MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

<19-2>典型的な交渉(3) -妥協案の出し方-

2005-08-01 | 第二部:交渉ってどう考えたらいいの?
妥協の仕方にはもう一つポイントがあります。

(2)妥協の幅を縮めることで「目一杯の妥協を引き出した」と思わせる

同じ項目でも、妥協の幅をコントロールすることで効果を大きくできます。
具体的には、最初の妥協幅から、回を重ねるごとに妥協を少しずつ小幅にしていくのです。
例えば価格交渉で買い手が最初のオファーを13万円にして断られたとすると(前回のAさんですね)、

13万円 → 14万円 →14万5千円 →14万7千円 →14万7千5百円

といった価格提示を順次すべきです。
というのも、こうすることで少ない妥協額でも妥協の回数を増やすことができるからです。

人間の心理としては、妥協の額もさることながら「こんなに何度も妥協案を出させた」という事実も大きなインパクトがあります。
「これだけ何度も妥協させたのだから、このあたりで手を打ってもいいかも」という印象が与えられるのです。

また相手が合理的にこちらのオファー額を観察していれば、幅を小さくしていくことで「このあたりで予算ギリギリなのだろう」という印象を与えることができます。
上の例なら、相手は15万円あたりがこちらの出せるギリギリだという印象を受けるでしょう。

これがもし妥協幅が均一だったらどうでしょうか。
たとえ最初の妥協幅を8割の8千円にしても、

13万円 → 13万8千円 →14万6千円 →15万4千円 →16万2千円

と同じ妥協の回数で非常に割高になります。

それにこの流れを見ると、相手はどういう印象をもつでしょうか。
どんどん直線的に値段が上がっていくので、放っておけばもっと値段が吊り上がる余地がありそうです。
値段が上げ止まる感じがしないからです。

余談ながら、こうした幅のテクニックの一つに「最後っ屁」とでも言うべきものがあります。
要は「これで最後の妥協だから合意しろ」と言ってそれまでより大きな妥協をするのです。
例えば

13万円 → 14万円 →14万5千円 →14万7千円 →14万7千5百円

という先ほどの流れから、

「ええい、15万円。これがこっちの出せる最高額だ。これ以上だったら買えない」

と提示したらどうでしょうか。
それまでの値段の流れから見て相手にもそれなりに説得力を持ってくる可能性があるでしょう。


今回まで第二部では交渉を分析的に考えるためのキーワードや基本的な交渉の流れ・整理の仕方を見てきました。
次回以降、第三部ではいよいよ実践編として、実際の交渉現場でどうしても出てくる悩みや疑問を取り扱っていきたいと思います。

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