ニルヴァーナへの道

究極の悟りを求めて

マチウ・リカール師の幸福論(3)

2008-06-05 19:15:23 | 仏教



マチウ・リカール師は仏教の文脈の中で使われるリアリティーという言葉の意味として、the true nature of things と定義しておられますが、参考のために、ロバートサーマン教授の解説も聞いてみましょう。去年日本語に訳された「現代人のための「チベット死者の書」」の巻末にある用語集の中で、reailty を定義されています。このrealityという言葉は、仏教書の中に頻繁に出てくるので、このさい、きっちりと理解しておきましょう。

reality. Used to translate the Sanskrit dharmata, satya, and even Dharma. It is an important word in Buddhism since enlightenment purports to be the perfect knowledge and awareness of the actual condition of things, and the possibility of liberation from suffering is based on the truth of that condition and the untruth of the ordinary condition of suffering.

【語句、文法】ここで難しい語句といえば、purportでしょうか。・・・すると主張する、・・・・であると自称する、・・・・とされている、という意味の他動詞です。この単語はジーニアス英和辞典では、大学教養一般に必要な語7200語の中に入っていますから、英語の本を読むためには覚えておかなければ英単語と言えるでしょう。文法的に注意しなければならないのは、the untruth of the ordinary condition of suffering の箇所の「of」の訳し方でしょうか。
the ordinary condition of suffering、この箇所の「of」は同格関係を表すものとしてとらえる必要があると思います。リアリティー(真理)を悟っていない普通の状態は苦しみだといういうことですね。苦しみの(という)一般的な状態、姿、と訳してみました。そしてその前の、the untruth の後ろの「of」はSV関係の「of」として捉える必要があると思います。これは、The ordinary condition of suffering is not true (untrue)という文に直せますね。まあ、ここらへんの「of」の意味を正確に掴むことは、英文を正確に理解し、分かりやすい翻訳にするためには大切なことだと思いますし、大学入試の英語でも狙われるところではないかな、と思います。面倒だからといって「の」とだけに訳していたのでは、何が何だか分からなくなってしまう恐れがあります。注意したいところです。自戒の意味も込めて。

【日本語訳】リアリティー:サンスクリット語のダルマータ、サッティヤ、そしてダルマという言葉の翻訳語として使われている。仏教においてリアリティーという言葉は非常に重要である。なぜなら、悟りとは事物の真の姿を完全に知り、認識することだとされているからだ。そして、苦しみからの解放の可能性は、事物の真の姿は真理であり、苦しみという一般的な姿は真理ではない、ということの上に築かれているからだ。

参考のために、realityが使われている文章をロバートサーマン教授の「現代人のための「チベット死者の書」」から抜き出してみましょう。
日本語訳はこの本の翻訳者の方のを使わさせてもらいます。

Shakyamuni was called a "Buddha," an "Awakened" or "Enlightened" person, because he claimed to have achieved a perfect understanding of the nature and structure of reality.
シャキャムニは「仏」、「ブッダ」、「成就者」、「覚醒者」と呼ばれるが、これは彼が真理の本質と構造について、完全に理解しきったと宣言したからだ。
(「現代人のための「チベット死者の書」」(朝日新聞社)より)

ここでは翻訳者は、realityを真理と訳されていますね。
つまり、シャカムニは、the actual condition of things の本質と構造を完全に理解したということですね。


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