鮎と戯れて・・・魚族に感謝

東北地方を中心とした短い夏のあまり多くない鮎釣りの記録。家族に感謝して。近くの広瀬川の環境等にも拘るも、オフは時事問題も

ここまでわかったアユの本(昨日の続き)

2006-05-22 22:41:46 | お知らせ
{第3章 アユの放流再考}

「1 放流種苗の種類と特性を知る」;
 放流種苗は、琵琶湖産・海産・河川産・人工産の4つに分類できる。(河川産とは、川に遡上したものを捕まえて放流用に使うもの)人工産は現在の放流種苗の主流となっているが、細かく見ると、遺伝的には海産系、湖産系、両者の混血系の3種類が存在し、主流は「海産系人工」であリ、今後もそうであろう。

「2 放流された湖産アユの運命」;
 放流された湖産アユは産卵・孵化しても、その子は遡上期までに海で死んでしまうという。湖産アユは、海産アユよりも産卵期が早いので、海に流下しても海水温が高すぎて死んでしまうかららしい。
 そのために、万一湖産アユが海産アユと交配するようなことがあってもその子が遡上期まで生き残る可能性はないとか。
 湖産アユと海産アユは別種ほどの差は無いが、形態・行動・遺伝的側面から見て明らかに違う品種であるという。

「3 ベストなアユの密度とは?」;
 生息基準密度(=河川にアユを放流する場合に、どのくらいの密度になるように放流すれば適正に漁場(河川)を利用できるかという数字)は、1950年代に京都大学の研究グループが0.7尾/㎡と発表し、京都方式と呼ばれている。
 しかし、これまでの観察例からして、1㎡に2~4尾くらいアユが生息していても、別に問題は起きないし、その分長期間楽しむことができる。
 天然遡上が主体の川では、サイズのバリエーションが大きく、全てが漁獲の対象となるわけではなく、二軍、三軍と控えていて、大きいものが釣られた後に補給されるような自然のシステムができている。
 放流河川では、放流時のサイズが均一になりやすいため、ある程度釣られると後が続かなくなる。
 生息基準密度は現実的な放流可能な数量とはいえないし、第一ほとんどの漁協は漁場(川)の面積を把握していない。

「4 種苗放流の功罪」;
 近年における全国のアユの放流量は1200トン、1尾10gとすると1億2000万尾にもなる。
 種苗放流の成功こそが天然のアユ資源の減少に拍車をかけている。簡単便利な放流という手段で漁獲量を確保できたために、増殖対策=放流という短絡的な構図ができてしまった。
 保護区の設定や産卵場の造成等という天然アユを保護するために工夫がなされなかった。そのツケがいっぺんに回ってきた。
 採捕率(=回収率)は、40~50%のものが、いまや10%を切っている。

「5 放流だけではアユは増えない」;
 那珂川ではここ10年、アユの放流量はほぼ一定なのに漁獲量には大きな年変動が見られることから、放流量と漁獲量には密接な関連が無く、放流が必ずしも有効な増殖策ではない。
 物部川のように、禁漁期や禁漁区を設けて、親や卵を保護する施策が天然資源を維持するためには必要なこと。
 しかし、水産庁の通達では、増殖の中心は種苗放流で、これまでの水産行政は間違っていた。

「6 放流の意味を考える」;
 身近から生き物がいなくなったから放流するというのは、あまりにも安直で、放流はまるで壊れた機械の部品交換のようである。これは、私たちの自然との付き合い方が薄っぺらなものになったということ。
 高知県では、産卵用の「親魚放流」も盛んに行われるようになったが、アユの産卵場の環境がかなり悪くなっており、天然のアユでさえ産卵できていないことが多い。放流すれば卵を産むということは人間の勝手な思い込み。さらに放流がうまくいかないと、人工アユが原因とされてしまう。全てうまくいかないのは、人間の方にあるのに。
 こういう問題のすり替えは、その後の改善につながらず、無駄な投資が続くことになる!!!

 子どもたちには、アユの放流をしてもらうよりは、最後の命を振り絞って産卵する親アユの姿や群れをなして懸命に遡上する稚アユの姿を見せてあげたい!!!!!
コメント (2)
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