世界中のニュースがパナマペーパーに向いている。モサック・フォンセカなる弁護士事務所を介した「仕事」で、誰が不当利得を得たのか?いや、誰の行為に足がついたのか?政界、財界、ショウビズ、スポーツ界。ビッグ・スキャンダルに世界中が半ば大捕り物の一斉捜索である。
1977年から2015年まで、フォンセカ事務所で作られた「オフショア企業」、つまりは「飛ばし」のための企業は実に21万4千社。
リストには12の国家元首経験者、うち6人の現職、128の政治家・高官。プーチン大統領の近親やアサド大統領、コフィ・アナン元国連事務総長などの名前が報じられる。もちろん全てが「クロ」というわけではない。
そしてアフリカにも疑いの目は向けられている。先週号の'Jeune Afrique'誌では、「天国までは持っていけない」('Ils ne remporteront pas au paradis')と題した記事を掲載した。
これによれば、このパナマペーパーのスキャンダル、アフリカに関しては四つの視点がある。
最も大きな疑念は、'Paradis fiscaux'(税金の天国)に資産を隠し、不当に利得を得たのは誰かという点。これまでリストにはアフリカ関係者として、モロッコ国王のモハメド6世やアルジェリアのブーテフリカ大統領の支持者、エジプトのムバラク元大統領の息子、南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領やコンゴ共和国のサス・ンゲソ大統領の姻戚などの名前があるという。
リストに名を連ねている関係者は、揃ってその合法性を主張する。しかしスターやビッグネームと並んで武器、麻薬を取り扱うならず者が隣り合っていることには違和感を覚えざるをえない。また公人の資産に関する情報へのアクセス、透明性という点からは、全く瑕疵がないとはいうことができないだろう、と記事は指摘する。少なくともOECDでは2009年以降、500億ドル以上の資産を集めたオフショア市場は申告が求められており、この取り決めには反することとなる。
次に、アフリカ大陸に'Paradis interdit'(禁断の天国)がなかったのか、という点。バージン諸島やモーリシャス、セイシェルなどは、簡易、安価、即時に会社を設立できることから、オフショア企業が利用することで知られる。しかし資産の保全には政治的な安定、銀行機能の発達が不可欠であり、パナマのようにはならない、と記事は述べている。
三つ目は、パナマゲートが'Paradis fiscaux'(税金の天国)のみならず、'blanchiment de l'argent'(資金洗浄)に使われていなかったのか、という疑念。フォンセカ事務所を通せば事実上匿名での会社設立が可能であった。このことが資産隠しのみならず、マネーロンダリングに使われてなかったのかということだ。
たとえば、このスギャンダルが明るみに出る前、コンゴ民主共和国のカビラ大統領の双子の妹、ジャネットカビラが、同国通信業界最大手のヴォーダコムの資本取引を行ったという事実は、あまりキンシャサ市民にも知られていない。また南アフリカのズマ大統領の姻戚が経営する企業が、イスラエル系企業が有していたコンゴ東部の石油コンセッションを水面下で取引したことなども「不透明な」(opacité)事例として指摘されている。
最後に、メディアへの圧力。このスキャンダルの発覚はもともと2014年から2015年の変わり目にかけて、ミュンヘンにあるメディアに「ジョン・ドイ」と称する人物から寄せられた通報がきっかけだという。世界的な大スキャンダルになりかねないこの事件、膨大な資料とデータの提供を受け、国際的なメディアネットワークの協力で、極秘のうちに解析が行われた。ワシントンに居を構える国際捜査ジャーナリストコンソーティアムには、65カ国、190名のジャーナリストが協力者として名を連ねた。中にはナイジェリア、ウガンダ、ケニア、ジンバブエ、モザンビークなど23人のアフリカ人ジャーナリストも含まれていた。そういった中、危惧されたのは、ジャーナリストへの妨害や蹂躙。特に報道の自由が保障されず、常に弾圧を受けてきたアフリカでのメディア弾圧が危惧されたという。
世界を駆け抜けるパナマペーパースギャンダル。グローバリゼーションの中、アフリカも例外ではなく、当面この疑惑に関するニュースが話題を賑わせることとなりそうだ。
ところで、ここに日本企業や日本人があまり出てこないな、などとふと思った。アフリカぼけでンボテが知らないだけなのか。日本人はクリーンで潔癖なので、このような事件に巻き込まれないということなのか。それともこういうところでも国際情報ネットワークから外れていて、潮流に乗り遅れただけなのだろうか。。。
(おわり)
1977年から2015年まで、フォンセカ事務所で作られた「オフショア企業」、つまりは「飛ばし」のための企業は実に21万4千社。
リストには12の国家元首経験者、うち6人の現職、128の政治家・高官。プーチン大統領の近親やアサド大統領、コフィ・アナン元国連事務総長などの名前が報じられる。もちろん全てが「クロ」というわけではない。
そしてアフリカにも疑いの目は向けられている。先週号の'Jeune Afrique'誌では、「天国までは持っていけない」('Ils ne remporteront pas au paradis')と題した記事を掲載した。
これによれば、このパナマペーパーのスキャンダル、アフリカに関しては四つの視点がある。
最も大きな疑念は、'Paradis fiscaux'(税金の天国)に資産を隠し、不当に利得を得たのは誰かという点。これまでリストにはアフリカ関係者として、モロッコ国王のモハメド6世やアルジェリアのブーテフリカ大統領の支持者、エジプトのムバラク元大統領の息子、南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領やコンゴ共和国のサス・ンゲソ大統領の姻戚などの名前があるという。
リストに名を連ねている関係者は、揃ってその合法性を主張する。しかしスターやビッグネームと並んで武器、麻薬を取り扱うならず者が隣り合っていることには違和感を覚えざるをえない。また公人の資産に関する情報へのアクセス、透明性という点からは、全く瑕疵がないとはいうことができないだろう、と記事は指摘する。少なくともOECDでは2009年以降、500億ドル以上の資産を集めたオフショア市場は申告が求められており、この取り決めには反することとなる。
次に、アフリカ大陸に'Paradis interdit'(禁断の天国)がなかったのか、という点。バージン諸島やモーリシャス、セイシェルなどは、簡易、安価、即時に会社を設立できることから、オフショア企業が利用することで知られる。しかし資産の保全には政治的な安定、銀行機能の発達が不可欠であり、パナマのようにはならない、と記事は述べている。
三つ目は、パナマゲートが'Paradis fiscaux'(税金の天国)のみならず、'blanchiment de l'argent'(資金洗浄)に使われていなかったのか、という疑念。フォンセカ事務所を通せば事実上匿名での会社設立が可能であった。このことが資産隠しのみならず、マネーロンダリングに使われてなかったのかということだ。
たとえば、このスギャンダルが明るみに出る前、コンゴ民主共和国のカビラ大統領の双子の妹、ジャネットカビラが、同国通信業界最大手のヴォーダコムの資本取引を行ったという事実は、あまりキンシャサ市民にも知られていない。また南アフリカのズマ大統領の姻戚が経営する企業が、イスラエル系企業が有していたコンゴ東部の石油コンセッションを水面下で取引したことなども「不透明な」(opacité)事例として指摘されている。
最後に、メディアへの圧力。このスキャンダルの発覚はもともと2014年から2015年の変わり目にかけて、ミュンヘンにあるメディアに「ジョン・ドイ」と称する人物から寄せられた通報がきっかけだという。世界的な大スキャンダルになりかねないこの事件、膨大な資料とデータの提供を受け、国際的なメディアネットワークの協力で、極秘のうちに解析が行われた。ワシントンに居を構える国際捜査ジャーナリストコンソーティアムには、65カ国、190名のジャーナリストが協力者として名を連ねた。中にはナイジェリア、ウガンダ、ケニア、ジンバブエ、モザンビークなど23人のアフリカ人ジャーナリストも含まれていた。そういった中、危惧されたのは、ジャーナリストへの妨害や蹂躙。特に報道の自由が保障されず、常に弾圧を受けてきたアフリカでのメディア弾圧が危惧されたという。
世界を駆け抜けるパナマペーパースギャンダル。グローバリゼーションの中、アフリカも例外ではなく、当面この疑惑に関するニュースが話題を賑わせることとなりそうだ。
ところで、ここに日本企業や日本人があまり出てこないな、などとふと思った。アフリカぼけでンボテが知らないだけなのか。日本人はクリーンで潔癖なので、このような事件に巻き込まれないということなのか。それともこういうところでも国際情報ネットワークから外れていて、潮流に乗り遅れただけなのだろうか。。。
(おわり)