈している。出演者とスタッフ全員が「君が代」を斉唱するのが習わしのラジオ番組に出たとき、首相は一人だけ歌わなかったそうだ。

 平成11年に成立した国旗国歌法案にも、反対票を投じている。首相となった今の考えを、小欄も聞きたい。市民運動の活動家出身で、「草の根」という言葉を好む首相の、国家観を知る道しるべでもあるからだ。

 もっとも、菅首相は、自分に都合の悪い質問を極力避けようとしている。おとといの就任記者会見では、メディアの取材によって、「政権運営が行き詰まる」との、驚くべき発言を行っていた。

 ことさら小紙は目障りな存在らしい。会見で拉致問題に触れなかった首相に対して、小紙の記者が対北朝鮮政策について質(ただ)そうと挙手したものの、指名されなかった。先月28日の鳩山由紀夫前首相の会見に続いての「取材拒否」である。

 首相は「煙たい存在」だった仙谷由人氏をあえて官房長官に起用した人事を自賛しているではないか。「煙たい」メディアを排除するのは理屈にあわない。自らの内閣を「奇兵隊内閣」と名付けるほどに、隊を結成した高杉晋作を敬愛している首相である。高杉が作ったといわれる奇兵隊の歌にあるこの文言をご存じだろう。

 「聞いて恐ろし見ていやらしい、添うてうれしい奇兵隊」。時に耳に痛い報道や論評の方が、頼りになることもある。高杉の「逃げる」ときの速さをたたえているが、常に投獄、暗殺の危険にさらされていた高杉とは立場が違う。首相は、逃げてはいけない。

3Dパソコン 相次ぎ登場

2010年06月10日 | ニュース一般
3Dパソコン、相次ぎ登場=新たな需要開拓

 パソコン大手各社が、立体映像を表現できる3次元(3D)対応製品を相次いで発売する。富士通やNECはデスクトップ型、東芝はノート型で、いずれも専用メガネを使い、3D対応の映画などを視聴できる。パソコンの低価格化が進む中で新たな使い方を提案し、需要喚起を狙う。
 富士通が9日発表した「FMVエスプリモ FH550/3AM」は、ディスプレーの上に二つの「3Dカメラ」を内蔵。利用者が自分の3D映像を撮影し、家族や知人に送ることができる。17日発売で、価格は20万円を切る見通し。

 佐相秀幸副社長は「国内の消費者は映像を作る機能に敏感。3Dカメラを、昨年登場した『ウィンドウズ7』に続く起爆剤にしたい」と意気込む。

 NECが24日に発売する「バリュースターN VN790/BS」(想定価格22万円)は、富士フイルムの3D対応デジタルカメラで撮影した写真を表示するソフトを搭載した。従来方式で撮影した写真やDVDソフトも擬似的に立体化できる。

 いずれのパソコンも3Dの映画を視聴できるが、パソコンはテレビと違って自作の映像を加工しやすい特徴がある。両社とも、ここにポイントを置いているようだ。

 一方、東芝は高画質を重視。7月下旬発売の「ダイナブックTX/98MBL」(同25万円前後)では、専用メガネが左右交互に高速開閉する「アクティブシャッター方式」を採用した。富士通やNECの「偏光方式」より視野角が広いなどの利点があり「高画質の映像表示が可能」(広報室)とアピールする。

2010/06/09 時事通信

強い社会保障 統合と選択と持続を

2010年06月10日 | 社説
強い社会保障 統合と選択と持続を

 「強い経済、強い財政」はわかるが、菅直人首相の言う「強い社会保障」とは何かよくわからないという人が多い。が、日本の社会保障は弱い。何が弱いのかといえばまず財源である。世界一の高齢国でこれからますます高齢者が増え続けていくというのに、税と保険を合わせた国民負担率は先進国で最低水準だ。医療や介護の現場を破綻(はたん)させないために消費税引き上げも含めた負担増を論議するのは必然である。

 もちろん財源をやみくもにつぎ込めばいいということではない。社会保障費の内訳を見ると年金や医療の比重が大きく、次が介護、ずっと下がって生活保護や障害者福祉や子育て支援がある。医療や生活保護も高齢者の占める割合が大きく、実際のところ現役世代の社会保障はほとんど注目されてこなかった。日本では雇用が安定しており現役世代の不安要因を吸収してきたからだ。しかし、今や非正規社員が労働者全体の3分の1を占め、完全失業者は300万人を超える。時代のニーズに合った職業訓練などの積極的労働市場政策に重点を置き、福祉を受ける側から働いて税金を払う側へ転換を促す必要がある。また、介護や育児サービスを充実させることは雇用の受け皿を作るだけでなく、介護や育児のために離職している有用な人材の職場復帰を促すことにもなる。

 強い社会保障のためには、第一に重点目標を定めて政策を統合することだ。場当たり的に給付や負担軽減をするだけでは社会保障の機能が高まらない。成長産業へ労働力を移していくためにも雇用を中心に教育と社会保障を統合した改革が必要だ。

 第二は優先的に実施すべき政策を選択することである。財源がない以上やれることは限られる。自民党政権を批判していた声をかき集めたのが総選挙時の民主党マニフェストだった。もう一度課題を精査し、多くの国民が安心を実感できる政策が何なのかを見極めるべきだ。

 第三は持続可能な制度設計である。わが国の子育て政策の予算水準は先進国の中で極めて低く、来年度から子ども手当を満額支給してやっと欧州並みになる。しかし、予算の組み替えで16兆円捻出(ねんしゅつ)するという当初民主党が描いていた前提が崩れた以上、支給額が現実的なものになるのもやむを得ない。保育所の整備など現物給付の充実を求める声にも応えなければならない。

 この数年、政権は1年持たず、社会保障制度も3年持たずに変更を迫られてきたものが多い。少子化対策などは何年も続けなければ効果が表れない。政局や選挙に巻き込まず、安定して長期間実施することが強い社会保障を実現する条件である。

2010年6月10日 毎日新聞 社説