MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

フロー体験 喜びの現象学

2006-08-20 | 雑記
掲題の本を読んでいます。
(ミハイ・チクセントミハイ著、世界思想社)
やや怪しいタイトルですが、中身は!!今年読んだ中でベスト5に入りそうなクオリティです。
(原題は”Flow”で、余談ですがそっちの方が率直でよいタイトルだと思いますし、おかしな邦題がついている一例のように思います)

「フロー」というのが、幸福・喜び・楽しさ・自己実現の状態を示す語で、要は「楽しくて夢中でハイな気分」です。
この本は心理学の視点から、幸福を感じる人の共通点は生活の中にフロー体験を多く持つことであり、そうした幸福を感じる生活を送るために何が必要なのかを考察しています。
宗教やあやしいセールスとは無縁の世界で、どうしたら内面的な幸福を感じることができるか、学問的な視点からまともに取り組んでいると思います。

非常にぴんときたところは、
+幸福になるための最も重要な資源は集中力である
+なぜなら、人がフローを感じるのは、集中力をある秩序形成にフォーカスし、結果のフィードバックを受けながらその取り組みを発展させていく時だから
+しかし、ともすると人は集中力を散らし、意識を散漫で受け身な状態におきたがる

といったあたりでしょうか。
特に最後の点の具体例として、

+人は週末や休暇を求めるが、本当に幸福で充実した休暇を過ごす事は実は難しい

と。
ともするとテレビやぼっとする、漫然と酒を飲む、そのまま休みが終わってしまう、というのは身に覚えのある話です。
あるいは、休みの最中なのに何だかんだ言って仕事のことを考えてしまう。
(本当は仕事で感じるような充実感を無意識のうちの求めてしまっているのでしょう)
こうした休みの過ごし方が幸福でないわけではありませんが、ものすごくハッピーで生きている喜びを感じるというよりは、なんとなくダラダラ怠惰な時間をすごした感じがするのも事実です。

もちろん何でもギスギス目標管理すれば良いというわけではありませんし、時に何もしない時間を持つことは有用です。
が、基本的には楽しい時間も意識して自分が作り出す、秩序や発展性を求めるのが幸福への近道だというのは判る気がします。

例えば一ヶ月の休暇があって、美しい高原のログハウスを借り切って過ごせるとしても、ただぼうっとしているだけではすぐに退屈で仕方なくなってくるでしょう。
だから例えば、毎日散歩する中で
+草花を観察してどこに何があるかを知り、
+それが日々どう変化していくかを楽しみ、
+(情報へのアクセスが可能なら)その草花が学術的にどんなものかを調べ、
+自分なりにそうした学術知識を整理/検証し、
+まだ世の中に知られていない新たな発見を探し…

といった喜びを自ら作り出すことが重要だと。
もちろん、喜びの中身が知識にまつわるものでなくても、例えば毎日少しずつ散歩の距離を伸ばす、少しずつランニングも取り入れる、など身体的なことでも良いと思いますが。

”最近なんとなくつまんない”と感じている人におススメの一冊だと思います。
著者はアメリカでは相当有名な心理学者だということですが、日本ではあまり聞きません。
ダニエル・ゴールマンみたいにわかりやすい概念を打ち出したり(EQ)、ノーベル賞とったりしないと有名にはならないみたいですね。