MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

すばらしい新世界

2017-02-20 | 雑記
唐突ですが、掲題の本を読みました。
(オルダス・ハクスリー著、光文社古典新訳文庫)
1932年に書かれた、有名なディストピア小説です。

舞台は26世紀、2049年の「九年戦争」後の世界。
最終戦争を経て、世界から暴力をなくすため安定至上主義の世界が形成された。
世界は10人の「世界統制官」に支配され、大量生産と消費のシステムが完成している。
人はみな受精卵から生まれ、人口が管理されている。
生まれる時に階層が決められ、階層ごとに体格や知能が決められている。
結婚や育児はなく、性は自由化され誰もが親密で、気分が楽しく安定する薬が常用される。
老化は克服され、寿命が来るまでは若い体のまま。
20世紀以前の価値観は禁じられ、歴史や過去の文学も禁じられている。

そこで人はストレスなく、性や麻薬と若さを楽しみに「幸せ」に生きている。
しかし文明に服さない人々が前近代的な生活をする「居住地」が残っており…
という話です。

85年前なのに今見ても色あせない世界を想像した作者に脱帽します。
まして、現在は技術的に出来そうなところも多い。

止まらない技術革新と持続可能性の危機の中で、これからどういう社会があるのか?

考えさせられます。
読んでいて怖いのは、「そういう社会ももしかして(テロと紛争だらけの時代より)良いかも?」と一瞬思ってしまう点です。
個人の視点で見れば、この小説の世界では戦争の不安もなく日々欲求が大満足しているわけですし。

技術革新が社会を変え、社会変化が倫理を変える。
倫理が変わると、「おぞましい」ことが「当たり前」に変わる。

そういう技術と社会のあり方を考えるのに、SFは意外と手掛かりになると思います。
特に最近は、人工知能が社会を変えると話題なので、その辺りの議論にも良い気がします。
(過去の全SF小説をデータに、人工知能の描かれ方を統計的に分析する、とか面白そう)


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