MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

ブルーオーシャン戦略

2005-08-28 | 雑記
『ブルーオーシャン戦略』って何でしょうか?
実は今年上半期からアメリカはじめ世界各地でベストセラーになったビジネス本です。
日本でも青い表紙で日本語版がこの夏から書店に並んでいると思います。

今アメリカ等のビジネス界ではこの本がけっこうなブームを呼んでいるらしく、『イノベーションのジレンマ』等の90年代のベストセラー記録を塗り替える勢いでブレイクしているらしいです。

この本の著者は筆者のビジネススクールの教授で、キャンペーンを兼ねて来日しているため、先日お会いしてきました。

本の内容はここではあえて細かく説明しませんが、
(同書のウェブサイトは http://www.blueoceanstrategy.com/)
一言で言うと教授のバイタリティに非常に刺激を受けました。

どういうことかというと、
1)とにかく説得力がある(口がうまい)
2)研究者だが、自分の研究の見せ方が極めてうまい
3)研究者だが、現実社会へのインパクトを極めて重視している
ということです。

1)はそのままですが、2)はどういうことでしょう。
要は、自分自身の研究のポジショニングとプロモーションが非常に巧みにできているということです。
経営戦略分野の先行研究で言えば、"定番"としてポーターありミンツバーグあり、今から何か出しても「ポーターのフレームワークにいくつか補足を加えたもの」といった二番煎じになってしまいがちです。
その点、彼等の研究自体が見事に著書で提唱するブルーオーシャン(手付かずでまだ競争のない領域)になっていると思います。
また本の装丁とタイトルを見れば分かりますが、全体が誰でも覚えられて印象に残る仕立てになっており、これはこれからの戦略論の一つのスタンダードになるのかもしれない、と思わせるものがあります。

3)はどういうことかというと、現実社会にパトロンを見つけてそこで実際に試すことに主眼を置いている点です。
要は本(論文)を書くことは出発点で、主眼はその後の実践に相当力を入れているわけです。
著名になる教授はみんなそうだと思うんですが、こうしたトライアルをすることや、その実績を貪欲なまでにきっちり宣伝するところが成功の秘訣なのかもしれません。
(席上、シンガポール政府やサムスン電子もブルーオーシャンをあたかも必須のものとして熱心に取り入れている、と成果を詳しく説明してくれました)

彼のような実践研究者を見ていると、名前は学者であれど実態は起業家に近いように思います。
ネタを準備し、アイデアを広め、パトロンを見つけ、アイデアをどんどん広い世界で試していく、というような。
アントレプレナー的研究者、とでもいうんでしょうね。

ひとつ上のプレゼン。

2005-08-25 | 雑記
掲題の本を読みました。
広告業界の著名クリエイターが提案でコンペに勝つ秘策を伝授、といった内容で、色んなヒトがちょっとずつ「プレゼンとは」「プレゼンに勝つには」といったテーマで書いている本です。

とても面白いな、と思ったのが、どのヒトも共通して相手の反応をきちんと考えて表現すべきと主張している点。
ひとつひとつの文字、フレーズ、絵、サンプル品、あるいは場そのもの、と全てを活用して相手を説得する流れを考えているのです。
これは話し合いの中で相手の納得を勝ち取るための技術として、けっこう交渉にも通じる部分があるのではないかと思います。

相手の反応をあらかじめ予測して、印象を管理し、大きな合意の方向に導いていく。
営業など他にも同様に心理戦の要素が強いタスクでは、同じような技が共通で使えるのかもしれませんね。
伊東明さんなどがたくさん出している「絶対勝てる心理術」系の本も同じような効用があるように思います。

「心理術」系のハウツー本って筆者が留学する前はけっこうブームだったように思いますが、今はもう下火なんでしょうかね?

フランス「食」事情-おまけ-

2005-08-23 | フランス暮らし
-ぶっちゃけフランス料理ってうまいの?

と、聞かれたことはありませんが、正直なところどうなんでしょう。

「フランスなんだから料理うまいんでしょ」

といった、ものすごくポジティブなイメージを持っている日本人が大半だと思います。
しかしあえて採点してみるならば、必ずしも言うほどうまくはない!と思います。
乱暴ですが、カテゴリーによって共通した優劣があるように思います。
例えば普通のレストランのコースになぞらえて評価してみると、大体こんな感じです。
(日本のファミレスレベルの満足度=50点、と考えて)

ワイン     :100点
前菜      :100点
スープ     :50点
メインディッシュ:20点
デザート    :100点
コーヒー    :90点

要するに、フランスのレストランに行って食事すると、

まずワインのうまさに感動し、
前菜のチーズのおいしさに驚き、
スープで「あれ?」と思い、
いざメインディッシュとなると(悪い意味で)衝撃を受け、
でもデザートとコーヒーで回復する

といった流れにたいていなるのです。
どんな安いレストランに行っても前菜とデザートは美味しいが、結構高いレストランに行ってもメインディッシュはイマイチ。
特にステーキ類は肉が硬く靴底みたいなのが多いので安いレストランではお薦めできません。

中華料理みたいに、デザートや前菜はさほど美味しいかどうか疑問でもメインは間違いなく味・ボリュームとも良好、というのと、ちょうど対照的ですね。

あと日本のロイヤルホストのメニューでオニオングラタンスープってありますね。
マリリンモンローが来日したとき気に入って毎日飲んだという人気メニュー。
あれはフランスが本場なので、筆者はひそかに「最高のオニオングラタンスープ」を求めて色んな店でオニオングラタンスープを食べまくってみました。

でも結局、ロイヤルホストのオニオングラタンに勝るものはなかった!
フランスではあのスープはかなり庶民的なもので、飲みすぎた深夜などに酔い覚ましにありあわせのもので作って飲む、というラーメン的な存在なのですが…
安いレストランなどでは厨房に作りおきが少なくなってくるとワインを足して量を稼ぐので、ワインの味しかしないものなどもあったりしました。

ただワイン・チーズ・フランスパンの美味しさ安さだけは、間違いなく世界一。
(それにデザートもやはりヨーロッパ全般に高水準)
こんな風に、ある分野に限ってみれば言うことないが、何でも揃っているわけでは絶対なく明らかにこれはダメという要素もある、というのは、食事に限らずフランス全般の印象でもありました。

フランス「食」事情(5)

2005-08-21 | フランス暮らし
自分で買い物すると結構安く済む、というのがフランスです。
前回書いたように、野菜や肉類も結構お手ごろな値段なのです。

でも買った食材を料理するとなると、さてどうしたものか考えてしまいます。
調味料も基本的にフランスのものしか使えないので、勢いどうしてもフレンチ(もどき)を作らざるを得ない感じです。

そうは言ってもコックじゃないのでレシピも良く分からず、あまり時間もかけたくありません。
そうなると何か簡単にできるものを考えて…

そうです。
パスタです。

これなら簡単だし、オリーブオイルやパスタソースを買うにも種類がかなり豊富です。
チーズも美味しくて種類が豊富です。
何よりパスタそのものが安い(日本で輸入してるやつと比べたら、当たり前ですが)
生ハムやベーコンも味わいが深くいわゆるヨーロッパ本場の味。

で、結局フランスでも一番頻繁に作っていたのがパスタだったのでした。
レストランと合わせて考えても、実用性・味を兼ね備えたイタリアン侮るべからず、と考えさせられました。

フランス「食」事情(4)

2005-08-18 | フランス暮らし
フランスで自炊するのはどうなんでしょうか?
ここまで外食事情を中心に振り返ってきたので、自炊事情も考えてみたいと思います。

これまで外食でお金がかかる話ばかりしてきました。
ところがこれが、自炊すると一気に安くあがったりします。

まず買い物に行く先は、以前も紹介したカルフールなどのスーパー。
カルフールの場合肉は牛・豚・鶏・羊、魚もイカからサーモンまで相当多様な品揃えです。
野菜も100グラムいくらの量り売りで、自分で好きなだけビニール袋に入れてセロテープで閉じます。
日本でみるような野菜は大体そろっていて、他にマッシュルームなどは何種類か色の違うのをそろえていたりしました。

安くて驚いたものその一がバゲット。
山積みになっていて、かなり長いのが一本80円くらいで売っています。
ただ日本のスーパーとかコンビニでは多い調理パン(カレーパンとかジャムパンとか)はほとんどみかけませんでした。

次に安くて驚いたのがジュース類。
特に紙パックの1リットルオレンジジュースなどは安いものは60円くらいで売っていました。
缶コーラなども基本的に6本セットで売っており、一本あたりにするとやはり100円くらいと、ずいぶん割安でした。
このコーラの例などで特に顕著ですが、フランスでは同じコーラでも「冷やしていない-家庭用-まとめ買い」なら安く(100円)、「冷やしてある-行楽用-単品」の自販機では異常に高い(220円)のです。
要は、元々そんなに高くないのに、ヒトが何がしか手をかけたらその分どんどん値段が上がっていく感じです。

日本のジュースのようにどこでも価格はほぼ一律、その代わり全体としてやや高い水準にとどまっているのとどっちがいいのか、考えさせられました。

(この話続く)

フランス「食」事情(3)

2005-08-13 | フランス暮らし
フランスでは、フランス料理以外のレストランはどうなんでしょうか?
フレンチの定食、テイクアウトの軽食を紹介してきたので、今回はこれについて筆者の経験の範囲で、ざっと振り返ってみたいと思います。

まずパリと田舎町では全然事情が違います。
(当然ですが)

パリならば、和食・イタリアン・スペイン・北アフリカ・インド・ベトナム・韓国料理など納得できるレベルのレストランが一応そろっています。
筆者は試しませんでしたが、オペラ座の近くは和食レストラン・日本食品店が多いのでそこに行けばそれほど日本と変わらない味も楽しめるらしいです。
そのあたりの店はきちんと日本人がやっているので衛生面でも安心なようです。
(良い言い方ではありませんが、それが問題になっているのは後述)

パリのイタリアンやアフリカ料理はボリュームもたっぷりで、味も申し分ありませんでした。
特にクスクスをはじめとするアフリカ料理は安価で、旧植民地の本場の人が作っていたりするので結構お薦めです。

一方、田舎はどうでしょうか。

当然レストランの絶対数が少ないので、選択肢が限られてきます。
フランスは中・近世から構造があまり変わっていない所が多く、森と畑の中に教会を中心とした集落が点在し、それらが網目状の街道でつながっている仕組みになっています。
一つ一つの集落が行政単位の「村」になっていて、そこは小さすぎてレストランも数軒しかない程度です。
(というか店自体が全部で10軒くらいしかなかったりする)

筆者もそんな村の一つに住んでいましたが、そうした村のレストランは当然ほぼ100%フレンチです。
一部アメリカンスタイルのバーも見られましたが、地元の人だけが客で、昼から何か飲んでいる所に入っていくのは結構勇気が必要です。
メニューもピザとか簡単なもののみ。

では他に何もないかというと、地方でもある程度中核になる町になると、それなりに選べるようになります。
筆者の学校のある町もそうでしたが、観光客もある程度来る場所だったりするので、そうした人向けにも色々そろえるわけです。

学校の町にあったのが、フレンチのほかイタリアン、メキシカン(アメリカ人向け)、インド、中華、日本食のレストランでした。

この中で中華料理屋は三軒あり、一番頻繁に利用していました。
というのも値段が安く、店員が全員華僑なので中国系の友人たちと行くと色々サービスしてくれるからです。
味はフランス人に合うよう辛すぎずにおいを抑えまろやかにした感じで、本場とはちょっと違いますが、洋食攻めの毎日には懐かしい味でした。

メキシカン・インド料理も時々行きましたが、これはまずまず。日本なら東京でちゃんとしたところで食べるのと同じような感じです。

問題なのは日本料理。
2~3軒ありましたが筆者は一度も食べませんでした。

というのも、まずメニューが不自然。
驚くべきことに、選べるのが焼き鳥と寿司しかなく、セットメニューも焼き鳥と寿司の組み合わせなのです。
日本ではありえない組み合わせですね。

また店の看板、装飾、メニューに日本語が使われていますが、それが大抵間違っています。

なぜそうなるかと言うと、要するに経営しているのも店員も華僑だからです。
(少なくとも、筆者の町の日本食レストランはそうでした)
日本で修行したわけでもなく日本語が分かるわけでもなく、単に「日本食」と看板を出すと地元の人や欧米の観光客が珍しがって来るからやっているわけです。
メニューが簡単なのも単に真似するだけなら技術が不要なものを選んだから、というわけですね。

問題なのはそうした修行していない人たちが寿司など作ってしまうため、食中毒事件が多発していることです。
そういうことがあると欧米人などは「ふぐを食べるとあたって死ぬこともある」みたいなニュースと組み合わせて想像を膨らませて、「日本食みたいな奇妙なものはやっぱり危険だ」的イメージを持ってしまうように思います。
(現に「日本食は危ないから絶対食べない」というヨーロッパ出身のクラスメート(特に女性)は何人かいました)

(この話続く)

フランス「食」事情(2)

2005-08-11 | フランス暮らし
フランスでまともに外食してると高くてお金がもたない。
そこで、何とか別の手はないかと考えてみたものでした。

すぐ思いつくのは、ちゃんとした定食じゃなくてテイクアウトの軽食を買って食べることです。
「折角フランスにいるんだからちゃんとしたフレンチがいいなあ」と思ったものですが、背に腹は代えられないのであれこれ試してみました。

まずピザまたはイタリアン。

フランスは観光国なのでどこに行ってもたいてい海外からの観光客が来ています。
(パリでの印象から言うと今多いのはスペイン、イタリア、アメリカ、あと大量の中国人)
彼らも当然「折角なのでフレンチ」と考えますが、時にはお国料理が食べたくなるのが人情というもの。
そのためどの街に行ってもたいていイタリアンレストランがあります。
値段も安めだし、「みんな大好きイタリアン」なわけです。

ただ普通にコースで食べるとフランス料理とそんなに値段が変わらないので、ピザのテイクアウトを試してみました。
レストランでもピザは出ますが、ピザ専用店(チェーンではなく、小さめのピザだけ出す食堂)の方が安いものです。
しかしそういう店はトルコ系移民が経営していたりして(別に差別するわけでも何でもありませんが)、イタリアンピザというより中東系のナンみたいな味でした。
このピザだと単品7ユーロ(約1000円)くらいですんだので、時々利用してました。
ボリュームはあるけど味はまあこんなもんかな、という感じです。

それからフランスパンのサンドイッチ。

これは定番でたいてい週末のランチはこれを買ってました。
なぜかというと、何しろフランスパン(バゲット)が絶妙にうまいからです。
日本にあるフランスパンより塩気というか味わいがあり、パンだけ食べても結構いけるものでした。

町のパン屋やサンドイッチスタンドに行けば、ハム・チーズ・レタス・オリーブ・サーモン・チキンなどがたっぷり入った長さ30センチ位のバゲットサンドが4~5ユーロ(500~600円程度)で買えます。
これは日本と比べても明らかにうまいし安い。
一本でちょうど腹いっぱいになるくらいで持ち運びも便利だったのでよく利用しました。

ちょっと違う路線で意外と重宝したのがマクドナルド。

「何もフランス来てまでマクド行かなくても…」
と筆者も思ったものですが、実用性を考えると救いの船のようなところがありました。

というのも、特にディナーの場合、レストランに一人で行くのはタブーな側面があります。
向こうではレストランには必ず複数で連れ立っていくのが常識というところがあり、
「なんでこいつ一人できてるんだ?気持ち悪い」
みたいな目で見られることがよくありました。
ましてこっちは東洋人。
田舎の町では否応無く目立ち、さらに一人でレストランに行くとますます目だって厳しい視線が痛かったりするわけです。

また時間的な理由もあります。
日本では良い方に誤解されていますが、フランスのサービスは日本では信じられないほど不便だったりします。
(フランス人に言わせれば日本人こそ質の低い生活をおくっている国民なわけですが。この価値観の差はまたの機会に詳述します)
レストランに入っても、メニューを持ってきてもらう、注文をとってもらうのにそれぞれ20分くらい待たされるのはざらです。
それから料理が出るのに時間がかかり、しかも料理はコースになっているので食後のコーヒーが出る頃にはレストランに入ってから2時間くらいたっていたりします。
ヒマな観光客ならそれでもいいんですが、授業や宿題をこなすのにできるだけ効率的に時間を使いたい身からすると、この時間的ロスは結構ばかにならないものでした。

これが、マクドナルドなら見事解消されるわけです。
一人で行っても誰もとがめだてはしません。
勿論日本のマクドナルドに比べたら、レジで10分くらい平気で待たされるなど、とても同じ効率水準とは言えません。
それでもその場で食べても食事が30分ですませられる唯一の貴重な場所なのです。

そんなわけで忙しい平日の夜などは、
「体に悪いよなあ」
と思いつつも時々マクドナルドを利用していました。

(この話続く)

フランス「食」事情(1)

2005-08-08 | フランス暮らし
フランスと言えば美食。
そんなイメージが誰しも強いと思います。

実際にフランスに住んでみるとどんな食生活が待っているのか?
今回から記憶と家計簿をたどってフランスの「食」事情を振り返ってみたいと思います。

まず、フランスで普通のレストランに行くとどんなものが食べられるんでしょうか?

「レストランと言っても色々あるだろう」と言われればそれまでなのですが、筆者が田舎街で食べていた典型的な経済的レストラン(当然フレンチ)はだいたい共通の仕組みになってました。

まずメニュー。

基本的には日本の定食屋のように定食メニューが決まっています。
典型的なのは、
ランチメニューA(肉)、ランチメニューB(魚)、ランチメニューC(その日のスペシャル)
の三つくらい用意してある感じです。

メニューは必ず前菜(アペタイザー)orスープから始まり、(場合により間にサラダ)、メイン+フランスパン、デザートorコーヒーの流れで来ます。
それに加えて飲み物を注文しないといけません。
みんな結構昼からワインとか飲んだりしてます。
ミネラルウォーターが高い一方、無料の水でも一応OKですが、そうするとぬるい水道水がそのまま出てくる感じです。

ランチなどだとこのメニュー(定食)しか選択肢がなかったりしますが、夜は単品メニューを組み合わせて自分の好みのセットにできたりします。
(割高になりますが)

さて、気になるのは値段。

これが、日本人の感覚からしてもかなり高くつきます。
ランチでも安くてメニューが8~15ユーロ、それに飲み物が2~4ユーロにチップをつけると、大体15ユーロ(約2000円)くらい飛んでしまいます。
そう、レストランに入るとまともに食べたら最低2000円くらいいってしまうわけです。
これがディナーになるとさらに3~4割高くなります(普通の店でも3000円超えたりする)。

すごいところは、フランス料理といったらこういうレストラン以外に選択肢がないことです。
もちろんカフェで軽食をとればもう少し安くつきますが(コースにならない)、日本のように300円の立ち食いうどんから2000円のうな丼まで幅広い価格帯がどこでも食える状況ではありません。

さらにもっとちゃんとしたレストランに行ったら、当然これ以上の値段になってきます。
(日本のいわゆる「ちゃんとしたフランス料理レストラン」のイメージ)
確かに、ある程度の味/評判のレストランについては日本より安いともいえます。
日本ならひとり一万円くらい取られるだろうな、という料理とサービスで6000円くらいだったりするからです。

とはいえ住んでみてしばらくして分かってきたのは、この値段のハードルでした。
要はまともに外食してたらお金がもたないわけです。

(この話続く)

<19-2>典型的な交渉(3) -妥協案の出し方-

2005-08-01 | 第二部:交渉ってどう考えたらいいの?
妥協の仕方にはもう一つポイントがあります。

(2)妥協の幅を縮めることで「目一杯の妥協を引き出した」と思わせる

同じ項目でも、妥協の幅をコントロールすることで効果を大きくできます。
具体的には、最初の妥協幅から、回を重ねるごとに妥協を少しずつ小幅にしていくのです。
例えば価格交渉で買い手が最初のオファーを13万円にして断られたとすると(前回のAさんですね)、

13万円 → 14万円 →14万5千円 →14万7千円 →14万7千5百円

といった価格提示を順次すべきです。
というのも、こうすることで少ない妥協額でも妥協の回数を増やすことができるからです。

人間の心理としては、妥協の額もさることながら「こんなに何度も妥協案を出させた」という事実も大きなインパクトがあります。
「これだけ何度も妥協させたのだから、このあたりで手を打ってもいいかも」という印象が与えられるのです。

また相手が合理的にこちらのオファー額を観察していれば、幅を小さくしていくことで「このあたりで予算ギリギリなのだろう」という印象を与えることができます。
上の例なら、相手は15万円あたりがこちらの出せるギリギリだという印象を受けるでしょう。

これがもし妥協幅が均一だったらどうでしょうか。
たとえ最初の妥協幅を8割の8千円にしても、

13万円 → 13万8千円 →14万6千円 →15万4千円 →16万2千円

と同じ妥協の回数で非常に割高になります。

それにこの流れを見ると、相手はどういう印象をもつでしょうか。
どんどん直線的に値段が上がっていくので、放っておけばもっと値段が吊り上がる余地がありそうです。
値段が上げ止まる感じがしないからです。

余談ながら、こうした幅のテクニックの一つに「最後っ屁」とでも言うべきものがあります。
要は「これで最後の妥協だから合意しろ」と言ってそれまでより大きな妥協をするのです。
例えば

13万円 → 14万円 →14万5千円 →14万7千円 →14万7千5百円

という先ほどの流れから、

「ええい、15万円。これがこっちの出せる最高額だ。これ以上だったら買えない」

と提示したらどうでしょうか。
それまでの値段の流れから見て相手にもそれなりに説得力を持ってくる可能性があるでしょう。


今回まで第二部では交渉を分析的に考えるためのキーワードや基本的な交渉の流れ・整理の仕方を見てきました。
次回以降、第三部ではいよいよ実践編として、実際の交渉現場でどうしても出てくる悩みや疑問を取り扱っていきたいと思います。