MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

<16-2>交渉のタイプ(続)

2005-06-04 | 第二部:交渉ってどう考えたらいいの?
もう一つ交渉のタイプを考えて見ましょう。


2.一対一/複数パーティ

次に、交渉のやり方と難易度を大きく変えてしまう要素として、参加者の人数が挙げられます。
一対一の交渉であれば自分と相手の利害だけ考えていればよいのですが、複数の当事者の交渉となるととても難しいファクターが出てきます。
それは「アライアンス」(連携)です。

たとえばA、B、Cという三つの石油会社があるとしましょう。
彼らはある油田の開発で提携関係にあり、共同で試掘をしようとしているとします。
もし彼らが試掘にかかる費用の分担割合を決める交渉をしたら、その交渉で何が一番重要な要素になるでしょうか。
いろいろなファクターが関係してきますが、おそらく彼らのうち誰と誰がグルになって残りの一社を押し切るか、という組み方もひとつの鍵になるでしょう。
三社の交渉なら、そのうち二社が密かに手を握っただけでマジョリティになってしまいます。
圧倒的に強い発言権(この場合魅力的なBATNAや、試掘に必要な資源を独占していること、など)があれば別ですが、チームになった二社と一人だけで対抗するのはとても難しいことです。
交渉をまとめようとすれば、何らかの妥協をしなければならないプレッシャーが強くかかるでしょう。

あらかじめアライアンス関係が交渉前から決まっていることもありますが、多くの場合、交渉のプロセスを通じて誰が敵か味方かが決まってきます。
序盤でお互いの利害をそれとなく探り、味方にできそうな相手を見つけて、交渉の合間に密かに手を組もうと話し合う。
マルチパーティの交渉ではそうした互いの関係に関する駆け引きが重要になってくるのです。

もちろんそれに加えて、人数が多いと議題について全員の同意を取り付けるのが難しく、また発言が散漫になりがちになります。
このため、人数が増えれば増えるほど話し合いのプロセスをきちんとまとめるのが難しく、しかし重要になってきます。
多人数交渉は上級者向けの交渉と言えるでしょう。

次回は交渉のパターンに関する話の続きとして、典型的な交渉である価格交渉について、定石とも言える考え方を見てみたいと思います。

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