
これは字幕を引っさげて日本全国行脚公演をしたらいいね。劇場で戦闘機が物凄い騒音で墜落する音が二度響く。爆発音!5人のタンメーたちが共有する無意識の夢が戦闘ヘリを操縦して海に沈没させる!タンメーたちのユンタク(おしゃべり)が戦後をあぶりだす喜劇タッチのお芝居は、オムニバス風に、過去の記憶を手繰り寄せる。そしてそれらはすべて現実と重なっていく。
友豪さんや内間さんが出ることによって、やはりウチナー芝居ではなく、演劇なんだね、とSさんが話した。なるほどだった。
戦後沖縄を生き抜いてきた5人のタンメーたちが主役の現代沖縄語芝居である。ウチナー芝居の新劇だと桑江常光さん!
ウチナー語で書かれた脚本が収録されたパンフが無料で配布された。あらすじはラジオ体操仲間の5人の70半ばを超えたタンメーたちのユンタクである。ユンタクから戦後沖縄が笑いとユーモア、ペーソスを伴って浮かび上がってくる。タンメーたちが共有する戦後沖縄の体験と個別の物語が交差し、そしてー。
5人の話題の中でアメリカ人の女性をハーニーにした一郎タンメー、その60年後の孫の話の筋書き、闘牛が今でも人気で弁務官もとりこにした話、沖縄の薬草の筋肉増強剤、馬ハラセーの話、村芝居に出る美しいまつと一郎の恋、朝鮮軍夫と島の女性の物語り、その悲劇の底にあった同じ島の男のねたみのおぞましさ、(男のうらごーさを描いたのはあまりないので斬新に思えた)。被害者=加害者のウチナーンチュの体験した戦場。スクラップで基地建設で現在の沖縄財界をリードする企業も存在。無料のスクラップを売買して膨らんだ歴史。密貿易の女王、宝箱探しの中身にI Love youの真実!ベトナムで死んだ米兵の死体洗いと棺桶納めなどの仕事のエピソード。ベトコンのマネをさせられた沖縄の村人たち。249種類の蟻の実在。その内39種が沖縄だけに存在する事実にも驚く。
戦闘ヘリに乗って海に墜落するタンメーたち、そして中城情話の恋の行方を応援するみんな!
本部十人組の「群舞」(戦果挙ぎやー)
一、ヤマトゥ世やあらん(うね)
アメリカ世んあらん(うね)
うちなー世どぅやる(あり)
わったー島や(やさ)
ニ、本部十人組(うね)
台湾香港上海(あり)
闇あちねー(やさ)
三、国境や無らん(うね)
海や皆ぬ黄金原(うね)
法度たっぴらかち(あり)
いっとーばい(やさ)
四、みるく世作らな(うね)
アジアぬ人ぬちゃーとぅ(うね)
互に手結でぃ(あり)
生ちちいちゅん(やさ)
主題曲で舞踊がはじける!ウチナーウィキガたちの心意気が鼓舞するもの!これは100回となく演じられる戦後沖縄の代表作になるね。タンメーたちの春=夢=革命である!
大城立裕氏が編み出した新作組踊(詩劇)があり、一方で語りで戦後沖縄がウチナーグチで対象化されていく劇団創造の大胆な転換は、新たに歴史の根を見据えた試みに見える。
名護宏英さんが全部ウチナーグチで書いた詩劇のような現代ウチナー芝居「道」は1980年代に登場したが、レンブラントの絵画を髣髴させる舞台でもあった。あれから30年経って「劇団創造」は大胆にウチナーグチ現代芝居を打ち出している。それは沖縄のことばの大変革の兆しなのだと云えようか、それともあるべき道筋だったのか?英語、ブロークン英語、大和語も散りばめられた言語のポリフォニーになっている。多言語の流れはますます普通になっていくのだろう。ウチナーグチ、ヤマトグチ、英語、中国語と多様なことば(の渦)があるが、この島はずっとその渦の中にあり続けてきたのだともいえる。英語がやってきたのは1853年のペリー総督の前からである。1816年にはベイジル・ホールを艦長とするイギリス軍艦船がやってきたのだった。そしてベッテル・ハイムがやってきた。中国人も日本人も(薩摩人だけではなく)南蛮人もやってきたのだ。朝鮮人もまたー。
脚本と演出の調和は年季を感じさせる。幸喜さんの元気そうな姿があった、又吉さんの寡黙な表情の中のパトスがあった。いいね。ウチナーウィキガの心意気はいいね。そこから次は?
新演劇と呼ぼうと大城立裕さん!新沖縄芝居(現代演劇)だね。戦後を描いている。「タンメーたちの春」である。「アンマーたち夏」があった。アンマーやタンメーたちのうりずんは?アンマーたちの冬、タンメーたちの冬はちょっとそぐわないね。春と夏の二作がそろった!
劇場を破壊するようなB52の騒音に耳を両手で押さえていた!これが現実のシュールでリアルな沖縄である!
演技、演出、イメージなど書きたいがちょっと時間が取られる。三郎の裕吉さんの演技が個性的で異彩を放っていたようなー。アメリカ女性に惚れられる扮装と演技、台詞回しは當銘さん、高宮城さんはこなれて聞こえてきたと周りの女性たちの評判である。幸喜演出のパターン化した色合いや型があるのは、例えばすべてカチャーシーで踊って終わるような雰囲気は、厳しいリアリティーを緩和せざるをえない亜熱帯の島(人)への呼応であり、いわば応援歌だと見ていいのかもしれない。伝統芸能の根と現実のテーマがハイブリッドされる。ことばとリズムと歌舞、ダイアローグ、強烈なイメージ(音を含めて)がインパクトを与える。
植民地(占領地)の男を情夫にしたアメリカ軍族(妻)の話は意外性でひきつけた。倒錯する性のカオスは従来占領地の女を情婦にし、時に妻にしアメリカに飛んで帰った多くの米兵の中で異彩を放つ。多くのパンパンガールが誕生した沖縄だった。そのひきつけ方は面白い。そこだけシーンと劇場が静まり返った。セクシュアリティーの粋と蜜は数多の人々の生・死・聖・愛の源ゆえにー。それからエロスの反対の「死」はベトナムで死んだ兵士の死体処理である。死体は洗浄され、冷凍して綺麗に棺桶に納められ本国に送り返された。そして「愛」である。『中城情話』は永遠のあこがれの世界か。映画「ナビーの恋」もあった。船に乗って漕ぎ出す恋の行く末はニライカナイへ?『春』はいつでもめぐってくる!夢=恋=革命=爆音=はじける歌舞!
しかしこの劇の圧巻は劇場を破壊せんばかりのB52の爆音と爆発音である!この生の音を全国で響かせてほしい!B52にとって替わって今はオスプレイであり、F15、F22、F35戦闘機である。F-15イーグル とF-22ラプター とF-35 ライトニング の金属音が空から降ってくる琉球の島々の変わらない夏!ステルス機は目に見えなくなるが轟音を撒き散らす。