【時事(爺)放論】岳道茶房

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八ツ場中止撤回 “迷走"に終わらせるな

2010年11月09日 | 社説
八ツ場中止撤回 “迷走"に終わらせるな

 馬淵澄夫国土交通相は、八ツ場(やんば)ダム(群馬県)につき建設中止の前提を事実上、撤回した。評価できる側面の一方、ダム事業の文字通り「予断なく再検証」の方針は貫くべきである。

 昨年、政権交代直後に前原誠司前国交相が建設中止を表明、馬淵現国交相も当初、「中止の方向」をいっていたことを思えば、また“迷走”といえなくもない。

 だが今回の発言は、有識者会議のとりまとめをへて、八ツ場を皮切りに九月から始まったダム事業再検証の趣旨を考えれば、当たり前でもある。

 ダムを含むもの、含まないものと複数の治水対策を作り、さまざまな評価軸で検証するからには、初めからダムありきでもダム中止でも、“予断”になる。八ツ場は国と関係六都県、九市区町がダム中止、推進で真っ向から対立、国が中止の方向に固執すれば、膠着(こうちゃく)状態が続く恐れもある。

 馬淵発言が冷静な話し合いの契機になれば、むしろ評価できる。また同相が、再検証終了の目標を来秋と初めて明言したのも、関係住民の不安を早く取り除くため、喜ばしい。

 一方、ダム中止の事実上撤回により、八ツ場はもとより全国のダム推進派が元気づけられることも考えられる。それによって、逆の予断で事業の再検証がおざなりになってはならない。

 すでに、八ツ場ダム建設の重要な根拠になった利根川の治水基準点・八斗島(やったじま)(群馬県伊勢崎市)における洪水時などの最大流量(基本高水)が、あやふやであることが明らかになっている。

 毎秒二万二千立方メートルとされた最大流量は、上流部の森林などの保水力を示す飽和雨量が高まり変化したのに、約三十年間検証されていない。馬淵国交相自身が先月、最大流量の算出方法を見直すよう国交省河川局に指示した。

 最終の評価がどうなるにせよ、これらの重要な基礎的データは、ダム事業再検証の場で明らかにした上で、議論を進めなくてはならない。

 同省河川局がつくった検証の実施要領では、関係自治体からなる検討の場が重視され、各地方整備局に設けられた事業評価監視委員会の意見を聴き、事業継続または中止の対応方針を決める。

 「予断なく再検証」するために国交相自身がこれらの場に、必要な情報の全面開示と、公正な議論の確保について、あらためて指示をすべきである。

2010年11月9日 中日新聞 社説


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