先日話題にしたンボテ一押しのアフリカ映画、'Bienvenu au Gondowana'(ゴンドワナ共和国へようこそ!)。
超話題の映画'Bienvenu au Gondowana'見てきました
第一話 ンボテ今年イチオシのアフリカ映画
現代アフリカが抱える民主主義、選挙、独裁、言論・表現のの自由、汚職にワイロ、世襲の弊害、、。あらゆるアフリカの政治の矛盾が、後味残さず笑い飛ばせる痛快な映画。
あまりの期待値の高さに、封切りとともに鑑賞。その後はアフリカ人の友人たちと、結局3回も見てしまった。あと何回観に行ってもいいくらい笑。
さて、この映画をみなさんもし見ることがあれば、知っとくと面白いトリビアが。恒例、細かすぎる映画チェックを。
まず設定は20XX年、ゴンドワナ超々民主共和国(République Très très democratique du Gondowana )。国家創始者である大統領(Président fondateur)が長期政権を引く。
ゴンドワナ超々民主共和国は、おなじみフランス国際ラジオ放送(RFI)の定時ニュース最後のコーナー、コメディアン(Humoriste)ママンによるコラムに登場する架空のアフリカの国。
なんでこんな国をつくったの?!
ママンは仏語圏ネットワーク'TV5 Monde'のインタビューでこう答えている。
「アフリカの多くの国で政体や権力者を批判、揶揄することは許されていないんだ。だから架空のゴンドワナ超々民主共和国をスケープゴートに、具体的な問題を重ねて笑いにするんだ。将来への希望を乗せてね」。
さて、映画「ゴンドワナへようこそ」。この主な撮影地は、当地コートジボワールである。随所に出てくるオレンジ色のタクシーがそのシンボル。
しかし撮影の多くはアビジャンではない。架空の首都ゴンドワナ・シティは、ホンモノの首都ヤムスクロウに重ねている。
選挙監視団が宿泊したホテルは現存する「プレジデント・ホテル」。せり出した天井が特徴的で、昔から「いつ落ちてくるか」、なんてまことしやかに言われている。
(こちらは現地で実写)
そしてこの映画撮影の時には、ホンモノの'Hôtel Président'のあとに、切って貼ったように'Fondateur'唱え書いた紙が貼ってある。このシャビーさの演出が良い。
(こちらも現地で実写)
選挙監視団がゴンドワナ・シティに着くと、首相自らがお出迎え、ファンファーレの中、貴賓室に向かい入れられる。しかし監視団の一人、黒人のメンバーは機内に忘れ物をしたゆえに、監視団から逸れてしまう。貴賓室に向かおうとすると、ここで立っていた警官が立ちはだかる。
「ここはお前のようなものが入るところではない。あっちで入国検査を受けてこい。」
「私も監視団メンバーです!」
警官たちは顔を見合わせると大爆笑。取調室に連行される(お決まり笑)。
「お前のようなものが監視団のわけはないだろ?!このカメルーン人が。」
「私はカメルーン人ではありません。」
「なんだこの野郎。じゃあコンゴ人か?!」
「パスポートをみてください。私はスイス国籍です。」
警官たちは再び顔を見合わせると、指をさしながら大爆笑。
「こいつがスイス人だってよ、片腹痛いわ!パスポート見せてみろ。そんなわけない、、、あ、あれ?!」
シーンはここで切れるが、アフリカ人に冷たいアフリカ人の風刺。ちなみにこの警官の制服は、コンゴ民主共和国国家警察をそのまま模している。いや、制服だけじゃないか笑。
映画の中で、パリのシーンが出てくる。黒人のいかにも成金、ヒョウ柄の衣装をまとったギラギラした女性。黒い車で乗りつけたパリの豪邸の入り口には、なんと'Biens mal Acquis!'(不当利得!)の差し押さえの掲示が。
破り捨てて中に入るご婦人。すると大音響の音楽の中、タバコと酒であふれた邸内にはたくさんの男女が裸で寝ている。そしてご婦人が目指すのはそのムスコ。「アンタ、何やってんの?!パパがお呼びだよ!」
パパとはもちろん、ゴンドワナ超々民主共和国の創始者大統領だ。彼は国に連れ戻され、大統領の代わりに野党討論の茶番に出演する。ママに後ろからビシビシやられながら。
これ、他でもない。不当利得財産、放蕩息子。赤道ギニアのオビアン・ンゲマ大統領と、その子息テロドロ・ンゲマ副大統領を模している。
そしてこのゴンドワナ共和国、川を挟んだ向こう岸には、別の進んだ国がある。ゴンドワナで戦う女性ジャーナリストは対岸を見つめながら、
「ほら、向こう岸をみて。あちらには電気も、仕事も、何より自由があるの。こちらは見ての通り停電で真っ暗。でも本当にないのは自由なの。」
これはコンゴ民主共和国のキンシャサと、コンゴ共和国ブラザヴィルが、コンゴ川で向き合った様子をもしている。一人あたりの収入は10倍近く違う。しかし民主主義や自由の問題は一緒。現実の方が厳しいということか。
この映画を見たアフリカ人「わが母国と全く同じことが起きているよ。いや、兵士が暴れたりしない、ゴンドワナのほうがまだいいかな。」
映画の随所にはたくさんの仕掛けが隠れている。それを引き立たせているのは、ママンの脚本と、そして豪華キャスティングにある。
ママン・プロデュース、ゴンドワナ企画といえば去年はこちらの舞台も観に行きました。
Festival de Gondowanaにいってきました!(2)〜大統領たちの秘めごと
(つづく)
超話題の映画'Bienvenu au Gondowana'見てきました
第一話 ンボテ今年イチオシのアフリカ映画
現代アフリカが抱える民主主義、選挙、独裁、言論・表現のの自由、汚職にワイロ、世襲の弊害、、。あらゆるアフリカの政治の矛盾が、後味残さず笑い飛ばせる痛快な映画。
あまりの期待値の高さに、封切りとともに鑑賞。その後はアフリカ人の友人たちと、結局3回も見てしまった。あと何回観に行ってもいいくらい笑。
さて、この映画をみなさんもし見ることがあれば、知っとくと面白いトリビアが。恒例、細かすぎる映画チェックを。
まず設定は20XX年、ゴンドワナ超々民主共和国(République Très très democratique du Gondowana )。国家創始者である大統領(Président fondateur)が長期政権を引く。
ゴンドワナ超々民主共和国は、おなじみフランス国際ラジオ放送(RFI)の定時ニュース最後のコーナー、コメディアン(Humoriste)ママンによるコラムに登場する架空のアフリカの国。
なんでこんな国をつくったの?!
ママンは仏語圏ネットワーク'TV5 Monde'のインタビューでこう答えている。
「アフリカの多くの国で政体や権力者を批判、揶揄することは許されていないんだ。だから架空のゴンドワナ超々民主共和国をスケープゴートに、具体的な問題を重ねて笑いにするんだ。将来への希望を乗せてね」。
さて、映画「ゴンドワナへようこそ」。この主な撮影地は、当地コートジボワールである。随所に出てくるオレンジ色のタクシーがそのシンボル。
しかし撮影の多くはアビジャンではない。架空の首都ゴンドワナ・シティは、ホンモノの首都ヤムスクロウに重ねている。
選挙監視団が宿泊したホテルは現存する「プレジデント・ホテル」。せり出した天井が特徴的で、昔から「いつ落ちてくるか」、なんてまことしやかに言われている。
(こちらは現地で実写)
そしてこの映画撮影の時には、ホンモノの'Hôtel Président'のあとに、切って貼ったように'Fondateur'唱え書いた紙が貼ってある。このシャビーさの演出が良い。
(こちらも現地で実写)
選挙監視団がゴンドワナ・シティに着くと、首相自らがお出迎え、ファンファーレの中、貴賓室に向かい入れられる。しかし監視団の一人、黒人のメンバーは機内に忘れ物をしたゆえに、監視団から逸れてしまう。貴賓室に向かおうとすると、ここで立っていた警官が立ちはだかる。
「ここはお前のようなものが入るところではない。あっちで入国検査を受けてこい。」
「私も監視団メンバーです!」
警官たちは顔を見合わせると大爆笑。取調室に連行される(お決まり笑)。
「お前のようなものが監視団のわけはないだろ?!このカメルーン人が。」
「私はカメルーン人ではありません。」
「なんだこの野郎。じゃあコンゴ人か?!」
「パスポートをみてください。私はスイス国籍です。」
警官たちは再び顔を見合わせると、指をさしながら大爆笑。
「こいつがスイス人だってよ、片腹痛いわ!パスポート見せてみろ。そんなわけない、、、あ、あれ?!」
シーンはここで切れるが、アフリカ人に冷たいアフリカ人の風刺。ちなみにこの警官の制服は、コンゴ民主共和国国家警察をそのまま模している。いや、制服だけじゃないか笑。
映画の中で、パリのシーンが出てくる。黒人のいかにも成金、ヒョウ柄の衣装をまとったギラギラした女性。黒い車で乗りつけたパリの豪邸の入り口には、なんと'Biens mal Acquis!'(不当利得!)の差し押さえの掲示が。
破り捨てて中に入るご婦人。すると大音響の音楽の中、タバコと酒であふれた邸内にはたくさんの男女が裸で寝ている。そしてご婦人が目指すのはそのムスコ。「アンタ、何やってんの?!パパがお呼びだよ!」
パパとはもちろん、ゴンドワナ超々民主共和国の創始者大統領だ。彼は国に連れ戻され、大統領の代わりに野党討論の茶番に出演する。ママに後ろからビシビシやられながら。
これ、他でもない。不当利得財産、放蕩息子。赤道ギニアのオビアン・ンゲマ大統領と、その子息テロドロ・ンゲマ副大統領を模している。
そしてこのゴンドワナ共和国、川を挟んだ向こう岸には、別の進んだ国がある。ゴンドワナで戦う女性ジャーナリストは対岸を見つめながら、
「ほら、向こう岸をみて。あちらには電気も、仕事も、何より自由があるの。こちらは見ての通り停電で真っ暗。でも本当にないのは自由なの。」
これはコンゴ民主共和国のキンシャサと、コンゴ共和国ブラザヴィルが、コンゴ川で向き合った様子をもしている。一人あたりの収入は10倍近く違う。しかし民主主義や自由の問題は一緒。現実の方が厳しいということか。
この映画を見たアフリカ人「わが母国と全く同じことが起きているよ。いや、兵士が暴れたりしない、ゴンドワナのほうがまだいいかな。」
映画の随所にはたくさんの仕掛けが隠れている。それを引き立たせているのは、ママンの脚本と、そして豪華キャスティングにある。
ママン・プロデュース、ゴンドワナ企画といえば去年はこちらの舞台も観に行きました。
Festival de Gondowanaにいってきました!(2)〜大統領たちの秘めごと
(つづく)