MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

移動祝祭日(2)

2005-10-24 | フランス暮らし
どうしてフランスのことを思い出してしまうのか?

考えてみると、当地の人々が持っているプライドや自己認識が、ある種滑稽というかほほえましい部分があるからかもしれません。

住めば都という言葉がありますが、当地の人達は「自分たちこそ都」だと思っているし、またそう口に出して言う。
でも実際に住んでみると、「そんなに素晴らしいのかね?」と思うようなことがたくさんあります。
(特に当たり前の便利さについて)
インターネットを引くのに電話会社の手続きだけで何ヶ月も待たされたり、マクドナルドでさえ注文を処理して食事にありつけるのに20分待たされたりする。
そうした点を見て、本来はごく簡単な工夫でそうした意味のない不便さが解消されると分かってしまうので、とても笑止千万な気分になります。

一方でこれは、例えばものすごく田舎に住んでいる人が、「郷土の誇り」を胸に「おらが村こそ日本一」と信じて疑わないのと似ているような気もしてくるのです。
どんなに不便でも

-こんな不便さは当たり前だ。それより見ろ。この美しい山河を

と胸を張って生きているところが、何となく「それもいい生き方かもしれないな」と心に残っているような気がします。
(日本人は逆に自虐的に卑下するのが過剰になっているような気もするので)

とはいえ、フランス人の同級生にこういう話をすると反応ははっきり二つに分かれますね。

中には

-その通りだ。自分もこの非効率で内向きな社会が嫌で仕方ない

という人もあり、また一方では(こっちの方が典型的だと思いますが)

-何を言ってやがる東洋の片隅からきたこの野蛮人が。お前ごときには本当の文明の価値が分かりはしないだろう

という人もいます。
アメリカ人ではないのでこういうことをダイレクトに表現せず、遠まわしに言うわけですが。

そんなわけでこういう話をフランス人とすると、ますます

-ああフランスって本当にフランスだなあ

と思ってしまうわけです。

移動祝祭日

2005-10-17 | フランス暮らし
フランスについてネガティブなことも含めあれこれ書いてきましたが。

-このヒト、悪口ばかり書いて、フランスでは嫌な思い出しかなかったの?

皆さんはこう思われるかもしれません。
確かに、ある側面を見ると筆者のフランス経験からの感想は、

-みんな東洋人はフランスというと基本的に「良い」と思っている
-でも実際にはとんでもない偏見や不便さに満ちた社会だ
-旅行で短期間だけ来てる人達はそんなことも理解できずに帰っていくのだろう
-フランスへの片思いもいいところで、外から見たら日本人のフランス信仰はみっともない話だ

といった部分もありますが、もう一つ全く逆のイメージもあります。
というのも、留学が終わって今、よくふと思い出すのはやはりフランスの光景なのです。
アンビバレントというか、愛憎は紙一重というか、とにかく田舎の村やパリの光景は心と記憶に残って離れません。

何かの文豪の言葉で、こんなものがあったかと思います。

「若き日のパリでの日々は移動祝祭日だ。たとえ貴方がパリを離れても、時が経ったとしても、パリは常に形を変えて、いつも貴方に訪れる」

実際のところ、予想を超えて心に引っかかるものが多かったのがフランスでの日々だった点は否めないと思っています。

(この話続く)

世界の中心はどこ?

2005-10-15 | フランス暮らし
フランスについてあれこれ書いてきましたが。

結局の所、それぞれの国ごとに、それぞれ違う前提が作用しているのだと思います。

日本には日本社会の暗黙の前提があり、それはある人たちにとっては不快なものでしょう。
例えば日本(やアジアの多くの国)では、人と接する時になるべく笑顔をすることが良しとされていると思いますが、これも文化によっては「気持ちが悪い」と感じるようです。
特にロシア・東欧などヨーロッパの旧共産圏出身者から見ると相当奇妙で、「なんでこんな締りのない顔をしてるんだ」と思うようです。
(そういう級友は実際いました)
友人や家族と接するときならともかく、店員や親しくない人と話す時に締りのない顔をするのは不自然でだらしないと感じるようです。
ビジネススクールでもあるロシア人の客員教授は90分×16回の授業で、一度も笑顔を見せなかったように思います。
(自分でジョークを言ってもほとんど表情が変わらない)
まあ、色んな文化がそれぞれ違うのは当たり前ですね。

しかしフランスに住んで、また色々な国からの級友と接して、一番感じたのは「色んな文化があるな」ということだけではありません。
特にフランスなどを例にして言うならば、それに加えて

-たしかに文化は国によって多様だ
-しかしそれら色々な文化の間には優劣がある
-最も優れているのはフランス(あるいはヨーロッパ)の文化である
-その優秀さは歴史が証明してきた
-だから世界中が(程度の差はあれ)フランス(ヨーロッパ)のようになろうとしている
-その流れは近世から始まっていて、今後もずっと続く

という考え方が「常識」あるいは「信念」になっていることでしょう。

日本でも戦前であれば、(起源は違えど)おそらく「フランス」を「日本」に置き換えて似たような見方が強かったのだと思いますが。
ヨーロッパ外の国でも程度の差はあれ、こういう自文化普遍主義は今なお理想として根を張っています。
(特に中東、ロシアや中国など)

今の日本や日本人(自分自身も含めて)が世界的に特殊な存在であるのは、こうした

-自文化が他国より優れているべきだ
-それは歴史によって証明されるべきだ
-自分のやり方(日本式)を他国もまねるべきだ/従うべきだ

といった考え方に否定的というか、ほとんど関心がない点だと思います。
海外ではびっくりするような小さな国でも、素朴にこうした考えをホンネなり願望として強くもっている気がします。
(というか今のフランスが自分が世界の中心だと主張することでさえ、かなり笑止な部分があると思いますね)

もちろんそういう自文化普遍主義が良いとは思いませんが、そうしたハングリーというか我儘な人間の中で伍して戦っていくには、もう少し戦闘的な覚悟/強さも必要ではないかと感じています。
「交渉術」もそのためのツールの一つとして、(日本人にとっては若干違和感を感じるものではあれ、)活用していくべきなんだなとビジネススクールで思ったのでした。

フランスのカフェ(3)

2005-10-14 | フランス暮らし
フランスのカフェの特徴と言えば。

当然、フランス特有の「サービス」レベルも頭に浮かびます。
具体的には、「ウェイターの気分でサービスの質が大きく異なる」ことです。

ウェイターの気分が乗らないとどうなるかと言うと…

-席に案内してもらえない
-席についてもメニューを持ってこない
-メニューを持ってきても注文をとってくれない
-飲み終わって出て行こうとしても勘定をしてくれない

ということになります。
実際カフェだけでなく、どの場面でも似たような状況はあり、
とにかく店やサービスを提供する側のわがままがまかり通る世界だったりします。
売ってやるだけありがたく思え、みたいな感じです。

フランスの場合、この傾向はマクドナルドやスターバックスでも本質的には変わらない感じがしました。

(この話続く)

フランスのカフェ(2)

2005-10-12 | フランス暮らし
カフェと言えばちょっとした食べ物が充実しています。

フランスといえば、バゲットのサンドイッチやクロワッサンは定番です。
他にもクロックムシュー(卵系)や甘いものもかなり充実しています。
ヨーロッパ全般にそうですが、とにかく甘いものや副食物がおいしいのが向こうの特長だと思います。

話がそれますがフレンチフライってどこの国が発祥だか知ってますか?

実はフランスではありません。
答えはベルギー。
第一次大戦でヨーロッパに来た世界事情に疎いアメリカ兵が、
「フランス語をしゃべっている連中が食べてるポテトの揚げ物」
ということでフレンチフライを持ち帰ったのです。
(ベルギー中~南部ではフランス語が普通に通じます)
だからアメリカでは「フレンチフライ」が通称になってしまったわけです。
それはともかく、ベルギーでは厚切りフライドポテトが大阪のたこ焼きのように街中でばんばん売られていて、これがめちゃくちゃうまいのです。
400円くらいでハコ山盛り、それにケチャップかマヨネーズをウニョウニョかけてバリバリ食べます。
(「サムライ」というソースが結構どこの屋台にもありましたが、結局試しませんでした。しょうゆ味なのか?)
間違いなく体に悪いと分かっていても、熱々ポテトとマヨネーズソースがたまらず、非常に感動した覚えがあります。
ベルギーでは中年以上で太ったヒトがかなり多いのですが、理由はそのあたりにもあるように思いますね。

話を戻すと。
食べたいヒトにはカフェでもチキンの丸焼きとか煮込みとか何がしかの「料理」もありますが、だいたい味は「そこそこ」レベルな感じがしました。
(というかレンジでチンしてるんだろうな、という感じのものもあったり…)

筆者が行っていた学校には古い宮殿があり、そこが観光地なので周りに観光客向けのカフェがいくつも並んでいたものでした。
時々そうしたカフェでエスプレッソ頼んで宿題の教材を読んだりしていましたが、日本でいう「カフェ」とはいくつか違う点があったと思います。

まず多くの席がとにかく席が屋外にあること。

これはカフェに限りませんが、ヨーロッパ人の日光好きは大変なもので、食事でもコーヒーでも、とにかくやたら外で取りたがります。
だからホコリっぽいパリの街中でも、少しくらい曇りの日でも、とりあえず外で食べるのが好まれます。
日本人からするとホコリが飛んでるし落ち着かないしで、何となく違和感があります。

(この話続く)

フランスのカフェ

2005-10-10 | フランス暮らし
フランスといえばカフェの本場な感じがしますが、実際どうなんでしょう?

パリにはたくさんのオープンカフェが並んでいて、寒い季節でも屋外でコーヒーを飲んでいるところをよく見かけます。
パリの物価は他の場所に比べ3割くらい高くなっていますが、普通のまちなら1.5~2ユーロ(約200~250円)くらいでコーヒーが飲めます。
パリだと観光客を当て込んでいるのでもう少し高いですね。

「コーヒー」といっても、フランスでは特に断らない限りエスプレッソと角砂糖が出てきます。
いわゆる「アメリカン」コーヒーがあまり存在しないのです。
日本で言う「ブレンド」とか「アメリカン」型のコーヒーは、カフェオレ頼んでミルク入れて飲め、みたいな感じです。

学校にも無料のコーヒーメーカーがあったのですが、薄めのエスプレッソしか出ず、中途半端でなんだかな、という感じの代物でした。

(この話続く)