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祝・チャド共和国独立記念日2015

2015-08-11 07:30:06 | アフリカ情勢
アフリカ独立記念日月間、きょうはチャドの独立記念日だ。チャド人の友人諸氏に、まずはお祝いを申し上げたい。

チャドは地域分類からすれば「中部アフリカ」ということになる。日本からみれば、しばしば「裏アフリカ」のような扱いを受ける、遠くて未知の地域だ。

世界史においても、長きにわたりコンゴ盆地の熱帯雨林とサハラ砂漠に閉ざされ、暗黒大陸となってきた。複雑な歴史背景と政局の中、一般には注目を浴びにくい地域でもあった。

◆チャドはこんな国
チャドは人口1,200万人、面積は128.4平方キロメートル(日本の約3.5倍)と広大な領土を擁する。

南部はサバンナ~ステップ気候、そして北部にかけてその地勢は砂漠に溶け込んでいく。イスラムと砂漠が育む独特の文化と、厳しさの中に突如出現する素晴らしい自然の造形が人々を魅了する。何年か前のJeune Afriqueのチャド特集の写真には心を奪われた。

(チャドの風景~Magazine Voyageurウェブサイトより)



チャドは大陸の奥にあって東と西、南と北、アラブとアフリカを結ぶ結節点にある。語弊を恐れず言えば、いわば「地の果て」に位置してきたともいえよう。この砂漠の地を越えて文化や交易が行われ、政治的、戦略的野心が交錯した。そういったことから、この国の歴史には常にきな臭さがつきまどってきた。


◆紛争と戦いの歴史
独立にあたっては南北の衝突があった。また北に位置するリビアとは、1978年から実に10年以上にわたり戦争を重ねてきた。東にスーダン。ダルフールはチャド内戦、自国の安全と深く結びついており、スーダンとの二国間関係は常に大きな課題であった。南に中央アフリカ。政変、武装勢力、無秩序。典型的な「脆弱国家」だ(あるいは近年では「崩壊国家」といも言われる)。

西にはニジェール。マリ危機とイスラム武装勢力の影響を受けてきた。そして、首都ンジャメナのすぐ南にはカメルーン極北州とナイジェリア北東部が隣接する。そう、ボコハラムが勢力を広げる地域だ。

チャドはそのいずれの紛争の影響も受け、そして戦闘にも関係してきた。戦いの歴史なのだ。

そしてチャドの中央部を横切る北緯15度線はイスラム主義武装勢力のフロントラインと言われる。西からモーリタニア、マリ、ニジェールを通り、チャド、ダルフール、南北スーダン国境、南には中央アフリカ。そしてソマリアに至る。しばしば地政学関係者から「不安定の弧」、「テロリズムの弧」などと呼ばれるようになった。


砂漠の戦いに精通し、百戦錬磨のチャド軍。これまでも海外への派兵を重ねてきた。以前は、コンゴ戦争に介入した。中央アフリカには現在もチャド軍が展開する。仏軍のマリ介入に際して、砂漠の戦いを知り、鍛えられたチャド軍が動員された。


◆ガバナンス
チャド自体のガバナンスについても触れざるを得ない。トンバルバイ、イセーヌ・アブレ・・・。独裁、政変、紛争。かつての独裁者、イセーヌ・アブレ元大統領の公判は、ダカールの特別法廷でスタートされたところ。この件に関しては、近く特集を用意している。

2000年代に繰り広げられた内戦では、10年間に、首都ンジャメナが二度にわたり陥落の危機に直面した。市民は逃げ場を失い、川を渡り対岸のカメルーン領にも押し寄せた。

この地には国連中央アフリカ・チャドミッション(MINURCAT)が展開していたが、2010年、チャド側が受け入れ同意を与えず撤退となった。市民や難民への保護と人道支援が懸念された。

またこの国はOPECに加盟する産油国だ。世銀はこの国の石油開発を支援するかわりに、チャド政府に対し、歳入の一定割合を、社会開発に割り当てるよう条件付けた。しかしチャド政府はこれを尊重せず、2006年には世銀とオフトラックとなった。

同じ頃、チャドはそれまでの台湾との外交を断ち、北京との関係に切り替えた。中国資本(CNPC)による油田を開発、操業が開始される。


◆国際社会の表舞台へ
マリの仏軍介入、サーバル作戦への帯同は、国際社会の異端として扱われるイドリス・デビ政権にとっては、よい復権の機会だ。現在、仏軍作戦はバルカン作戦に再編され、参謀本部もンジャメナに置かれている。


個性あふれる中部アフリカの国々にあって、チャドの存在はなお強烈だ。しかしそのイメージにはいつもきな臭さが漂い、好戦的な香りがする。いつしか秩序と平和が根付き、本来のチャドの文化や生活が人々を魅了する国になって欲しい。そう思うンボテである。

(2014年12月「ダカール平和・治安サミット」のハイレベルパネルにて。仏ルドリアン国防相、4人のサヘルの大統領を前にデビ大統領が吠えた。会場は大盛り上がり。)


(おわり)

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