前回は価格交渉を例にとって、交渉を始めて最初の条件提示をするまでに考えるべきことを説明しました。
今回は引き続き、最初の条件提示が終わって駆け引きが始まってから気をつけるべきポイントをまとめてみたいと思います。
******************************
今回も前回と同じ価格交渉のケースを題材に話を進めます。
念のため状況をもう一度確認してみましょう。
<例4-2>
Aさんはエジプト旅行で絨毯をみやげに買おうと店に入ります。
気に入った絨毯の値段を聞いてみると19万円だと言います。
日本の店でも同じような絨毯が20万円で売っているので、Aさんとしては15万円くらいで買いたいと思っています。
Aさんは売り手が最低13万円くらいまでなら値下げしてもいいと思っているはずだと検討をつけ、それより少し安く12万円なら買おうとまずもちかけてみます。
売り手はとんでもないと顔をしかめ、そんな額では売れないと言ってきます。
Aさんはここからどう話を進めたらよいでしょうか?
前回も説明したとおり、ここから先はお互いが少しずつ妥協した価格案を出し合い、最後に一致した価格で合意するのが一般的な流れです。例えば
Aさん「じゃあ15万円ならどう?」
店主 「17万円が精一杯だ」
Aさん「しょうがない、じゃあ間を取って16万円だ」
店主 「ううん、仕方ない。日本人トモダチ。16万円でOKよ」
といった感じです。
この例の会話でもAさんはとりあえず値下げ交渉に成功してはいます。
しかし前回説明したとおり、このケースで店主のホンネのWalk-away(下限価格)が10万円だったとすると、あと6万円も安く買える可能性があったわけです。
では、もっと安くさせるにはどうしたらいいんでしょうか。
上手なネゴシエーターは駆け引きで印象管理に注意を払います。
印象管理とは何でしょうか?
それは勝負の鉄則として、お互いのおかれた条件を自分側に有利に思わせることです。
交渉では、お互い自分の情報はわかっていても相手のホンネは推定して考えるしかありません。
さらに「自分のWalk-awayは自分で分かっている」と思っていても、それがどのくらい有利なものか、は話し合いの中身次第で大きく印象を変えてしまいます。
そこで、交渉の中で
-相手にはオイシイBATNAがあるので、相当妥協しないと合意してくれないのでは?
-自分のBATNAは実はあまりおいしくないので、自分から妥協した方がいいのでは?
という印象を相手に与えるのが交渉の基本になるわけです。
相手がこうしたプレッシャーに押しつぶされれば、「少し妥協してでも手を打とう」という気になってくれるからです。
もう少し具体的には、ネゴシエーターは以下の4つの戦術を使ってそうした印象管理を行うことになります。
(1)自分の情報は隠し、相手の情報は徹底的に集める
まず相手のWalk-awayやTarget-pointが分かってしまえば圧倒的に有利になります。
相手がいくらはったりをかましてきても、ホンネが分かっていればこちらはいくらでも強く出られるからです。
それに「自分のWalk-awayが相手に見透かされている」と思えば、仕方がないからある程度は妥協しようと思うのが人間です。
例のケースで言えば、Aさんが相手の下限価格を正しく知っていれば、その値段を出してひたすら粘ることで、店主が折れて大きく妥協してくる可能性があるでしょう。
もちろんそのためには周りの店で相場を確認したり、専門家に助言をもらうなど事前の情報収集が必要になります。
一方で自分の側の情報はできる限り相手に与えるべきではありません。
相手にこちらがどの程度妥協しやすいか分かってしまうと、それにつけこんで足元を見てくるからです。
例のケースで言えば、例えば店主はAさんがどの位エジプトにいたかとか、いつ帰るのかを聞いてくるかも知れません。
ここでAさんが正直に「着いてまだ三日だ」とか「明日には帰る」などと言ってしまうとどうでしょうか。
「まだ絨毯の相場など分かっていないだろう」とか「今日中におみやげが必要なので高くても買うだろう」といった印象をあたえかねません。
理想的には、自分のことを話題にするよりとにかく相手に質問をするべきです。
質問すれば相手はさらに情報を出さざるを得ないからです。
交渉では「沈黙は金、質問は銀、雄弁は銅」という側面があるのです。
(第18回続く)
今回は引き続き、最初の条件提示が終わって駆け引きが始まってから気をつけるべきポイントをまとめてみたいと思います。
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今回も前回と同じ価格交渉のケースを題材に話を進めます。
念のため状況をもう一度確認してみましょう。
<例4-2>
Aさんはエジプト旅行で絨毯をみやげに買おうと店に入ります。
気に入った絨毯の値段を聞いてみると19万円だと言います。
日本の店でも同じような絨毯が20万円で売っているので、Aさんとしては15万円くらいで買いたいと思っています。
Aさんは売り手が最低13万円くらいまでなら値下げしてもいいと思っているはずだと検討をつけ、それより少し安く12万円なら買おうとまずもちかけてみます。
売り手はとんでもないと顔をしかめ、そんな額では売れないと言ってきます。
Aさんはここからどう話を進めたらよいでしょうか?
前回も説明したとおり、ここから先はお互いが少しずつ妥協した価格案を出し合い、最後に一致した価格で合意するのが一般的な流れです。例えば
Aさん「じゃあ15万円ならどう?」
店主 「17万円が精一杯だ」
Aさん「しょうがない、じゃあ間を取って16万円だ」
店主 「ううん、仕方ない。日本人トモダチ。16万円でOKよ」
といった感じです。
この例の会話でもAさんはとりあえず値下げ交渉に成功してはいます。
しかし前回説明したとおり、このケースで店主のホンネのWalk-away(下限価格)が10万円だったとすると、あと6万円も安く買える可能性があったわけです。
では、もっと安くさせるにはどうしたらいいんでしょうか。
上手なネゴシエーターは駆け引きで印象管理に注意を払います。
印象管理とは何でしょうか?
それは勝負の鉄則として、お互いのおかれた条件を自分側に有利に思わせることです。
交渉では、お互い自分の情報はわかっていても相手のホンネは推定して考えるしかありません。
さらに「自分のWalk-awayは自分で分かっている」と思っていても、それがどのくらい有利なものか、は話し合いの中身次第で大きく印象を変えてしまいます。
そこで、交渉の中で
-相手にはオイシイBATNAがあるので、相当妥協しないと合意してくれないのでは?
-自分のBATNAは実はあまりおいしくないので、自分から妥協した方がいいのでは?
という印象を相手に与えるのが交渉の基本になるわけです。
相手がこうしたプレッシャーに押しつぶされれば、「少し妥協してでも手を打とう」という気になってくれるからです。
もう少し具体的には、ネゴシエーターは以下の4つの戦術を使ってそうした印象管理を行うことになります。
(1)自分の情報は隠し、相手の情報は徹底的に集める
まず相手のWalk-awayやTarget-pointが分かってしまえば圧倒的に有利になります。
相手がいくらはったりをかましてきても、ホンネが分かっていればこちらはいくらでも強く出られるからです。
それに「自分のWalk-awayが相手に見透かされている」と思えば、仕方がないからある程度は妥協しようと思うのが人間です。
例のケースで言えば、Aさんが相手の下限価格を正しく知っていれば、その値段を出してひたすら粘ることで、店主が折れて大きく妥協してくる可能性があるでしょう。
もちろんそのためには周りの店で相場を確認したり、専門家に助言をもらうなど事前の情報収集が必要になります。
一方で自分の側の情報はできる限り相手に与えるべきではありません。
相手にこちらがどの程度妥協しやすいか分かってしまうと、それにつけこんで足元を見てくるからです。
例のケースで言えば、例えば店主はAさんがどの位エジプトにいたかとか、いつ帰るのかを聞いてくるかも知れません。
ここでAさんが正直に「着いてまだ三日だ」とか「明日には帰る」などと言ってしまうとどうでしょうか。
「まだ絨毯の相場など分かっていないだろう」とか「今日中におみやげが必要なので高くても買うだろう」といった印象をあたえかねません。
理想的には、自分のことを話題にするよりとにかく相手に質問をするべきです。
質問すれば相手はさらに情報を出さざるを得ないからです。
交渉では「沈黙は金、質問は銀、雄弁は銅」という側面があるのです。
(第18回続く)
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