1990年代後半にクアラルンプール及び近郊で複数の電車路線が建設されて運行を始めました。これはもちろんマレーシアで初めてのことです。
イントラアジアは1990年以来、マレーシア全土で、とりわけクアラルンプール圏のバス網、電車網に文字通り乗りまくってきました。クアラルンプール圏だけでもこれまでに乗ったバス路線は軽く100を超え、電車網はもちろん全路線です。バス、電車の乗車回数は少なく見積もっても5千回を超えます。
そこでクアラルンプール圏に住宅を求めるために大いに役立つ予備知識として、クアラルンプール圏の電車網に関する情報をまず書きます。
【クアラルンプール圏の電車路線の開通とそれが生んだ変化のあらまし】
電車路線開通の略歴
1.KTMのKomuter電車:1995年10月開通
2.高架電車 LRT Ampang 路線(2005年までの名称はSTAR Line):1996年12月開通
3. 高架電車 LRT Kelana Jaya路線(2005年までの名称はPUTRA Line):1998年8月開通
4. モノレール KL Monorail: 2003年8月開通
Komuter 電車はマラヤ鉄道(KTM)の既存線路を複線電化したものであり、クアラルンプールの中心部をかすめる形で郊外とを結んでいます。これはマラヤ鉄道の線路の敷かれ方ゆえ、仕方のない面もあります。ただ非効率さの目立つマラヤ鉄道の運行ということで、クアラルンプール及び近郊市民の行動様式をそれほど大きく変えませんでした。
しかしLRTと略称される2系統の高架電車路線の開通によって、クアラルンプール及び近郊住民の公共交通への見方が徐々に変わり、2000年前後頃から公共交通での行動様式に明らかな変化が生まれました、つまり高架電車路線に依存する人たちがぐっと増えました。
さらにクアラルンプールの中心部だけを走行するモノレールの運行開始によって、高架電車との乗継ができる、中心部へより行きやすくなった、という面が生まれました。
高架電車は準公共企業体が建設して運行していましたが、2系統が全く別々に運営されるという非効率さがありました。
そこで2002年に財務省の持ち株会社である Prasarana(Syarikat Prasarana Negara Bhd)が両高架電車を買収して翼下に収めました。それ以後現在に至るまで両高架電車は Rapid KLの下で運営されています。Rapid KL は Syarikat Prasarana Negara Berhad の直系子会社として、クアラルンプール圏のRapid KLバス、高架電車(下写真)、モノレールを一手に運営しています。
KLモノレールは建設と運行が純民間会社によって担われていました。しかし運行会社が負債に苦しんでいたこと、及びクアラルンプール圏の公共交通網一元化を進める政府の意向の下で、KLモノレールは2007年になって経済省の持ち株会社である Prasarana (Syarikat Prasarana Negara Bhd) に買収されて、その翼下に入りました。
つまり現在では2系統の高架電車と同様に1つの運営体 Rapid KL傘下にあります。
これによって Komuter電車を除く高架電車とモノレールは1つの公共企業体翼下に入ったわけです。2011年から2012年にかけて、両高架電車の切符販売システムが一元化され、乗換えに際する改札はなくなりました。モノレールの切符販売も近々中に一元化運賃システムに加わる予定です。将来はRapid KLバスも一元化運賃システムに組み込まれる計画です。
なお運賃プリペード式ICカードはすでにRapid KL翼下のバス網と電車網で共通に利用されている。
上記で述べたように、2000年代が進むにつれてクアラルンプール及び近郊市民は毎日の通勤と通学及び買い物、遊び、訪問などの足に電車網をより利用するようになってきています。
電車交通に生まれた時から慣れている、というよりごく当たり前の交通手段として受け入れている日本人と違って、クアラルンプール圏住民の間には当初電車路線にかなり懐疑的な声がありました。
しかしそういった声も既に少数派になり、今ではごく普通に電車を利用している市民が多くなったことがわかります (といって懐疑や電車路線を歓迎しない声がなくなったわけではない。あくまでも比較少数ということです)。
市民の間に電車網への依存が高まるにつれて、新規に建設される住宅の動向にも影響を与えるようになりました。 つまり広告文句に駅至近などといった文句を見かけるようになったのです。ある意味では当然のことですが、電車路線の歴史の浅いマレーシアでは、こういう傾向が出るまでに初の開通以来7,8年はかかったと言えます。 (下写真はLRT車内の様子)
【まず電車路線図と地図を手元に用意する】
さて日本人であれば、誰でも電車の便利さは体験上よくご存知ですよね。そこでクアラルンプール及び近郊に住もうという方は、是非電車路線図を手元において、地図といっしょに眺めながら住居選びをしてみませんか。
マレーシアで無料で配布されている地図の中には、載せている電車路線の引き方や駅名が間違っていたりというものがありますので、地図は複数種を参照しましょう。
市販の一枚もの地図といえども最新の情報は抜けています。残念ながらマレーシアの市販地図は頻繁に改定されないので、どうしてもこういう点が目立ちます。
電車路線図は運営会社 Rapid KL サイトのものが最良です。LRT、モノレール、Komuter、KLIA空港とを結ぶ空港電車、の全路線が載っており、路線毎に駅名を調べることもできます。
Rapid KL サイトの電車路線図ページ をクリックすると、別ページで開きます。
この路線図ページでは PDF版がダウンロードできるようになっているので、印刷して手元で見るのがお勧めです。
なお Googleマップは決して最新の情報ではありません。細部を調べるには大いに役立ちますが、時々建物名や位置などに間違いや過去情報がありますので、その点を承知して利用しましょう。
Googleマップではある特定の建物などに自動的にカナフリが表示されていますが、マレーシアで実際に発音される発音とは違う、つまり間違いの方が多いので、カナフリは一切無視すること。
以上で説明しましたように、1つの地図だけを見ていては不十分です。 路線図と見比べながら、紙の地図で場所を確かめ、細部は Googleマップで、というような使い方もできます。
【高架電車LRTの路線が延長される】
さて高架電車 LRTの路線が延長されます。すでに延長工事に取りかかかりましたので、数年後には利用者がより増えます。延長プロジェクトの大きな特徴は、Ampang 路線とKelana Jaya 路線の両方が延長され、 新設される Putra Heights 駅で両路線がつながることです。
イントラアジアの『マレーシアの新聞の記事』ブログから引用しておきます。
【高架電車 Kelana Jaya 路線の延長工事が始まる】- 2012年2月28日付け
(クアラルンプール圏の高架電車(LRT)は2路線あり、その1つ) Kelana Jaya 路線は終点駅 Kelana Jaya 以遠方向に17kmの路線延長がすでに決定しています。延長路線には13の駅が新設され、Subang Jaya市とUSJ地区を通って終点駅は Putra Heights になります。この路線延長プロジェクト下で予定している延長路線オープンは2014年12月です。
追記:2015年8月時点でも延長路線は未だオープンしていない。予定より遅れることは特にめずらしいいことではない。
2月末から延長工事が開始されます、今回の対象建設区間 3kmは Subang Jaya のPersiaran Kewajipan に沿った地区で今年12月まで続きます。LRTの保有会社であるPrasarana によれば、建設に伴う道路閉鎖はないとのことです。
(Intraasia注:クアラルンプールの郊外都市であるペタリンジャヤを走る、Kelana Jaya路線は発展目覚しいスバンジャヤへ延びることになります。いくつもの中流住宅・商業地域や公共的な施設を通る延長路線となりますね。その延長効果はかなり高いでしょう。)
【高架鉄道LRT は路線延長プロジェクトが進行中】- 2012年3月6日付け
クアラルンプール及び近郊都市に乗り入れている高架鉄道 LRTでは路線延長プロジェクトが進行しています。
LRT の路線が35km延長されるこのプロジェクトでは、Ampang 路線では10の駅を増設、Kelana Jaya 路線では12の駅を増設します。これによって現在1日の利用者数30万人に 50万人が加わることになる予定です。
総建設費RM 70億のこのプロジェクトの竣工は2014年末の計画です。完成時には、Ampang 路線とKelana Jaya 路線が新設される Putra Heights 駅でつながることになります。
以上
ここまでは既存の高架電車とモノレール、及びKomuter電車によってクアラルンプール圏公共交通(電車)網が整備され、利用者がかなり増えてきた、とまとめることができます。
後編に続く