7つのポイントの続きです。
4.基本的に協調路線だが、必要に応じて脅しも辞さない
国際政治の場などを考えるとイメージしやすいものですが、優れた交渉人は交渉と脅迫との微妙なバランスを利用することに長けているものです。
例えば六カ国協議のような交渉の場を考えてみましょう。
そうした場では「話し合いに応じる」ことが大前提ですが、だからといって「実力行使も可能性ゼロでない」という姿勢がないと、相手に妥協を迫るプレッシャーが不足することになるわけです。
そのために優れたネゴシエーターが得意とする点は、(暗黙のものも含め)脅しを現実的なものに見せるスキルです。
ただし実際に脅迫の内容を実行してしまえば、たいてい大きなコストが発生しますし相手も絶望的な反抗手段に出る可能性があります。
従って、相手を追い詰めすぎないようバランス感覚が非常に重要とされるのです。
5.相手との摩擦を予め予期し、冷静に対処する
特に日本人の場合、話し合いの中で相手との摩擦が大きくなることを極力避けようとするクセがあるようです。
確かに、交渉相手との関係が良好なほうが、何かと話し合いも円滑に進むでしょう。
しかし、交渉のもともとの目的はこちらのInterestを実現することなのであり、多くの場合相手側のInterestはこちらと相反するものなので、むしろ摩擦や衝突は必然と考えるべきです。
優れたネゴシエーターはどこで意見がぶつかるか、予め予期して準備することを重視します。
ある意味では、交渉に準備して臨むのはそうした摩擦に効果的に対処するためなのです。
冷静な対応をする力があれば、感情がエスカレートしたり一方的に相手につけこまれたりすることもありません。
むしろ交渉の枠組みを再定義したり、利害の対立しないイシューで合意を形成するなど、摩擦と合意のバランスをコントロールしながら交渉を進展させることができるのです。
6.合意へ向かう「流れ」を作る
交渉が合意に至るまでには、長い道のりがあります。
互いに自分の主張を出し合い、妥協する必要が感じられてもできる限り粘る。
一通りのせめぎ合いが終わらないと、「では合意しよう」という納得が生まれないものなのです。
優れた交渉人はそうした交渉者の心理的な動きを深く理解しています。
そこで、例えば序盤から無理に交渉を終わらせるような発想をせず、常に相手が心理的にどのステップにあるか観察を続けます。
共通のビジョンの提案や進捗の確認など、最終的な合意に至る前の途中の目標点を用意して、まずそれらを橋頭堡として確保します。
しかる後に、合意に至る勢いを醸成するわけです。
7.仲介の立場から交渉をリードする
最後に、交渉する際に重要なことは、交渉の参加者だけでコトが決まると思わないことです。
一見何のことか分かりにくいですが、要は交渉ではこちらに相手にも、背後に利害関係者(例えば交渉国の国民、交渉者の雇い手、上司など)がいるものです。
こうした背後の「黒幕」が納得して動ける合意案でない限り、たとえ交渉人個人がよしと思っても彼らサイドがその案をよしとすることはできないのです。
ある意味で、交渉人は常に仲介役に過ぎないのです。
そこで優れた交渉人は、自らのこうした「仲介役」としての役割を理解し、それに基づいて最大の価値を生み出そうとします。
例えば、相手の交渉者も同様に仲介役としての側面を持っていると考えれば、仲介者同士で協力して双方が納得する案を考えようとするアプローチも有効かもしれません。
時には、合意できそうな案について、相手の交渉者が背後の黒幕に「この案が良い」と説得する手助けを一緒に考えることもありえるでしょう。
互いの立場を必要に応じて中立化できることは、交渉を上手に進める上で必須の技術なのです。
以上、今回は歴史的なケーススタディから優れた交渉者の基本となる動き方を7つの原則として紹介しました。
第三部は交渉の実践に重きをおこうと考えており、今回の原則は総論としての心構えの再確認といえます。
次回は、実践上まず第一に必要となる、交渉の準備をどのようにしたら良いのか、を考えてみたいと思います。
4.基本的に協調路線だが、必要に応じて脅しも辞さない
国際政治の場などを考えるとイメージしやすいものですが、優れた交渉人は交渉と脅迫との微妙なバランスを利用することに長けているものです。
例えば六カ国協議のような交渉の場を考えてみましょう。
そうした場では「話し合いに応じる」ことが大前提ですが、だからといって「実力行使も可能性ゼロでない」という姿勢がないと、相手に妥協を迫るプレッシャーが不足することになるわけです。
そのために優れたネゴシエーターが得意とする点は、(暗黙のものも含め)脅しを現実的なものに見せるスキルです。
ただし実際に脅迫の内容を実行してしまえば、たいてい大きなコストが発生しますし相手も絶望的な反抗手段に出る可能性があります。
従って、相手を追い詰めすぎないようバランス感覚が非常に重要とされるのです。
5.相手との摩擦を予め予期し、冷静に対処する
特に日本人の場合、話し合いの中で相手との摩擦が大きくなることを極力避けようとするクセがあるようです。
確かに、交渉相手との関係が良好なほうが、何かと話し合いも円滑に進むでしょう。
しかし、交渉のもともとの目的はこちらのInterestを実現することなのであり、多くの場合相手側のInterestはこちらと相反するものなので、むしろ摩擦や衝突は必然と考えるべきです。
優れたネゴシエーターはどこで意見がぶつかるか、予め予期して準備することを重視します。
ある意味では、交渉に準備して臨むのはそうした摩擦に効果的に対処するためなのです。
冷静な対応をする力があれば、感情がエスカレートしたり一方的に相手につけこまれたりすることもありません。
むしろ交渉の枠組みを再定義したり、利害の対立しないイシューで合意を形成するなど、摩擦と合意のバランスをコントロールしながら交渉を進展させることができるのです。
6.合意へ向かう「流れ」を作る
交渉が合意に至るまでには、長い道のりがあります。
互いに自分の主張を出し合い、妥協する必要が感じられてもできる限り粘る。
一通りのせめぎ合いが終わらないと、「では合意しよう」という納得が生まれないものなのです。
優れた交渉人はそうした交渉者の心理的な動きを深く理解しています。
そこで、例えば序盤から無理に交渉を終わらせるような発想をせず、常に相手が心理的にどのステップにあるか観察を続けます。
共通のビジョンの提案や進捗の確認など、最終的な合意に至る前の途中の目標点を用意して、まずそれらを橋頭堡として確保します。
しかる後に、合意に至る勢いを醸成するわけです。
7.仲介の立場から交渉をリードする
最後に、交渉する際に重要なことは、交渉の参加者だけでコトが決まると思わないことです。
一見何のことか分かりにくいですが、要は交渉ではこちらに相手にも、背後に利害関係者(例えば交渉国の国民、交渉者の雇い手、上司など)がいるものです。
こうした背後の「黒幕」が納得して動ける合意案でない限り、たとえ交渉人個人がよしと思っても彼らサイドがその案をよしとすることはできないのです。
ある意味で、交渉人は常に仲介役に過ぎないのです。
そこで優れた交渉人は、自らのこうした「仲介役」としての役割を理解し、それに基づいて最大の価値を生み出そうとします。
例えば、相手の交渉者も同様に仲介役としての側面を持っていると考えれば、仲介者同士で協力して双方が納得する案を考えようとするアプローチも有効かもしれません。
時には、合意できそうな案について、相手の交渉者が背後の黒幕に「この案が良い」と説得する手助けを一緒に考えることもありえるでしょう。
互いの立場を必要に応じて中立化できることは、交渉を上手に進める上で必須の技術なのです。
以上、今回は歴史的なケーススタディから優れた交渉者の基本となる動き方を7つの原則として紹介しました。
第三部は交渉の実践に重きをおこうと考えており、今回の原則は総論としての心構えの再確認といえます。
次回は、実践上まず第一に必要となる、交渉の準備をどのようにしたら良いのか、を考えてみたいと思います。