二銭銅貨

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芝居道

2008-05-22 | 成瀬映画
芝居道 ☆☆
1944.05.11 東宝、白黒、普通サイズ
監督:成瀬巳喜男、脚本:八住利雄、原作:長谷川幸延
出演:長谷川一夫、山田五十鈴、古川緑波、進藤英太郎、志村喬
   花井蘭子

やわらかい長谷川一夫、
まるっこくて、かわいい。
水兵さんや兵隊さんの役がいじらしい。

古川緑波はゆったりとしている。
ゆっくりとしていて、
それでいて気骨のあるところを見せる。

山田五十鈴はすっきりとしていて気持ちがいい。
きっぱり、はっきり、気風がいい。
大阪の話だけれども、
江戸っ子な感じ。

話は定番だけど、それでも良い。
それだから良い。
芸に打ち込む人々の、
話は何度聞いてもいい。

舞台は日露戦争後の大阪の歌舞伎興行。製作は戦時中の厳しい時期。それを反映してなのか、最初に「撃ちてし止まん」の字幕が出る。なお、スタッフ・配役の字幕は出なかった。

戦時中だから、軍部を刺激するような内容は無い。けれど花火が夜空に、ドーン、ドーンとあがるシーンがちょっと気になる。花火を眺めて古川緑波が志村喬に語るシーン。志村喬に興行のあり方について聞いたことへの返事で、戦争に浮かれて舞い上がっているようなご時世だけれども、あの花火のドーンという音の中にも、また、別の音が聞こえるようにならなければ駄目だという趣旨のセリフがある。取りようによっては反戦的な意味が無いこともない。もしかしたら戦時中の苦心のセリフなのかも知れない。

戦時中にもかかわらず、良くできた美術、衣装、撮影で、当時の映画スタッフの苦心が了解できる。

幾つかの長谷川一夫による歌舞伎の場面や衣装姿があって、東京の歌舞伎の花道の場面は長谷川一夫による忠信で、義経千本桜の伏見稲荷か道行きの引っ込みだろうかと思った。他の場面は分からない。

山田五十鈴の役名は山田みつ。偶然なのか本人の姓+野崎村の「おみつ」になっていて、愛する人のために身を引くところが野崎村と同じ。山田五十鈴は女浄瑠璃の大夫さん役で、太棹を持って竹本を演じる。
08.05.04 川崎市市民ミュージアム