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アフリカ・プロモーター、ンボテ★飯村がお送りする100%アフリカ仏族ぶらぶらトーク!

【議論沸騰?!】新国家「ガーナ・イボワール共和国」?!

2016-05-01 07:30:30 | ぶらぶらアフリカ論
西アフリカには、人口1千万人~2千万人規模の小さな国が長屋のように軒を並べている。長屋だからキッチン、トイレ共同。それが共通通貨だったり、域内の往来を可能とするパスポートだったり。そして長屋で諍いがあればご隠居が出動。おい、八つぁん、熊さんさん、揉めごとはおよしよ、という具合。

そんな中で、なかなかご近所づきあいの難しい国がある。ガーナだ。ギニア湾岸にあって英語圏。周りをコートジボワール、ブルキナファソ、トーゴといったフランス語の国に囲まれている。

ちなみにその昔、現在のガーナの東部からトーゴにかけての一帯は「トーゴランド」というドイツ領であった。第一次世界大戦で枢軸国が敗戦。ベルサイユ体制下、英仏の間で薄切りハムのように縦割りされ、西はガーナに編入。東はのちにトーゴとなる。


さてその歴史はともかく、ガーナと周りの国はなかなか一つになれない事情がある。まず言語。次にそれぞれ旧植民地の影響を受けた異なる法律や行政の仕組み。西アフリカ通貨同盟(UEMOA)加盟国と非加盟国。ガーナだけ異なる通貨。

もちろん経済合理性からいえば、地域統合できれば周辺国を含め、大きなメリットがある。しかし、統合のためにどこの国がどれだけ譲歩するのか。誰が権力を握るのか。メンツや自尊心の問題もある。長屋の区画整理は簡単ではない。


そんな中、話題沸騰しそうなニュースがアップされていた。

新国家「ガーナ・イボワール共和国」?!
Un nouveau pays nommé Ghan'ivoire pourrait voir le jour(ivoirematin.comより)


よりによって競合するライバルの二カ国、コートジボワールとガーナが、「もしも統一されるたら?」という仮のお話。当地メディアのivoirematin.comに掲載された記事だ。



記事いわく(以下、要約)。

「ガーナ・イボワール共和国」。このアイディアはコートジボワールとガーナ、となりあった仏語圏と英語圏の溝を埋める一歩になるだろうか?

コートジボワールは忌々しい紛争から抜け出し、経済成長率9%を達成。他方、隣国ガーナは30年間安定を保ってきたが、成長率は4%に満たない。コートジボワール、トーゴ、ベナン、セネガル、コンゴ民主共和国は、世銀による民間企業の競争力のためのグッドリフォーマーベスト10に数えられる。ガーナはここに名を連ねていない。

もし仮のシナリオとして、ガーナとコートジボワールの間を、人や物が自由に行き来できるようになったとすれば、相当の効果が期待できる。国際カカオセンターを創設、生産量と価格を主導的に動かしていくカカオ版OPEC、いわば'COCOPEC'のようなものが設立可能だろう。

これまで一次産品の生産国と中間処理にとどまってきた両国が、より大きな消費市場となることも期待される。西アフリカ第2位、第3位の経済規模、そして中間層を抱える両国は投資を呼び込み、国内市場のみならず、ナイジェリアへの輸出をも誘発するかもしれない。

石油とガスを生産し、電力供給のキャパシティを持つ両国は、すでに相当額の公共投資を投入。両国の二つの発電所の容量に鑑みれば、加工業や雇用をより多く生み出すことが期待できる。周辺国への電力輸出も志向するだろう。内陸国への輸出入の港湾機能も拡張され、統合の効果は周辺国にも及ぶ。そして南部アフリカにおける南アのように、西アフリカにおける成長センターとなることが期待される。

文化、音楽、食の交流は観光のみならず、違いを乗り越え、地域の真の統合にも益することとなろう。この関係はナイジェリアと弟国ガーナの間にすでに存在するが、ガーナ・イボワールでこのようなことが再現可能だ。そして両国民の統合が進み、仏語圏と英語圏の溝を埋め、双子の兄弟として互いを尊重し、成長の源とするのだ。

西アフリカ経済共同体(ECOWAS)の統一にも大きな一歩となること請け合いだ。現在、経済規模の77%をナイジェリアが占めているが、地域統合に真剣でなかった。新しい統合国家は「ワンボイス」でその対立軸をなすことが期待される。

実現するためにはたくさんの準備が必要だ。まず国勢調査に基づく国家基盤の形成。次に新国家政権への権限移譲。そして公共サービス提供の統合と改革。新国家の成長は目に見える政治、行政改革の上にこそ成り立つのだ。



アフロ・オプティミズムに基づく根拠のない夢。あまり現実味のないユートピズムに基づく記事。ここまで付き合わせておいて大変失礼ながら、正直あまり面白くない記事。笑

しかもコートジボワール側からの一方的な視点を感じざるをえず、特に赤字部分、ガーナ人が見たら穏やかでないだろう。

ンボテも仏族を主張しながら、仏語圏と英語圏と地域統合にこれまで奔走してきた。地域レベルの対話の促進にも関わってきた。両言語で、西アフリカのunitéを、現場から一緒に考えていきたいと思い、行動してきた。

そういう視点からすれば、こういったいちいち気に触る「ギャップ」こそがまず埋めなければならない点だ。お互い譲らない視点、自分中心的な世界観では、歩み寄りはない。

他方、根拠はなくとも、こういう壮大なユートピズムが、将来への対話を開く、とも思っている。根拠のないアフロオプティミズム、大いに結構。アフリカは何をやってもダメ、将来は暗い、とするアフロペシミズムよりは何倍もいい。昨日まで連載を続けてきた【集中講義・共通通貨、フランCFA】でも西アフリカの現実を描いてきたつもりだが、今日ご紹介の記事は、(失礼ながら)記事の薄っぺらさに、逆に軽快さを感じられるものだった。

「もしもシリーズ」といえばドリフの大爆笑だが、「ダメだこりゃ。」ではすまされない笑。古典落語ではないが、「粗忽長屋」の将来はいかに?!

(おわり)

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