真説・弥勒浄土      

道すなわち真理の奇蹟

第一章 天道の淵源 (四)法灯伝授の機微について

2022-02-06 23:47:39 | 天道の淵源

(四)法灯伝授の機微について

弓長恩師は達摩大師の正脈を継承して十八代目の道統を担い、心眼の開悟を普く衆生に対して行っておられます。

天命の法灯は霊妙不可思議な伝法をもって千四百余年間守り続けられて今日に至ったのであります。

達摩初代祖は南天竺印度香至国の第三皇子として聖誕されましたが、王位に恋でるのを嫌い印度二十七代、般若多羅尊者に師事すること四十年、師の遺嘱(いしょく)を守り中国の縁が熟したのを悟られて、粱の普通八年九月、ふたたび中国に天命を担って神光二祖に伝えられました。

神光二祖は、三教(道教・儒教・仏教)を読破し、四十九年間経典を講自、人天百万の弟子がいました。

最初大師に会っても、経典の文句に依存してとても高慢な態度をとっていました。

法の器が大きく利根の深い大智英邁(だいちえいまい)で、衆に卓越する知能を持っておられましたから、色々の試練と感化によってようやく正道に目覚められました。

わけても大師の子の言葉が開悟の決定的な意思となりました。

「神光よ。真伝は文字を読みあさって得られるものではない。自らの心霊に明師の面授と指点を受ける必要がある。紙上に画いた餅は食べられないのと同じように、紙上に書かれた法は因果から逃れ、輪廻転生の路から解脱することはできない。真の路は口をもって伝え、心に印し刻むもので、もし汝が実相を観、霊覚の境界へ到達したい念があれば一切の諸相と文字を離れ、着相と執念を捨てて、人心の真諦を直指されなければならない。しかる後に本性を見て成仏できるであろう。」と説破されました。

二祖は求道の志、熱烈の余りに弟子を捨て、一途に大師を熊耳山(ゆうじさん)に追い。雪の中に三日三晩坐し、自ら刃をもって左の臂(ひじ)を断ち切って真心をあらわし大師から心法を得られました。

それで大師を初代祖と奉り、神光祖を東土の二代祖と奉っています。

坐禅は単なる外形的なもので、要はその神髄の心法を得ようとするためのものです。

結跏趺坐(けっかふぎ)といって、足を組んでいるのは精気神の循環が脚部に流れるのを遮断して法輪の転環を容易にさせ修煉する方法であり、坐禅が目的ではありません。

大師の面壁九年の禅行はなおも霊光を磨き、一層純熟にして道を後世に挙揚されたいがためであります。

神光二祖は初祖から「慧可(えか)」と道号が付され、道脈を僧璨(そうさん)三祖に伝えられました。

僧璨三祖から道信四祖に伝えられ、道信四祖から弘忍(ぐにん)五祖に伝えられ六代慧能(えのうそ)祖に至るまで絶えることなく、師資相承(ししそうじょう)の伝統を守り続けて参りました。

心法は、地位・学問や社会経験が深いことによって得られるものではありません。

六祖は文字を知りませんが、智慧はもっとも聡明でありました。

弘忍五祖が晩年に道脈を後継者に付嘱されるに当たって、ある日弟子門人を集め「世人にとって生死のことほど重大なことはない。

汝らの終日を見るにただ目前から来世の福しか求めず、生死の苦海から永久の離脱を求めようとしない。

己(おのれ)の本性が迷ってしまえば如何なる福もあり得ない。

正法は解明し難いものである。汝らはいたずらに私の言葉を記し、修持して任が終わったと思ってはならない。

今汝らは各自に智慧を観、意のままに本性般若の実相を偈(げ)に記してみよ。」そして「もし語意が私の心法に符合するところがあれば衣法(えほう)を付そう。」といわれ、弟子たちの修行の深さを試されました。

時に門下高僧、七百余名の中の上座、神秀(しんしゅう)は学問内外に通じ、衆の敬仰の的になっていました。

この人でなければ誰も当たる人はないであろうと大衆の賞める声を密かに聞いた神秀は、夜中に起きて壁に一偈を書き留めました。

すなわち「身は是れ菩提樹、こころは明鏡台の如し。時々に勤めて払拭し、塵埃をして惹(ひ)枯らしむることなかれ。」

五祖は神秀の作であろうと思いましたが、賞讃(しょうさん)はしても法嗣(ほうし)として付法をする気には慣れません。

自己の身体を樹に例えたり二十六時中掃除や打坐をすれば世の汚れを浄められる意味ですが、真如の本性を観るに至らないことを指摘いたしました。

ところが入門八か月にしかならない無学者でいつも田舎者といわれる慧能祖が、これを聞いて即座に口でもってこう答えられました。「菩提、本、樹に非ず、心境も亦台に非ず、本来無一物、何ぞ塵埃を払うことあらん。」

五祖は大いに驚き、慧能の見性を知り、夜中密かに部屋に召して、無上微妙・秘密・円明真実の正法眼蔵と法宝を授けました。

天道は頓修頓悟の法であるので、法器や智慧の大なる人は、一度の心眼点破でも大徹大悟が可能であります。

神秀様は客観的に自分の心身を台とか樹とか形象に結びつけて、漸修漸悟(ぜんしゅうぜんご)の段階を歩んでいました。

慧能祖はそれ以上に深く、無為を主体にして無相無念、無一物境界に自己を融合させておられました。

慧能祖は祖脈を継いで六代祖となられましたが、当時の仏教界の頽廃(たいはい)を嘆き、正法を儒者の白馬祖に伝えられました。

道脈の移り変わりは時と運に応じて不思議な妙用を齎す者であります。

その時、かような偈を白馬祖に遺されました。「釈迦、我より宗風(そうふう)を絶つ、儒家我を得て万法に通ず。日後三期に普度が開かれ、正心誠意、中庸に合す。」と明らかに証明されています。

孟子様から仏教に移った天命は、約九百五十年を経てふたたびと儒聖に伝わったわけであります。

これを「道が火宅に伝わる」といいます。火宅とはすなわち苦悩に充ちる世界の意味です。

つまり、今日までの祖師は出家した僧職であるのに比べて、白馬祖以降は普通の家に住む人の中から道脈の祖師が出現することになりました。

続く


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