MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

シンガポールへ

2007-04-28 | フランス暮らし
シンガポールに来ています。
シンガポール的には雨季で涼しい季節なのですが、やはり気温は30度を超え、日本とは別世界です。

当地は留学時代に最初を過ごした懐かしい場所で、個人的には世界中でも好きな街ベスト5に入ります。
どこがよいかというと、調和が取れていて安心できるところ、都市型のライフスタイルが高い自由度で楽しめるところでしょうか。
ずっと住んでいる人にとってはそうでもないと思いますが、短期滞在の外国人には自由で過ごしやすい環境だと思います。

二年ぶりに来たらレストランの競争が厳しいため、しばらく来ないうちに新しいレストランやショッピングモールが出来たり、栄枯盛衰が激しいようです。
車もここ数年で増え、交通渋滞が激しくなった、などの声もあるようです。

とはいえ、シンガポールやアメリカは(例えばタイやインドと比べて)カルチャーがそれほど強烈でないというか、日本人からすると「無理なく受け入れられる」選択肢が多い国だと思います。
カルチャーが強烈な国だと、それに対処するだけで手一杯になるし、「環境がこれではやむをえない」という場面も多いものですが、こうした選択肢が多い国に来ると、

-自分は何がしたいんだろう
-当地の人たちと比べて、自分の日本での生活は楽しいだろうか

とふと振り返る場面が多くなる気がします。
食事でも職業でも週末の余暇でも、色んな選択肢を組み合わせて自分のライフスタイルを構成していくわけですが、日本でいつも当たり前に組み合わせている自分のスタイルを、少しだけ違う側面から見直すような感じです。
日本の素晴らしいところもたくさんあり、それをあらためて見直して大切に思うと同時に、例えば週末日本でごろ寝で過ごしている自分を思い出したりすると、「これではいけない」と痛切に感じたりします。
また当地での友人たちのビジネス面の活躍を聞いても、「毎日不満ばかり感じてないで自分も頑張ろう」という気になります。

そんな風に、頭を少しだけリフレッシュしてくれる、だけど追い詰められてくる感じはせず、あくまで自分が自然にそう思ってしまうところが、シンガポールの好きなところかもしれません。
(アメリカも少し似たようなリフレッシュ感がありますが、純粋な日本人から見ると文化の断絶が大きいので、学びもよりエグみと強制感を伴う気がします)

雑感ですが。

デザインの生態学

2007-04-23 | 雑記
掲題の本を読みました。
(後藤武、佐々木正人、深澤直人著、東京書籍)
書店の店頭で見つけて、表紙も面白いし右脳的な発送・デザイン的な発想にはいつも興味があったので買ってみたのです。
が、読み終わっても正直言って意味が良く分かりませんでした。

本としてデザインがおしゃれで、中の絵や写真がスタイリッシュだな、というくらいは分かるのですが。
デザイナーや研究者が読めばよく分かるのかも知れませんが、筆者のような門外漢にはさっぱり意味がつかめない部分がほとんどでした。

(自分が悪いのでしょうが)
なぜ良く分からないのか、と疑問に思い、文の構造を中心に考えてみると、どうも

-論の前提が語られないままどんどん進んでいく

という特徴があるように思います。
例えば、

-Aである。ということはつまりBなのである。

という感じで感覚的に話が進んでいく(ように見える)のですが、

-AだったらなぜBなんだろう?

という論理的な因果関係が門外漢には分からないので、論旨についていけなくなっていく気がします。
そういう意味では、内容そのものよりも、プロの専門的な視点をいかにわかりやすく伝えるか(あるいは伝えないか)、目的によって文章の表現を変えていく重要性のようなものを学んだ気がします。

神々の沈黙

2007-04-17 | 雑記
掲題の本を読みました。
(ジュリアン・ジェインズ著、紀伊国屋書店)
いやあ、これが面白い。
やや読みにくく後半はだれてくる文体でしたが、全体を通じて面白い視点が得られた一冊でした。
心理学者である著者が脳科学と考古学と古代文学の観点から、

+人類の先史時代(2000年前まで)は、脳の働きや意識のあり方が現代と全く違った
+その全く違う前提の下に人は生き、社会が構成された
+先史社会の遺物から分かる不思議な特徴も、それを裏付けている
+その脳の働きが徐々に変化していった意味で、2000年前から1000年ごとに人類は新しいステップを進んできた

という論旨を展開しています。

タイトルが昔流行った「神々の指紋」に似ていますが(さらに内容も先史時代を扱う点で似てますが)、こちらの方が仮説がシンプルな一方かなり考えさせられると思います。
検証が状況証拠だけ、の割に「確かにそうかも」と思わせるものがあります。
この本は仮説の面白さで一本勝負、というところがあるので、あえて仮説の内容は詳しく書きませんが、この本が面白いと思ったいくつかのポイントを書くと、

+広い(多様な学問分野からのアプローチ)・時間軸が長い(1000年単位)思考は視野を一気に広げてくれる
+視野が広がると大胆で飛躍的な仮説が出てくる気がする
+そういう雄大な仮説は(たとえそれが真実でなくても)人を感動させる

という感じでしょうか。
この著者は(論文以外は)生涯にこの本しか出版しなかったということなので、それだけ思考が凝縮されているのでしょうね。

新入社員

2007-04-03 | 雑記
新年度が始まり、街や駅に新入社員が目立つ季節になりました。
新入社員でこのブログを読んでいる人もいるのかも?しれません。
(いないか)

何でも始めたての頃は勝手が分からず苦労するものだと思います。
一方で伸びる新人の条件は何か?と考えると意外とシンプルで、

何より基本は素直な事

だと思います。
まずはゲームのルールを覚えないとゲームにもならないので。

ただ、単に素直で言われたことだけやるだけではいずれアベレージプレイヤーにしかなれないので、どこかで自分なりの味を巧妙に出していく必要があると思います。
そういう思いがないとやってて楽しくないのでどこかで手を抜くようになりますし。

しかしこの「自分の味」というのが曲者で、それが単なる思い込みだったり好き嫌いでしかない場合も多いのが若さだったりします。
とはいえ「何となく納得できない」という引っかかりは重要で、そうした小さな違和感を蓄積して考えて勝手な方法を試していくことで、自分ならではの問題意識や切り口が醸成されていく気がします。
またそうした勝手なやり方や思い込みを通す・文句を言わせず何となくよしとさせてしまう技法は、かなりの部分が「交渉術」に通ずるものがあるのではないでしょうか。

ばくっと言うと、素直さと素直で無さのアンビバレントさが、何事にも成長に大切な土壌だと思います。
雑感ですが。

アメリカよいとこ

2007-04-01 | フランス暮らし
アメリカに来ています。
フロリダ州マイアミ、ということで写真のように海沿いの爽やかな町です。

「欧米か」などといっしょくたにされることも多いですが、ヨーロッパに住んだ経験と比べて、アメリカに何となく違いを感じるポイントがいくつか。
ざっと書いてみると

+トイレが開放的

いわゆる「大」の方で、ドアや隣の個室との仕切り板の面積がかなり狭くなっています。
要は、頭や腰は隠れるけど足は丸見え、という状態なので、どこに誰が入っているか一目瞭然&風通しがかなり良いです。
隣で気張る人の足が見えると言うのもなかなかシュールですが、物の本によると戦時中などはアメリカ人は連れションならぬ「連れ便」も特に抵抗無くしていたそうで、そのあたり人工的に水音まで流す日本とは大違いですね。
(ちなみに日本兵はかならず一人で「大」をするので、アメリカ側はトイレの場所を探してそこで孤立した兵を捕虜として捕まえる戦術があったそうです)
フランスの便所も日本より開放的でしたが、アメリカほどではなかった気がします。

+肥満度の標準偏差

「アメリカ人には肥満が多い」というのもある種定説のようなものです。
実際見てみても当然日本よりは肥満した人が多いのですが、筆者のような外国人が行くような都市や空港にはそこまですごい率でそうした人がいるわけではないようです。
ただ「ここまで太っていいのだろうか」という類の人を歩いていると10分に1回くらい見かけるのも事実。
フランスの場合、もう少し皆均等に固太りしている感じなので、平均値は同じでも標準偏差(要はバラツキ度)が違う、という感じでしょうか。
健康フェチでジム通いしてジョギングして体系死守、というタイプの人もアメリカにはけっこういる気がします。

+食事の多様性

「アメリカはメシがまずい」と言いますが、実際にはどうでしょう。
率直に言って、「うまくもまずくもない(=まあまあ)けどレパートリーが少ない」という感じがします。
例えば、空港には基本的にマクドナルドとピザハットとスターバックス(及びそれらの亜流)しかないので選択肢が非常に限られます。
町でもニューヨークなどに行けばバラエティ豊富においしい料理がありますが、マイアミ程度の町だとコースを頼んでも基本的にサーモン煮込みかチキン丸焼きが牛ステーキしかありません。
実際なぜか豚肉がほとんど出されない(イスラム教徒やユダヤ人が多いからでしょうか)ので、レストランに行くとほぼその三択+マッシュポテト付け合せ、みたいな感じです。

フランスに行くと、
肉の種類が増える(羊や鴨が加わる)、
ポテトが出てくるとしたらマッシュでなくフライまたはグリルになる、
ソースがやっぱり多様で美味しい、
アペタイザー(前菜)がある(アメリカはあまり無い気がします)+圧倒的にうまい、
デザートがむちゃくちゃ甘いのはアメリカと同じでも、甘さに色々あるので大人でも楽しめる
田舎町でも一応中華や(エセ)和食やベトナム料理やインド料理がある

という感じで、やはり食事は大陸ヨーロッパの方が圧倒的に良い気がします。

ただ雰囲気がおおらかで「何でも有り感」が漂っているところはヨーロッパに無いアメリカの良さだと思います。
知らない人でもちょっと話しかけると乗りが良いですし。