風邪を引いているのに、外で葬儀の受付手伝い。悪化しました、、、
下記は昨日書いたやつの書き直し。
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3階の3年4組の教室の机を全部後ろに寄せるとそこは簡易視力検査場になり、僕らは二列に並び保健係が指すCの記号が向いている方向を読み上げていた。
「右、左下、上、うーん、わかりません」
「はい、新井君、右がA、左がBね」
僕の番になり、黒いおたまじゃくしみたいなプラスチックの器具を渡されたので軽く振ってみたけど、毎年見るそれは相変わらず無愛想に蛍光灯の光を吸収するだけだ。左目を隠し右目の視力の測定、同様に左目の測定。
「はい、竹田君、右がB、左もB」
機械的に作業を行う保健委員から視力が書き込まれたカードを手渡され、黒板側の入り口から廊下に出た。
僕の学校は体育館が3階にあって、今出た廊下を東に向かって歩き、突き当りを右折すると5メートルくらい先に青く塗られた鉄の扉がある。今はそれが開けっ放しになっているようで、体育館の中から反復横飛び特有の上履きと床がこすれる音が鳴り響いていたけれど、今の僕にとってはもうどうでもいいことで、せいぜい隣を歩いている岸田と数字を比較する程度の楽しみしかない。一年前の体力測定ではそんなことを感じる事はなかった。反復横飛びの記録はフィールディングの良さやボールへの反応速度を示す基準であったし、垂直飛びでいい記録を出せばジャンプシュートの売りになった。背筋力の数字が上がるとより遠くへボールが飛び、自分の筋力の成長を実感しながら試合に参加することができた。
「次どーするよ?」
「ん、さっき視力検査終わったから、よし!保健課目終わりー。体育館へ!」
4,5人のグループになって体育館への移動途中、窓から見下ろした校庭では満開の桜が景色を彩っていた。新学期になって間もない4月の第一週は、授業もなく、軽いオリエンテーションばかりで学校が始まった感じがしない。春休みの延長の、緩やかな気持ちのまま新しく始まる学校生活に徐々に身体を慣らしていく。クラスにはまだ名前も顔も覚えていない奴が何人もいるし、受験という言葉も重く圧し掛かってくる。