MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

日本人にMBAはいらないか?(続き)

2016-12-07 | MBA
「MBA」に価値は無いか?
もう少し補足で考えてみたいと思います。

私が自分で行って価値があると思ったのは、海外トップ校で世界の相場観を知ることであり、多様性の幅を広げることでした。
その点、話題とした新書とやや似た見解です。

ただ、私は著者と違って「だからといって国内MBAが無意味だ」とも思いません。
理由は二つ。

一つには、授業でピンポイントに「これが知りたい」ニーズを満たせることはあるからです。
例えば、仕事で企業価値評価をしてきたが、もう一度基本から最新までおさらいしたい。
マーケティングをしてきたが、自分の経験知を定番の教科書のおさらいから、体系的に整理したい。
生産管理や管理会計の知識が無いが、一通り幅広くイロハを知っておきたい。
こういうニーズは人によってあると思います。

本を買って孤独に読むより、専門家や同じ関心がある人と集まって話すと、学びは効率的でしょう。
その意味で、アラカルトの勉強には価値があると思います。

しかし、それだけで大学二年間などフルコース行く必要があるかは別の話。

そこでもう一つMBAに価値がある理由は、やはりブレイクを取って人生のリズムを自分で作ることだと思います。
一年か二年か、仕事から少し距離を取って過去未来を振り返る。
そういう自分専用の思考時間を、「MBA」の名で正当化し可能にすることが実態としての価値ではないでしょうか。

話題の新書(遠藤功さんの本)は、そういう発想こそが怠けグセで中途半端でダメだ、という感じですが。
確かに、能力向上や効率の点で、ぬるくやればそこそこしか成果は出ません。
しかし、人生100年時代で考えると、既に「学び直し」・「キャリア軌道修正」・「複線キャリアの同時管理」は不可避と思います。
昔のように仕事と私生活を二分し、一気に駆け抜け一本道でゴールまで行ければ分かりやすいのですが。。

仕事の比重が絶大に重い時もあれば、(介護や育児も含め)そうはいかない時もある。
エッジをきかせるために、常に何らかの新しいスキルをゆるく学習し続ける。
あることを半分趣味で始め、いつの間にかそれが仕事そのものではないがちょっとした仕事のエッジになる。
無料で引き受けた人助けが、いつの間にかそれなりに引き合いの多い状態になる。

このような状況は、意外に一般的ではないかと思います。
MBAに話を戻すと、国内MBAを始めることで、自分の意思で自分の生活にこういうリズム感やゆらぎを作ることが出来る。
MBAに実利があれば尚良いが、遠藤さんが指摘するように日本ではMBAで収入が上がらないとしても、それはそれで良い。
大した成果が出なくても、最低限学位を取って、社会的に「私は努力した」とは言える。損にはならない。
こういう感じで日本人にMBAの価値があるのが実態では、と私は見ています。

要は、別にどうしても学位や知識が欲しいわけではなくて、MBAがある種の「ちょうどよい選択肢」になっている感じでしょうか。

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