【時事(爺)放論】岳道茶房

話題いろいろだがね~
気楽に立寄ってちょ~

奈良時代に日本人も牛豚食用

2010年06月17日 | ニュース一般
奈良時代に日本人も牛豚食用 寄生虫の卵で裏付け

 平城宮(奈良市)内の役人らが奈良時代後半に牛や豚の肉を食べていたことが、土壌化した当時の人ぷんなどから検出した寄生虫の卵で分かり、調査した奈良文化財研究所が17日、発表した。

 牛や豚の肉食はこれまで外国人の習慣と考えられる傾向にあったが、当時の日本人も食べていたことを科学的に裏付けたのは初めて。古代の食生活を研究する上で貴重な史料となりそうだ。

 出土したのは平城宮内で官庁が集中していた地区の一画。木簡から宮や天皇を守る軍組織「衛府」があった可能性が高いとされる。

 寄生虫の卵は、トイレットペーパー代わりに使われた棒状の木片「籌木」とともに、奈良時代後半とみられる5カ所の穴の土壌から検出した。

 アユやコイに特有の寄生虫の卵が高密度で検出され、これらの淡水魚を好んで食べていたことが分かるほか、牛や豚の寄生虫の卵も見つかり肉食の習慣が確認された。

 日本書紀や続日本紀によると、7世紀後半の天武天皇の時代には牛などを食べることを禁止する命令が出たほか、奈良時代の天平年間にも仏教的な観点から鳥獣の殺生禁止の命令が出た。

2010/06/17 共同通信

“菅効果"追い風で民主59、自民35大惨敗

2010年06月17日 | ニュース政治
“菅効果"追い風で民主59、自民35大惨敗 参院選予測

. 菅直人首相(63)率いる新政権の誕生で、来月11日の参院選情勢が劇的に変化した。「政治とカネ」や「迷走政治」で国民的不信を買った鳩山由紀夫首相(63)と小沢一郎幹事長(68)のツートップが退いたことで、昨年の政権交代直後の清心なイメージが復活したためだ。政治評論家、小林吉弥氏による最新の獲得議席予測では「民主党59議席」「自民党35議席」に。サッカーW杯日本代表のごとく、菅民主党は単独過半数目前の追い風状態に突入した。

 「完全に潮目は変わった。先月まで、民主党は酸欠状態でアップアップしていたが、『小鳩の退陣』で勢いを取り戻した。世論調査から、民主党から離れていた無党派層の半数以上が『もう一度、期待してみよう』と戻ってきているのが分かる。国民を失望させた8カ月間だったが、鳩山氏は最後の『小沢氏との抱き合い心中』で指導力を発揮した」

 小林氏はこう分析する。

 今回の獲得議席予測は、最新の世論調査に国政選挙での各党得票率、個別の選挙区事情などをもとに、選挙分析で定評がある小林氏が弾き出した。

 まず、与党陣営。菅首相(代表)率いる民主党は「単独過半数(122議席)獲得」のためには60議席が必要だが、小林氏は「選挙区38、比例区21の計59議席」と単独過半数目前の数字を予測。最大値ではプラス9議席で68議席に達する。

 「菅首相には、鳩山氏に足りなかった決断力への期待感があり、人事の冴えもある。鳩山時代は官房長官と幹事長がネックだったが、新女房役の仙谷由人官房長官(64)には安定感があり、枝野幸男幹事長(46)は仕分け作業で見せた鋭い切れ味と、小沢氏にない『若さときまじめさ』がうかがえる。国民は同じ民主党なのに変化を感じた。菅人事は歓迎されている」

 「無党派層の約半数が『民主党支持』に戻ったとすると、投票率50%で比例区では約1000万票が上積みされ、20人以上を当選させられる。投票率が伸びればさらに弾みがつく。選挙区の勢いもすごい。枝野氏は、小沢氏が掲げた『複数区に複数擁立』をほぼ踏襲したが、2人区の北海道や宮城、兵庫、3人区の愛知と千葉、5人区の東京などで複数議席を獲得する可能性がある」

 郵政改革法案の扱いをめぐり、亀井静香代表(73)が金融・郵政担当相を辞任した国民新党は「選挙区0、比例区1の計1議席」だ。

 一方、野党陣営はどうか。

 自民党の谷垣禎一総裁(65)は「40議席を上回りたい」と消極的な目標を掲げて批判され、「(与党の過半数割れに)政治生命をかける」と言い直したが、小林氏の予測では「選挙区26、比例区9の計35議席」と大惨敗。

 「与党ボケが深刻化している。有権者に対立軸をまったく示せていない。通常国会の終盤、『首相交代は小鳩隠しだ』『予算委を開け』などと批判していたが、国民の目線が前に進んでいるのに過去ばかり振り返っている。発信力ゼロ、すべてがズレている。国会閉幕にぶつけた内閣不信任案提出も、タイミングを逸したものだ。自民党王国の群馬や島根も安泰ではない。首都・東京で議席ゼロという可能性もある」

 「表に出ていないが、谷垣氏や加藤紘一元幹事長(71)らリベラル勢力と、安倍晋三元首相(55)ら保守勢力の路線対立も大きい。選挙に向けて党が一致結束できていない。(敗北濃厚な)参院選後を見据えた主導権争いが始まっている。まさに『党分裂前夜』という雰囲気だ」

 公明党は山口那津男代表(57)になって初の国政選挙。小林氏は「選挙区3、比例区7の計10議席」と予測。共産党は「選挙区1、比例区3の4議席」。普天間問題をめぐって連立離脱した社民党は「選挙区0、比例区2の計2議席」だ。

 「社民党は連立離脱で旧来の支持層を引き止めたが、新しく支持者が増える状況ではない」

 菅民主党の誕生で、注目度が下がった感があるのが新党各党。

 渡辺喜美代表(58)率いる「みんなの党」は代表格で、47都道府県での候補者擁立を目指す「四十七士作戦」を掲げていたが、「47都道府県プラス1で『AKB48作戦』に変えようかと思う」(渡辺氏)などと話題作りにも熱心。しかし、予測では「選挙区4、比例区4の計8議席」止まりだ。

 「小鳩退陣で甚大なダメージを受けた。1カ月前は『2ケタに届くか』とみられていたが、無党派層の民主返りで無理だろう。現に、出馬辞退する候補者も出ている」

 他の新党はさらに厳しい。平沼赳夫元経産相(70)と与謝野馨元財務相(71)率いる「たちあがれ日本」は「選挙区0、比例区1の計1議席」だが、舛添要一前厚労相(61)率いる新党改革や幸福実現党、日本創新党などは「0議席」と予測。

 「話にならない。各党とも、斬新なメッセージを有権者に送りきれていない。『その他、大勢、通行人』という惨状だ」

 小林氏の予測では、民主党中心の与党陣営は61議席、自民党中心の野党陣営は60議席となる。これに、非改選議席を加えると、与党陣営は128議席となり、過半数(122議席)を上回る。

 「民主党単独でほぼ過半数のため、国民新党以外とは連立政権を組みにくい。衆参両院で過半数を持つことになり、ひとまず民主党が安定した政権運営を続けることになる。注目は、小沢グループの動き。与党が割れると政界再編もあり得るが、菅民主党に大きなスキャンダルでもない限り、再編への仕掛けのタイミングは難しい。自民党は参院選後、新党を巻き込んでの離合集散の嵐に突入するだろう」

 有権者はどんな一票を投じるのか。

2010.06.17 ZAKZAK

小沢“凋落"で地元も見放した!?

2010年06月17日 | ニュース政治
小沢“凋落"で地元も見放した!? 岩手県紙が引退勧告

 民主党の小沢一郎前幹事長(68)に、おひざ元・岩手の県紙「岩手日報」(約22万部)が政界引退を勧告した。菅直人首相(63)の「脱小沢」路線で、永田町での地位低下が著しい小沢氏だが、地元での威光にも、かげりが見えてきたようだ。

 衝撃の引退勧告は、16日付の同紙論説に「『使命』果たしたのでは」とのタイトルで掲載された。

 編集局長や論説委員長を務めた宮沢徳雄委員(論説・制作担当常務)の執筆で、「昨年夏の衆院選で『政権交代』を果たした原動力が小沢氏であることは周知の事実」と、郷土の剛腕政治家を評価しながら、こう続ける。

 「世論は鳩山(由紀夫前首相)、小沢両氏につきまとった『政治とカネ』に嫌悪感を抱いているのが明らかだ。どうだろう。この辺で鳩山前首相と共に政界から身をひくことを考えてみては」

 「かつて評論家江藤淳氏が陶淵明の詩『帰去来辞』を引用して小沢氏に『帰りなん、いざ。田園まさに蕪(あ)れんとす。なんぞ帰らざる』と帰郷を勧めたことがある。すでに十分に『使命』を果たしたのではないか」

 小沢氏は今月4日、盛岡市の民主党会合で映したビデオレターで、参院選後に「先頭に立つ」と訴えたが、地元紙の諫言にどうこたえるのか。

2010.06.17 ZAKZAK

永谷園 大相撲懸賞から撤退検討

2010年06月17日 | ニュース一般
永谷園、大相撲懸賞から撤退検討 不祥事連発でスポンサー離れも 

 永谷園が、野球賭博問題に揺れる大相撲の懸賞の取り止めや大幅削減を検討していることが17日、分かった。新弟子死亡事件や力士の大麻事件に続く相次ぐ不祥事で、かえってイメージダウンになりかねないと判断したとみられる。

 永谷園はひと場所あたり200本以上の懸賞をかける大口スポンサー。不祥事が後を絶たない懲りない相撲界からのスポンサー離れが加速するのは必至だ。

 永谷園では、「(野球賭博は)大きな問題と考えており、成り行きをみながら検討中」としている。同社は、大麻事件が起きた際にも、2008年秋場所で、懸賞の本数を大幅に減らしたことがあるが、その後も不祥事が続いたことから、今回は、削減よりもさらに厳しい対応に踏み切る可能性がある。

 永谷園は、02年から懸賞を出し始めた。ちょうど若貴ブームが去り、相撲人気にかげりが出てきたころで、相撲界にはまさに救世主だった。お茶漬けのりの袋をデザインした懸賞旗は、いまや大相撲には欠かせない存在になっている。また人気力士の高見盛をCMにも起用するなど、単なる宣伝ではなく、「応援」の側面も強い。

 懸賞は1本6万円で、うち5000円が手数料として相撲協会の取り分となる。永谷園が撤退すれば、相撲界として1場所あたり1200万円の収入を失うことになる。

 大相撲の懸賞などのスポンサーには、森永製菓や日本マクドナルドなど、消費者と直接触れ合う企業も多い。懸賞を出しても、イメージダウンになるなら本末転倒で、撤退や削減の動きが広がりそうだ。

2010.6.17 産経新聞

英BP 補償基金に1・8兆円

2010年06月17日 | ニュース一般
16日、ホワイトハウスで、英BP社幹部らとの会談後に記者会見するオバマ米大統領(ロイター=共同)

英BP、補償基金に1・8兆円 原油流出事故で拠出

 【ワシントン共同】オバマ米大統領は16日、メキシコ湾の原油流出事故を起こした英石油大手BP社のスバンバーグ会長らとホワイトハウスで会談した。BP側は漁業や観光業に従事する被害者への補償に向けて基金を設立し、今後4年間で200億ドル(約1兆8300億円)を拠出することで米政府と合意した。

 スバンバーグ会長は米国民への謝罪を表明。BP側は、今年9月末まで株主への配当を凍結すると発表した。オバマ氏は、200億ドルは補償の上限ではないと強調し、BPには責任を取らせ続けると言明。米史上最悪の環境災害で強い対応を求める米世論に対し、オバマ政権はようやく目に見える成果を示した。

 ロイター通信によると、200億ドルはBPの平均年間利益に匹敵する。

 基金は独立した第三者が管理し、個別の被害者の請求を審査、正当と判断すれば基金から補償金を支払う。判断を不服とする被害者は、裁判手続きを通じてBPに賠償請求することもできる。

2010/06/17 共同通信

メキシコ湾原油流出事故の想像以上の深刻

2010年06月17日 | 情報一般
オバマ大統領ももはや打つ手無し
メキシコ湾原油流出事故の想像以上の深刻

 第110回全米オープンの取材のため、筆者は現在、米国カリフォルニア州ぺブルビーチリゾートに来ている。メディアセンターには全米のみならず世界中から多くの記者たちが集まっている。

 テントにはテレビスクリーンが何段も設置され、新聞や雑誌などが置かれている。ここ数日、どのメディアもトップニュースは同じ、メキシコ湾での原油流出事故一色である。

 米国の危機は深刻だ。1000メートル以上の深海から流失し続けている原油パイプの修理のためにあらゆるアイディアが試されたようだ。だが、どれもうまくいかず、結局、破損による流失を止める手段はないようだ。いよいよ万策も尽きようとしている。

 週末、オバマ大統領は現地を視察に訪れ、被害を受けた漁師など地元住民との対話を行った。その上で「BPには責任を取らせる」と明言し、壊滅的な環境破壊への補償を迫った。その額、およそ6900万ドル、日本円で60億円強である。

「BPには文句を言いたい気持ちもあるが、私はそうした仕事をするために大統領になったのではない。私の仕事はこの問題を解決することである」(オバマ米大統領)

 とはいうものの、米政府にできることは限られている。そもそも原油の流失は続いているし、BPという石油会社一社の責に帰するには問題があまりに大きくなりすぎてしまっている。

米国民の半数以上が
オバマ政権の対応に不満
 被害総額は甚大だ。新聞各紙のコラムでも、オバマ米大統領の対応に対して厳しい論調が目立ってきている。桁が2桁足りない、という批判もある。当初の米政府の初動の遅れを指摘する声は日に日に増しているようだ。

 オバマ大統領は、2005年のハリケーンカトリーナの被害の際にブッシュ大統領の受けた、メディアからの散々な悪評を思い出しているのかもしれない。だが、人命を除けば、それ以上の経済被害になることはほとんど確定的だという。

 10日に一回の割合で現地視察を繰り返しているものの、打開策は見えない。きょう火曜日には、オバマ大統領は、執務室(オーバルオフィス)でのテレビ演説を行った。

 全国民に向けてホワイトハウスから語りかけるのは就任以来初となるが、それだけこの事故が深刻で、場合によっては政権維持に影響するとみているようだ。

 実際、USAトゥデイとギャラップ社の合同世論調査によれば、53%の米国民が今回の原油事故に関するオバマ政権の対応に不満を持っているとなっている。

 米政府機関(NCAA)の最新報告によれば、発生から58日にして4億から10億ガロンもの原油がすでに流失し、メキシコ湾岸に深刻な環境被害をもたらしている。それは当然ながら、住民生活をも直撃している。

フロリダ半島の西海岸は
ほぼ壊滅状態
 アラバマ州モービルでは、シーフードレストランに次のような張り紙がされているという。

〈魚介類のマーケットが閉じてしまったため、無期限休業いたします〉

 レストランが休業に追い込まれるくらいだから漁業関係者はもっとひどい。中には仕事そのものに絶望し、船を捨ててしまった猟師もいるという。さらに悪いことに海洋汚染は一時的なものではなく、水面よりもむしろ海底に沈殿しているオイル被害の方が深刻だという。

 現時点で1152頭ものアザラシやイルカなどの海洋動物の死亡が確認されている。それらは当然ながら全体のごく一部である。

 オイル塗れになった水鳥や海カメなどの生物を助けようと、ボランティアが不眠不休で活動している。だが、救出するものの今度は放すところがなく、困惑しているのが実情だ。

 海洋汚染の範囲は日に日に広がっている。海流の関係でフロリダ半島の西海岸はほぼ壊滅状態になっている。しかもその潮流はリゾートの集まる東海岸にも流れ込んでいる。今週中にはその範囲にまで、さらに2週間後にはオイルで汚れた海水がニューヨークにまで到達するという観測もある。

菅首相の声が米国では
一切聞こえてこない
 原油価格も沸騰し、一ガロン3ドル以上と、自動車社会の米国にとっては致命的な値段になっている。

 米政府は、全国民に対して解決のためのアイディアを募集している。

 核兵器を使ってパイプを破壊し、それによって原油の流出を止める、などという奇想天外な案まで寄せられているという。

 だが、それも笑えない状況になってきた。もはや、手の打ちようのない今回の事故は、誰が解決するのか、誰が責任を取るのか、というレベルの議論ではなくなっている。

 米国のみならず、カリブ海全体、ひいては地球全体の問題になりつつある。

 日本政府は他人事として拱手傍観している場合ではない。事故を起こしたBPには日本企業も出資している。

 ここ米国では菅直人首相、あるいは日本政府の声が一切聞こえてこないのが心配である。

2010年6月17日 ダイヤモンド オンライン
上杉 隆 ジャーナリスト

「核のない世界」への課題と新政権

2010年06月17日 | 新聞案内人
「核のない世界」への課題と新政権

 環境問題や東アジアの共同体を掲げて外交政策に当初意欲的だった鳩山首相であるが、普天間基地の移設問題への対応につまずき、他の問題に具体的な成果を上げられないまま政権を去ることになった。

 国際政治は変動期を迎え、対応すべき課題も多いにもかかわらず、日本の外交政策と人々の関心が普天間の移設問題に集中してしまったことは残念であった。対応に失敗した鳩山首相に代わる菅首相が、所信表明演説で「責任感に立脚した外交・安全保障政策」として普天間基地の移設問題への対応を大きく扱ったが、それは当然のことと言えよう。

○積極的対応の姿勢

 鳩山首相が所信表明演説において外交について多くを語ったのに比べ、菅首相の所信表明演説は簡潔でありもの足りないが、普天間基地以外の課題の中に「核のない世界」に向けて日本が積極的に対応する姿勢を示したことは、たとえ1行であっても評価できよう。なぜなら、この時期、核軍縮及び核の不拡散に対する国際社会の機運が近年になく高まっているからである。

 このコラムでも言及したニューヨーク国連本部で開催されていた核不拡散防止条約(NPT)運用検討会議は、将来に向けた行動計画を含む最終文書を採択して、約1カ月にわたる協議を5月末に終えた。最終文書が採択できなかった2005年の検討会議に比べれば、今回は成果があったと言えよう。

 NPT体制は核兵器国と非核保有国との間の不平等性を含む多国間の枠組みであり、不平等性の解消がなされないため核不拡散の協議が進まず、枠組み自体の意義が問われてきたことは既に述べたところである。今回の最終文書を読んでみて、注目に値すると思ったのは、NPTに参加していない国としてインド、パキスタンに並んでイスラエルが名指しされ、NPT体制への参加を要請された点であろう。

 不平等性とともにNPT体制の弱点は、NPTに参加せずに核を開発する国が存在していることである。インドとパキスタンは、NPT体制の不平等性を批判してNPTの外で核兵器の開発を行った。イスラエルは、核兵器を保有していることは確実と思われているが、核を保有していることを明言しない曖昧な政策をとっている。こうした国々にはNPTの縛りは効かない。特に、イスラエル寄りの政策をとるアメリカは、これまでイスラエルを核保有国として名指しすることには慎重であった。

○イスラエル名指しの背景

 イランの核開発が問題になっている状況において、今回の会議では、2012年に中東の非核化会議の開催が最終文書に盛り込まれることが検討された。その際、イランの核開発を問題にする以上、イスラエルの核を問題にすべきという主張が、アラブ諸国を中心とした非同盟諸国から強く出された。では、中東の非核化に関してイランを名指しせずにイスラエルが名指しされたのはなぜか?それは、イランはNPT加盟国でありイスラエルは非加盟国であるからだ。イランの政策に反対する国々も、イランを反対に回して最終文書の採択に失敗するという事態に陥ることを避けたかったのであろう。

 「核のない世界」を掲げるアメリカのオバマ政権は、特に決裂を避けたかったと言える。また、譲歩したことの背景には、昨年のIAEAの年次総会で、イスラエルにNPTへの加盟とIAEAの保障措置に従うことを要請する決議が採択されたこともあげられるだろう。決議は、賛成49票、反対45票の僅差で採択された。賛成票はアラブ諸国を含む多くの途上国が、反対票はアメリカを始めとする先進国が投じた。この決議もあり、6月7日から始まったIAEAの定例理事会では、イランの核問題と並んでイスラエルの核保有が19年ぶりに議題となった。

 イスラエル寄りの政策をとってきたアメリカであるが、オバマ政権にとって、イランの核保有を問題にする以上、イスラエルの核保有を例外として位置づけることは「核のない世界」を掲げる以上困難であろう。アラブ諸国は、アメリカがイスラエルを例外とするこれまでの政策を二枚舌外交として批判してきている。NPTに参加しない核開発国に何ら制約がないままでは、核不拡散体制が実効性のあるものにはならないだろう。核兵器国が軍縮を行うとともに、NPTに参加しない核開発国をどのようにNPTやIAEAの保障措置の中に参加させるのかは、今後の大きな課題である。

 IAEAでのイスラエルに関する決議の投票数の僅差が物語っているように、この問題に関しての国際社会の態度は大きく分かれている。核の不拡散体制を実効性のあるものにするには、NPT内での核開発疑惑国への対応とともに、NPT外の核保有国への対応という厄介な問題に国際社会は取り組まなければならないのである。

2010年06月17日 新聞案内人
古城 佳子 東京大学大学院総合文化研究科教授

消費増税「早期に結論」

2010年06月17日 | ニュース政治
消費増税「早期に結論」 民主の参院公約判明

 民主党の参院選マニフェスト(政権公約)全文が16日判明した。消費税率引き上げを含めた税制の抜本改革について「早期に結論を得る」ことを目指して超党派での協議を開始すると明記、菅直人首相が主導する財政健全化路線を鮮明にした。米軍普天間飛行場の移設問題では、沖縄・辺野古崎移設に関する日米合意の履行とともに「沖縄の負担軽減に全力を尽くす」とした。首相が17日の記者会見で発表する。

 子ども手当では、2011年度から満額(1人当たり月額2万6千円)支給するとした衆院選公約を「(現行の)1万3千円から上積みする」との表現に修正し、満額支給を事実上断念。上積み分は「地域の実情に応じて、現物サービスにも代えられるようにする」として、保育所定員増や保育料軽減などの行政サービス拡大に充てる方針を打ち出した。支給対象は11年度から国内居住要件を課す。

 厳しい財政事情を踏まえ「新たな政策の財源は、既存予算の削減か収入増による捻出が原則」と歳出膨張圧力に枠をはめている。郵政改革法案は次期国会で速やかな成立を図るとした。

2010/06/17 共同通信

通常国会閉幕 選挙優先の議論逃避だ

2010年06月17日 | 社説
通常国会閉幕 選挙優先の議論逃避だ

 きのう閉幕した通常国会では、マニフェスト実現のために民主党内閣が提出した法案の成立が軒並み見送られた。背景にあるのは、夏の参院選を意識して、議論を避けようとする民主党側の姿勢だ。

 政権交代後初の通常国会。民主党が昨年の衆院選で掲げた政策が国会での熟議を経て実現すると期待した国民は多かっただろう。

 実際、数々の法案が提出され、子ども手当法や高校授業料無償化法は成立し、実現した。

 しかし、国家戦略局をつくる政治主導確立法案、鳩山由紀夫前首相が「改革の一丁目一番地」と位置づけた地域主権改革関連法案は、いずれも衆院で継続審議に。官邸主導で省庁横断的な幹部人事を行う国家公務員法改正案は参院で廃案となった。

 政府提出法案の成立は六十四件中三十五件にとどまり、成立率54・7%は通常国会としては現行憲法下で最低だ。

 なぜ、こうなったのか。第一の理由は、鳩山氏と小沢一郎前民主党幹事長の「政治とカネ」の問題をめぐり、民主党側が国会での説明に消極的で、野党側の反発で審議が停滞したためだ。

 審議促進よりも身内を擁護する姿勢には、参院選を控えて野党側に追及の機会を与えず、政権のイメージダウンを避ける思惑が働いていたと断ぜざるを得ない。

 これでは「民主党らしい」政策の実現を自ら放棄したに等しい。

 選挙優先姿勢は終盤国会で特に顕著になった。郵政改革法案の取り扱いをめぐる混乱は、その最たるものだ。

 民主党は、今国会中に成立させるため、衆院での質疑を短時間で打ち切り、採決に踏み切った。

 鳩山前内閣の支持率低迷で、日本郵政グループ労働組合などの組織票に頼ろうとしたものの、菅直人首相への交代で支持率が60%を超え、無党派層を取り込めると見るや、一転して成立を見送った。

 参院でも採決を強行すれば、支持率を下げかねないし、野党に追及の場を与える国会延長は避けたいとはいえ、あまりにも選挙優先の議論逃避が過ぎないか。

 国民生活に必要な政策実現は、議論を尽くした上で採決に付すのが基本だ。多少強引と思える国会運営もやむを得ない場合があるかもしれないが、選挙のために政策を実現させないのは本末転倒だ。

 七月十一日投開票の参院選に向けた各党の公約が近く出そろうだろう。国会に臨む姿勢も、判断材料の一つに加えたい。

2010年6月17日 中日新聞 社説

6/17中日春秋

2010年06月17日 | コラム
6/17中日春秋

 米国の作家、故マイケル・クライトン氏がつくり出した物語『ジュラシック・パーク』は映画にもなり世界中で大ヒットした。

 約(つづ)めていえば、遺伝子操作で現代に蘇(よみがえ)らせた恐竜たちが人を襲う、といったお話。暴れ回るのは、どこかから突如、現れた怪獣ではない。人間が科学技術で誕生させながらコントロール不能になった存在。それは人類が抱える根本の恐怖のような気もする。

 今、米国ルイジアナ州沖のメキシコ湾で暴れているのは、恐竜ならぬ原油だ。英石油大手BPの海底油井の流出事故は、発生から既に二カ月近くになるのに、まだ汚染が止まらない。様々(さまざま)な流出防止の策がとられたが、失敗続きだ。

 深い海の底に、深い深い穴を掘り、何とか石油を吸い出せたのは科学技術のゆえ。だが、いざ、止めようと思った時、それを止められないのだ。この制御不能の油井を、BPの技術者が事故直前のメールで、「悪夢の油井」と呼んでいたなどと聞けば、一層、不気味さが増す。

 かつて、インターネットを「ついに人類はスイッチを切れない“装置”をつくってしまった」と表現した人があったのを思い出す。確かに、あれも、もう、誰にも止められない。

 科学技術がわれわれの暮らしに多大な恩恵をもたらすのは疑いない。だが、同時に、いくつもの潜在的な「制御不能の恐怖」も引き受けているのかもしれない。

口蹄疫 「県マニュアルに欠陥」

2010年06月17日 | ニュース一般
<口蹄疫>「県マニュアルに欠陥」…初期症状、水疱なく下痢

 30万頭近くも牛や豚を殺処分せざるを得ない事態になった宮崎県の口蹄疫(こうていえき)禍。10年前に同県で発生した際には速やかに制圧できたのに、なぜ今回は初期の封じ込めに失敗したのか。獣医師の証言から追った。【中尾祐児】

 「今でも悪夢を見ているようだ。まさか『日本中を震撼(しんかん)させる大惨事』になるなんて……」

 3月26日、宮崎県都農(つの)町の牧場で、下痢の症状が出た水牛を診断した開業獣医師の男性(61)=同県高鍋町=は声を震わせた。

 前日夕、モッツァレラチーズを作るために水牛42頭を飼育する牧場主から「いつもと違う。ボーッとしている」と電話が入った。

 往診に出向いた26日午前10時。雌1頭の便がゆるかった。口蹄疫に典型的な口の中やひづめの水疱(すいほう)は見あたらない。「冷たい水につかって、腹をこわしたのかな?」。風邪の治療を施し、経過観察することにした。

 次の30日の往診。平熱(約38度)より1~2度高い水牛が一気に10頭になっていた。徐々に感染が広がる風邪とは違う。敷料のオガクズにまざった化学物質などの中毒を疑い、県宮崎家畜保健衛生所に通報し、立ち入り検査を要請した。

 だが、県も「主に下痢の症状だった」と見逃し、3月31日に採取した水牛の検体を、動物衛生研究所(東京)に送ったのは4月22日(翌日陽性と判明)。別の農家の牛が感染第1例と確認された同20日の2日後だった。

 10年前の00年3月、国内で92年ぶりに発生した口蹄疫も宮崎県が震源地だった。宮崎市内で3戸の牛38頭が殺処分され、47日後には終息。県は「我が国の防疫体制が国際的にも高く評価された」(同県発行「口蹄疫防疫の記録」)と誇った。

 当時、最初に牛の異常を通報した獣医師、舛田利弘さん(66)は「下痢から口蹄疫を疑うのは不可能だ」と、水牛を診た獣医師の判断に同情する。10年前も、最初の1頭はややよだれが多い程度の風邪の症状。約1週間後、牛舎の他の9頭すべてに広がって初めて「変だ」と気が付いた。「初期症状は教科書とは全く違う。水疱はなかった」と振り返る。

 03年に県が策定した「口蹄疫防疫マニュアル」。牛の典型的な病状に「口の中の水疱は発病後6~8時間以内に現れる」「蹄(ひづめ)の病変は口の中と同一時期」などと記載されている。

 舛田さんは「県はマニュアルで抑え込めると自信を持ったが、重大な欠陥があった。同時に複数の典型的な病状が出るという、誤った先入観を与えてしまったのでは」と指摘する。

 「10年前と比べ、伝播(でんぱ)力が強いという特徴があると考えられる」。農林水産省の牛豚等疾病小委員会が見解を出したのは、感染拡大後の5月18日だった。

6月16日 毎日新聞

商工ローン事件 資産隠しの解明急げ

2010年06月17日 | 社説
商工ローン事件 資産隠しの解明急げ

 商工ローン大手・SFCGの元社長らが警視庁に逮捕された。民事再生手続き前に巨額資産を流出させた民事再生法違反などの疑いだ。親族会社を使った巧妙な資産隠しの全容解明を急いでほしい。

 問題となったのは、SFCGが保有する不動産担保ローンの債権計約四百億円分を、元社長大島健伸容疑者の親族が経営する関連会社に無償譲渡したことだ。

 ちょうど昨年二月に、同社が民事再生手続きをする前に当たり、この資産流出でSFCGの債権者に損害を与えた疑いが持たれている。まさに資産隠しと同然だ。

 譲渡の契約日をわざと、さかのぼらせる虚偽の記録をした偽装工作の疑惑もある。警視庁に逮捕された元社長ら四人は否認しているというが、容疑が事実ならば、罪は重い。

 同社の民事再生手続きは廃止され、現在は破産手続きがなされている。今年三月の債権者集会で、破産債権の総額は約二千九百億円と公表された。だが、同社の資産は約六十億円しか残っておらず、弁済のめどすら立たない状態だ。

 原因は二〇〇八年の秋から、巨額資産がSFCGからどんどん親族の会社に流出していったためだ。債権ばかりでなく、元社長の長男の不動産会社に保有株式を譲渡したとされる。大島容疑者の役員報酬も、月額二千万円から九千七百万円に増額していたという。

 流出資産を合計すると、二千六百七十億円にも達するというから驚く。破産管財人が言うように、民事再生法適用を申請した段階で、同社は「財産が何一つない“抜け殻”状態」だったことになる。悪質と映るのは当然だろう。

 当時は金融危機の時期にも重なり、資金繰りに行き詰まっていたようだ。債務超過で経営破綻(はたん)する可能性を見越して、資産隠しに走ったのではないか。事件の経緯や実態の徹底捜査を望む。

 SFCGの旧商号は「商工ファンド」である。銀行の貸し渋りで苦しむ中小・零細企業などを相手に融資し、急成長した。その陰では、過酷で強引な取り立ての実態があり、大きな社会問題ともなった。

 一九九九年には大島容疑者が国会招致されたこともある。

 「あくどいと言われるのは心外」と述べたが、その後、利息制限法を超える金利分の返還訴訟が相次ぎ、経営を揺るがせた。今回は破綻間際の「あくどさ」にメスが入れられたといえよう。

2010年6月17日 中日新聞 社説

6/17編集手帳

2010年06月17日 | コラム
6/17編集手帳

 〈フネさんはいくつでワカメ産んだのか〉。女性が詠んだ現代川柳の秀作集『女の一生』(仲畑貴志編、毎日新聞社)で見つけた一句である。

 テレビアニメ『サザエさん』に登場する磯野家の母フネさんは物腰が落ち着いている。小学3年生であるらしい末娘ワカメちゃんとの年齢差に興味をひかれての作だろう。長い歳月を共にするうち、架空の世界に住む人々にも実在の人物に抱くのと変わらぬ関心がわくものらしい。

 連載開始から28年余、本紙の4コマ漫画『コボちゃん』(植田まさし作)の田畑家も虚実の境に住み始めたようである。第2子の名前を募ったところ、4万通を超す応募があったという。

 それが使命ではあるのだが、新聞には、なかでも連載漫画の載る社会面には、喜怒哀楽の「怒」と「哀」を盛る器のようなところがある。ここ数日の東京本社版を見ても、横浜市内の女子高校で授業中に生徒が同級生を刃物で刺した事件があり、口蹄疫(こうていえき)の感染拡大があり、現役大関が手を染めた野球賭博がある。

 コボちゃんの妹は「実穂(ミホ)」と命名されたという。“喜楽欠乏症”を癒やす、かわいい妙薬だろう。

文科省 相撲協会に賭博実態の公表指導

2010年06月17日 | ニュース一般
文科省、相撲協会に賭博実態の公表指導

 大相撲の力士ら65人が賭博行為への関与を自己申告した問題で、文部科学省は16日、同省を訪れた日本相撲協会の陸奥生活指導部長(元大関霧島)に対し、外部の有識者による賭博問題を調べる調査委員会の発足を求め、相撲協会は同日、調査委を作った。


 また、同省は、野球賭博への関与を認めてすでに出場自粛を表明した大関琴光喜(34)(佐渡ヶ嶽部屋)を除く64人についても、賭博行為の中身を精査した上で、情報を開示すべきだなどと指導した。

 同省によると、協会は15日の理事会後、自己申告した力士を今年7月の名古屋場所で休場させた場合、「個人が特定される」として、休場はさせないとの意向を示していた。

 こうした協会の対応について、同省は「賭博の種類や番付すら明らかにせずに力士を土俵に上げることは、公益法人のあり方として考えられない。社会の理解も得られない」と指摘。その上で、現状のままでは、優勝力士や三賞受賞者ですら賭博への関与を疑われかねないとして、「このままでは名古屋場所は開けない」と、協会に対し、強い姿勢を示した。

 同省はまた、調査委の役割について、まずは64人の賭博行為を具体的に調べることだとし、暴力団が関与することが多い野球賭博への関与が疑われる場合は出場を認めないなど、協会は一定の基準を設けて対応する必要があるとしている。さらに、警視庁の意向を踏まえ、賭博の中身や関与した力士の番付など可能な範囲での情報公開を求めた。

 ◆公益法人=学術やスポーツなど営利を目的としない社団、財団法人の総称。日本相撲協会は1925年に財団法人の認定を受け、本場所や地方巡業などの公益事業の開催で相撲文化を継承してきた。法人の運営には、文部科学省が監督、指導を行う。

2010年6月17日 読売新聞

7・11参院選へ 「出直し菅内閣」を問う

2010年06月17日 | 社説
7・11参院選へ 「出直し菅内閣」を問う

 私たち有権者にとって再び大切な選択の時がやってくる。野党各党が論戦不足を激しく批判する中、国会は16日閉会し、今月24日公示、7月11日投開票となる参院選に向け、選挙戦が事実上始まることになった。

 戦後初の本格的な政権交代から約9カ月。鳩山由紀夫前首相があえなく退陣し、菅直人首相で出直しを図る民主党政権に有権者は期待をつなげるのかどうか。つまり、政権交代したのがよかったかどうかの判断を有権者が下す参院選となる。

 ◇「国会打ち切り」は横暴

 参院選は衆院選と異なり、政権選択に直結する選挙ではない。ただし、今回は単に現政権の中間評価にとどまらない。与党の民主党と国民新党が参院で過半数を維持すれば政権は安定するだろう。逆に過半数に達しなければ国会は衆参がねじれ、法案が容易に通らない状態になる。あるいは、選挙結果によっては連立の組み替えとなるかもしれない。いずれにしても、日本政治の行方を大きく左右するということだ。

 それだけ重要な参院選であるにもかかわらず、国会を強引に閉会した民主党の姿勢は批判されて当然だ。

 菅内閣は人事などで小沢一郎前幹事長の影響力を排除する「脱小沢」を貫いたことなどが評価され、支持率は急回復している。この勢いで一刻も早く選挙に突入したいと考えたのは明らかだ。一時、野党に提案していた党首討論や衆参予算委員会を取りやめ、16日は野党が参院に提出した菅首相に対する問責決議案の採決さえ拒否して国会を閉会した。まったく理解できない対応である。

 前内閣は普天間問題と、鳩山前首相と小沢氏の政治とカネの問題に追われ、この国会は予算成立以外にはほとんど成果はなかった。菅内閣もまだ何もしていないに等しいのである。ところが、発足早々、荒井聡国家戦略担当相の事務所費問題も浮上し、これ以上国会が長引き、さらにほころびが出るのを恐れたと見られても仕方があるまい。

 審議不足が明白な郵政改革法案を参院選後に先送りするのは当然としても、地域主権改革関連法案や労働者派遣法改正案など早急に成立させるべき多くの法案が棚上げとなった。インターネットを利用した選挙運動を解禁する公職選挙法改正も、やっと与野党で合意したというのに時間切れで実現しなかった。

 小沢氏の政治資金問題に関する政治倫理審査会などの開催も、なし崩し的に見送られた。これらの責任は民主党にあると指摘しておく。

 参院選公示を前に注目したいのは民主党のマニフェストだ。

 長妻昭厚生労働相が来年度から中学生以下の子ども1人につき月2万6000円を支給するとした昨年の衆院選マニフェストの実現を、財源不足を理由に事実上断念する考えを示したように、菅内閣は財政再建優先にカジを切っている。17日に発表予定の参院選マニフェストは、こうした政策転換が反映されそうだ。

 「脱バラマキ」も「脱小沢」の一環だろう。しかし、昨年の衆院選では鳩山、小沢両氏だけでなく、党を挙げて「政権交代すれば、いくらでも財源は出てくる」などと財源をあいまいにしてきた点を忘れてはならない。公約を変更するには、なぜ、そうなったのか、きちんと反省し、国民に説明するのが先だ。そうでなければ本当の出直しとはならない。

 ◇公約見直しが焦点

 大きな争点となるであろう税制改革で、自民党は消費税率引き上げを具体的に公約に明記する方針だ。民主党も財政再建や社会保障制度改革のために引き上げが必要と考えるのなら、「今後、与野党で協議する」と逃げずに、まず政権与党としてどう考えるのか、具体的な数字を盛り込むべきだ。

 鳩山前首相退陣のきっかけとなった普天間問題も解決のめどは立っていない。菅首相は移設先を辺野古付近とした日米合意を踏まえ、沖縄の負担軽減に努めると言うが、沖縄県民の理解をどう得るのかも、参院選の大きなテーマとなる。

 普天間も、いくつかの国内政策もなぜ、約束通りに実現できなかったのか。それが前政権の失敗から最も学ぶべき教訓だ。政策実現のための道筋を具体的に書き込み、必要とあれば有権者の負担増も訴える--。そんなマニフェスト選挙の原点に民主党は立ち返ってもらいたい。

 対する自民党は政権に返り咲く足がかりができるかどうかの正念場だ。離党者も相次ぎ、求心力は失われる一方だ。今回敗北すれば民主党以上に深刻な局面を迎えよう。

 公明党や共産党、連立を離脱した社民党、昨年結党したみんなの党、そして初の国政選挙となる新党改革、たちあがれ日本などにとっても重要な選挙だ。2大政党化の流れがそのまま強まるのか。民主、自民両党に不満な人たちの受け皿となって「第三極」が伸びるのか。今後の政治の潮流を決める岐路ともなる。

 国会での論戦が足りなかった分、選挙戦では活発な政策論争を強く望みたい。口蹄疫(こうていえき)の拡大で宮崎県などでは「今のままで選挙ができるのか」との声も出ている。内閣が万全の措置を講じるべきであるのは言うまでもない。

2010年6月17日 毎日新聞 社説