その名の通り、戦闘技術の歴史に焦点を当てたシリーズの第2巻。
中世編なので、西ローマ帝国が滅亡した五世紀前半から、ビザンツ帝国が滅亡した15世紀半ばまでが対象。
ヨーロッパ全土という広大な範囲について、しかも1000年という長期間を対象として、
多くの戦例を分析して、戦闘技術の変遷を具体的に記述しようという意欲作。
戦闘技術というと、戦略や戦術とは異なる、個人の戦闘の手法というイメージがありますが、これに限られません。
武器や城塞の技術的な話、戦いにおける陣形や機動などの戦術的な話、編制・編成の話など、さまざまです。
ただし、そういう軍事的な方向に偏っているので、歴史的・文化的な説明は最小限度に抑えられています。
ヨーロッパの歴史について最低限のことは広く浅く知っていた方がいいですし、
分からない事柄(事件や人物等)については随時ぐぐることができる環境で読んだ方が良いと思います。
百年戦争やノルマンコンクエストなど、それの歴史的な経緯を書くだけで一冊の本になるというような事件の説明が、
1頁~3頁くらいであっさりと書かれていますから。
(但し、日本語で検索しても出てこないものも多い。)
で、この本、ハードカバー350頁、価格4500円、シリーズ全5巻という規模でありながら、
日本語監修者さんが序文で書かれているように、「入門書」ですw
取り扱う範囲があまりにも広いので、あたりまえといえばあたりまえですが。
戦史叢書みたいな細かさはありません。
シリーズ全部を集めるとなると相当大きい負担になるので、
私としては第2巻から第4巻まで買おうかなという計画。
無事に第4巻まで発売してくれると嬉しいのですが……。
なお、目次などは出版社が公開しています→http://www.sogensha.co.jp/book/2009/09/post-146.html
***
第一章歩兵の役割と第二章騎兵・戦車などが、この本の核だと思います。
分かっているようでいまいち分かっていない歩兵と騎兵の関係を理解することが出来る。
第三章指揮と統制は、もう少し体系立てて教科書的に書いても良かった。
モンゴル軍に関する記述がここで数頁ほどでてくるが、
僅かな分量であるにもかかわらず、お手上げ感というか絶望感が伝わってくるw
第四章攻城戦は、コンパクトにまとめられているという印象。
城や砦については、他に各種写真集や図版集があるので、
ビジュアル面をそれで補うと良いかも知れない。
第五章海戦は、ややおまけ感が漂う。
もっとも、ガレー船から帆船(コグ船)への移行は第四巻・第五巻に繋がる重要な部分。
ただ、各巻の海戦部分については、それをまとめて一冊にした方が良かったのかも知れない。
***
細かい部分について。
・外国語の固有名詞をどう表記するかという問題。
日本語としての表記が固まっていないものについては、複数表記した上で、
原語の綴りを書いてくれると嬉しい。
・野戦図の見にくさ
これは既に他の方も指摘されていることですが、一見グラフィカルで取っつきやすくはあるの、
戦闘の流れを見ようとするとなかなか見にくい。
無理に一枚絵のカラーCGにする必要はなかったのではないか?
見開きの一枚絵にこだわったせいで、挿入箇所が本文をぶった切ってしまっているあたりも残念。
あと、ページの閉じてある部分が見にくい。
単色or3色刷りくらいで、もう少し詳細に描いてあると個人的には嬉しい。
***09年12月30日追記
なにげなく10年01月号の軍事研究をめくっていたら、書評で本書が紹介されていた。
どうやら、次巻の近世編は10年の夏頃発売予定のようだ。
非常に楽しみである。
中世編なので、西ローマ帝国が滅亡した五世紀前半から、ビザンツ帝国が滅亡した15世紀半ばまでが対象。
ヨーロッパ全土という広大な範囲について、しかも1000年という長期間を対象として、
多くの戦例を分析して、戦闘技術の変遷を具体的に記述しようという意欲作。
戦闘技術というと、戦略や戦術とは異なる、個人の戦闘の手法というイメージがありますが、これに限られません。
武器や城塞の技術的な話、戦いにおける陣形や機動などの戦術的な話、編制・編成の話など、さまざまです。
ただし、そういう軍事的な方向に偏っているので、歴史的・文化的な説明は最小限度に抑えられています。
ヨーロッパの歴史について最低限のことは広く浅く知っていた方がいいですし、
分からない事柄(事件や人物等)については随時ぐぐることができる環境で読んだ方が良いと思います。
百年戦争やノルマンコンクエストなど、それの歴史的な経緯を書くだけで一冊の本になるというような事件の説明が、
1頁~3頁くらいであっさりと書かれていますから。
(但し、日本語で検索しても出てこないものも多い。)
で、この本、ハードカバー350頁、価格4500円、シリーズ全5巻という規模でありながら、
日本語監修者さんが序文で書かれているように、「入門書」ですw
取り扱う範囲があまりにも広いので、あたりまえといえばあたりまえですが。
戦史叢書みたいな細かさはありません。
シリーズ全部を集めるとなると相当大きい負担になるので、
私としては第2巻から第4巻まで買おうかなという計画。
無事に第4巻まで発売してくれると嬉しいのですが……。
なお、目次などは出版社が公開しています→http://www.sogensha.co.jp/book/2009/09/post-146.html
***
第一章歩兵の役割と第二章騎兵・戦車などが、この本の核だと思います。
分かっているようでいまいち分かっていない歩兵と騎兵の関係を理解することが出来る。
第三章指揮と統制は、もう少し体系立てて教科書的に書いても良かった。
モンゴル軍に関する記述がここで数頁ほどでてくるが、
僅かな分量であるにもかかわらず、お手上げ感というか絶望感が伝わってくるw
第四章攻城戦は、コンパクトにまとめられているという印象。
城や砦については、他に各種写真集や図版集があるので、
ビジュアル面をそれで補うと良いかも知れない。
第五章海戦は、ややおまけ感が漂う。
もっとも、ガレー船から帆船(コグ船)への移行は第四巻・第五巻に繋がる重要な部分。
ただ、各巻の海戦部分については、それをまとめて一冊にした方が良かったのかも知れない。
***
細かい部分について。
・外国語の固有名詞をどう表記するかという問題。
日本語としての表記が固まっていないものについては、複数表記した上で、
原語の綴りを書いてくれると嬉しい。
・野戦図の見にくさ
これは既に他の方も指摘されていることですが、一見グラフィカルで取っつきやすくはあるの、
戦闘の流れを見ようとするとなかなか見にくい。
無理に一枚絵のカラーCGにする必要はなかったのではないか?
見開きの一枚絵にこだわったせいで、挿入箇所が本文をぶった切ってしまっているあたりも残念。
あと、ページの閉じてある部分が見にくい。
単色or3色刷りくらいで、もう少し詳細に描いてあると個人的には嬉しい。
***09年12月30日追記
なにげなく10年01月号の軍事研究をめくっていたら、書評で本書が紹介されていた。
どうやら、次巻の近世編は10年の夏頃発売予定のようだ。
非常に楽しみである。