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コンゴルーツのルカクがベルギーを救う!~ワールドカップ決勝トーナメント

2014-07-05 07:30:38 | アフリカサッカー・スポーツ
ワールドカップもいよいよ準々決勝。ここで再びサッカーネタを。

ここまでの戦い、強豪が次々と敗れ、そしてヨーロッパと南米の超強豪8代表が出揃った・・・はずであるが、そんな中でも、サプライズと言わないまでも、勢いに乗って「伝統的強豪国」を打ち砕き、快進撃を遂げた国がまだ残っている。コスタリカとベルギーである。

ベルギーはFIFAランキング11位、もともと強いチームだ。しかし意外といっては失礼だが、ここまでの活躍を予想していた人は少なかったのではないか。


このベルギーの快進撃を支えている一人。それがロメル・ルカク(21)。イングランド・プレミアリーグではエバートンで活躍するストライカーだ。


今大会でもベルギーのオフェンスのエース。3試合に出場し、1ゴールをマークしている。前回のアメリカとの死闘では延長戦から投入。ピッチをかき乱し、延長前半終了間際にゴール。値千金の決勝点をあげた。日本のある国営放送のスポーツニュースは「祖国に貴重な得点を捧げた」みたいなコメントを添えていた。


さてこのルカク、ルックスから見てご想像の通り、ルーツはアフリカである。そう、ンボテの愛するコンゴ。コンゴ民主共和国である。

彼の父はロジェール・ルカク。ベルギーでプレーしたサッカー選手だ。1967年、コンゴはレオポルトヴィル、いまのキンシャサに生まれた。記録によれば、ベルギーには1990年頃に渡り、そしてクラブを転々とする。1994年、1996年にはザイール代表としてもプレーした。


息子のロメール・ルカクは1993年生まれ。つまり父親がまだベルギーのクラブでプレイし、またザイール代表として活躍していた頃に、ベルギーで誕生していたことになる。ベルギーには大きなコンゴ人コミュニティがあるがルカク一家もその一つだ。

実はロジェールにはもう一人息子がいる。ジョルダン・ルカク(19)。いまはベルギーリーグのアントワープに所属するサイドバック。かれはベルギーのU21で現在活躍中だ。


ロメール・ルカクに、話を戻そう。彼は、2009年、弱冠16歳にしてベルギーリーグデビュー、そしていきなり得点王に輝いた。2011年にその才能を見初められ、英プレミアリーグのチェルシーへ。2013年からはエバートンで活躍する。

今回のワールドカップ、ルカクはベルギーのエースとして期待されつつ、チームの快進撃をよそに、その持てる力を十分に発揮できていなかった。第二戦のロシア戦では後半12分、不覚の交代。引き上げたルカクにウィルモ監督は握手の手を差し伸べるが、勝気な彼はこれを拒否。第三戦の韓国戦ではベンチスタート、出番さえなかった。


決勝トーナメント初戦のアメリカ戦、ここでもルカクはベンチスタートとなった。ゲームは文字通りの死闘。そしてスコアレスドローて迎えた延長戦、満を持してルカクが投入された。冒頭でも触れたとおり、采配は的中。ピッチでひと暴れの上、デブライエのゴールを演出。そして後半15分、今度はデブライネのパスを受け、豪快にゴールネットを揺らした。

ゴールを決めると、かれはカメラに走り寄り叫ぶ。
「オヤジ、大好きだぜ!」« Je t’aime papa ! »

ルカクはゲーム後、こう回想している。
「パパは僕が5歳の時から、自分の最初のコーチで、最初のサポーターだったんだ。あの時、喜びを伝えたいって。そう思ったんだ。」
« C’est mon premier coach et mon premier supporter depuis que j’ai cinq ans... A ce moment, je pouvais vraiment le féliciter ».


このアメリカ戦は現地時間の7月1日、コンゴ民主共和国の独立記念日の翌日だった。ルカクの活躍にベルギーは酔い、コンゴも歓喜に包まれた。思えばコンゴとベルギー、植民地と宗主国。両国にはその一言では片付けられない、ただならぬ歴史がある。しかしキンシャサで暮らしてみると、両国が、両国の人々が、歴史の中で深く結ばれ、好むと好まざるとにかかわらず、切っても切れない関係にあることがわかる。ルカクの活躍。そんなことにも思いを馳せる一ページになった。


そして日本時間の今夜、深夜25時、ベルギー対アルゼンチン、運命の一戦が訪れる。がんばれ、ルカク。コンゴ魂。

(つづく)

◆コンゴとベルギー
前編~ベルギー統治がもたらしたもの
後編~二つの国を結ぶ切れない関係
続編~アンゴラ領カビンダのお話

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