オフィシャルサイトでこのFROM DEPERESSION TO_のDUM SPIRO SPEROが発表された時、費用がかさむことを理由に遠出をするつもりはありませんでした。ただ、もしこのツアーでDUM SPIRO SPEROを見る機会があるなら、京都だろうとは思っていました。日程的な問題と、もう1つはDSSのアートワークが和洋折衷の仏像だし、あの緑を基調としたアートワークだったりで漠然とあの雰囲気に一番似合う土地といったら京都だと感じてたからです。実を言うと遠征しだしたツアーはこのDSSが最初で、AGE QUOD AGIS、IN SITU、TABULA RASAと鹿児島や神戸にも行ってきた思い入れの強いアルバムです。でもGHOULは大分が台風で行けず、武道館も行けなかったので、消化不良感が残ってはいたんですけど、このアルバムのツアーなんてもうないだろうし仕方ないなんて割り切っていました。だからその時のことを思い出して、改めて考えてみたら、今しか見れないもの、もう一生見ることは無い、聞くこともない曲もあるだろうし、人間いつ死ぬか分からないからと考えが変わっていきました。やっぱDIR EN GREYは僕の中で特別なので。そしてどうせなら2days行こうと思い、京都に行くことになりました。
大阪のsukekiyoの時はカプセルホテルを利用しましたが自分にはあの環境は無理だなと感じて、いくつか探している内にかなりお得なパックツアーを発見し、DECAYSの時よりもはるかに安い値段で遠距離の京都まで手配をすることができました。京都駅に降りたときのコンコースの高さに感動しました。ああこれがガメラとイリスが戦った場所かなんて思いながら見上げつつ、すぐさま市電に乗り込むとなんと外人が5:5位の割合で埋め尽くしていて流石観光都市と思いつつ、ホテルが近くにある伏見稲荷大社へ行きました。結局山も全部上って一周して帰ってきましたが、山全体を取り囲む鳥居の数には圧巻すると同時に聖域のような、本当に目に見えない何かが住んでいるような、そんな崇高さを感じました。2日目にはチェックアウトした足で三十三間堂と晴明神社に行ってきました。三十三間堂も圧巻でした。伏見稲荷とはまた違った神聖さというか...。そして晴明神社は町の中に普通に溶け込んでいました。「あ、こんなとこか」という感じで、思っていたよりもずっとおしとやかな建物でした。こういった文化や観光名所と近代建築の建物があちらこちらに混在しているのが京都という町で、年がら年中こういう賑わいを見せている土地なんだろうという印象です。まあ僕はやっぱ福岡ですけどね。
会場のKBSホールも10年位前から知ってますが実際に見てみるとこっちも「あ、こんなとこか」という感じで、かなり築年が古いんだろうと。そこにオフィシャルにも載っていたツアーのイメージスチールが置かれていて、庶民的な放送局と、拘りまくりのバンドのグッズ等等、そのミスマッチ感が新鮮でしたし、入場整列はするものの、スタッフが入り口前で番号を呼び、次々に入場していくという福岡ではあり得ないスタイルで入場規制をしていたのも驚きでした。中に入ってみるとBLUE LIVE広島を大きくしたようなイベントスペース的な造りになっていました。会場のどこからでもステージを見える。音作りも非常にやり易そうでした。
9/16
SE:狂骨の鳴り
1.THE BLOSSOMING BEELZEBUB(Symphonic ver.)
2.DIFFERENT SENSE
3.LOTUS(Symphonic ver.)
4.Behind a vacant image
5.Midwife
6.蜜と唾(Symphonic ver.)
7.DIABOLOS
8.流転の塔
9.「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨
10.Unraveling
11.獣慾
12.DECAYED CROW
ENCOLE
13.VANITAS
14.新曲
15.詩踏み
16.Un deux
17.激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
9/17
SE
1.LOTUS(Symphonic ver.)
2.DIFFERENT SENSE
3.AMON(Symphonic ver.)
4.Cause of ficklness
5.Phenomenon
6.滴る朦朧
7.蜜と唾(Symphonic ver.)
8.DIABOLOS
9.THE BLOSSOMING BEELZEBUB(Symphonic ver.)
10.Unraveling
11.流転の塔(Symphonic ver.)
12.暁
ENCOLE
13.VANITAS
14.新曲
15.詩踏み
16.Sustain the untruth
17.激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
初日は懐かしの「狂骨の鳴り」でIN SITUとAGE QUAD AGISの映像を合体させて再編集したバージョンになっていて、それだけでも懐かしさがこみ上げてきましたが、ARCHEの時の軍服(上半身裸)と帽子で顔と上半身に包帯を巻き巻きにした京氏が登場した時は衝撃でした。
予想通りの「THE BLOSSOMING BEELZEBUB」からの開演。しかもシンフォニックバージョン。固定カメラから映し出させる京氏の姿は、90年代ごろのアンダーグラウンドなパンクスのイメージを感じもしましたが、終戦後に傷だらけの体に包帯を巻きつけたようなイメージや、DSSが震災の時の痛みを引きずっているアルバムだから、その時の痛みみたいなものをまた自分に刻み込もうと、背負っているような印象を受けもしました。アルバム通り「DIFFERENT SENSE」へ繋がり、ブレイクを挟んでの「LOTUS」と続いていきますが、「LOTUS」は何度聞いても個人的に名曲ですね。シンフォニックバージョンだと旋律やメロディの美しさが更に際立って聞こえます。確実に当時よりも今の方が声が京氏は出ていてハイトーンな部分も難なく歌い上げていました。ここから「Behind a vacant image」「Midwife」とARCHEの曲が連続して披露されていきますが、2曲の複雑多彩な部分が、DSSというアルバムにも通じているように感じました。
INWARD SCREAMから当然やるだろうと思っていた「蜜と唾」もシンフォニックバージョンでの演奏。イントロ部分のピアノとストリングスの演奏が悲壮感を煽り、画面に映し出される迫ってくる歌詞も向きがコロコロ変わって迫ってきたりする等変更が加えられていました。懐かしすぎて堪らない。そしてこの後に演奏された「DIABOLOS」。レーザービームも飛び出し、ひたすら人間の業や浅ましさと苦悩する自分自身の姿をステージにさらけ出すかのようなパフォーマンスに、「さあ、人間を辞めろ!!」と絶叫する京氏。この曲がライブの中核的な存在としてグッときました。
「「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨」~正直「Unraveling」の選曲は意外でしたが、DSSのアルバムの流れを汲んでるのでセットリストに組み込まれてても違和感は無かったです。「獣慾」「DECAYED CROW」と畳み掛けましたが、この辺りはDSSの中でも激しい曲のオンパレード、AGAのツアーを彷彿とさせる流れで、まさか本編が終わると思いませんでしたね。それ位、もったいぶっているようなセットリストでした。
アンコールはVANITASでしたが、IN SITUの時に一度聞いたきりだったので純粋に生で聞けたことが嬉しかったです。本当に良い曲やなと思う。その流れをぶった切るように始まった新曲。シャウトメインで次々に構成が切り替わるようなメタル的な感じの曲でしたが未完成の恐らくタイトルすら決まっていない新曲。終わり方もよくわからないまま気が付けば「詩踏み」へ繋がっていました。ラストは、「Un deux」「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」の大合唱で終了。個人的にメンバーもファンも流れについていくのに精いっぱいだったかな?って感じで盛り上がっていたかと思うとそこは正直...な感想でした。京氏も案の定、すぐに帰っちゃったし。
そんな消化不良感を残したまま迎えた2日目。SEは当然「狂骨の鳴り」と思っていた予想を裏切って「バイオハザード7」みたいな退廃した映像が流れる「狂骨の鳴り」よりもずっと暗い印象のSEでした。京氏は打って変わって黒いタイの着いたシャツで、Toshiyaはなぜか目の周囲を真っ黒にしていました。
前日の重苦しい「THE BLOSSOMING BEELZEBUB」と変わって、救いを求めるような「LOTUS」から始まりました。「DIFFERENT SENSE」「AMON」とアルバム収録順に演奏していきましたが、曲調が全く違うこともあって、何か解放していくように、スッとライブの空気の中に入り込めることが出来ました。「Cause of ficklness」の爆発めいた演奏で盛り上がり、そこから「Phenomenon」「滴る朦朧」と曲を重ねるに連れダークな雰囲気を醸し出す流れになり、「蜜と唾」「DIABOLOS」「THE BLOSSOMING BEELZEBUB」とDSSの核心的な楽曲を演奏。聞かせる系の曲が続いているのですが、流れが完璧なうえにその圧倒的な情報量が故にのめり込んでしまい、退屈さとは無縁でした。その世界観を広げていくような演出や表現は、むしろ今の彼らに近い表現方法にも感じました。
「Unraveling」でライブ感を取り戻したと思いきや、面白かったのはここから何と「流転の塔」のシンフォニックバージョンが演奏されたこと。さらに一気に救いを求めるかの如く「暁」が演奏され終了するという、これまで見たことのない斬新なセットリストで本編が終了しました。
アンコールは3曲目まで前日と同じでしたが、敢えて同じ曲順にしたような気もしますね。でも前日よりも反応がよく新曲にも観客がしっかり答えていたので、その後の「詩踏み」では京氏が「かかってこい!」と激しく煽り、「Sustain the untruth」ではステージ上を右往左往している等ライブを楽しんでいるように見えました。そのままラストは「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」の大合唱で終了。
振り返ると、ARCHEとDSSの混同というよりは、DSSという世界をしっかりと表現することに重きが置かれていたと思います。初日は割とこれまでのDSSの流れに準じた形で、完成されたものを呈示したような印象でしたが、逆に新しい挑戦という意味では、2日目の方がその向きが強かったと思います。流転の塔から暁なんて、当時の彼らには斬新すぎてできなかったし、たぶん、その世界に体が入らなかったと思う。シンフォニックバージョンで結構演奏されていたので、今の自分たちがやりたいことを貪欲に詰め込んでいってた気もします。挑むよりも体に染みついたものをどう刺激的に出していくかというところに。
だからこそ、これ以上DSSの曲をやることがあっても、DSSそのものに焦点を充てる機会もないだろうと思います。DSSに限らず、否が応でもこれから先のツアーの中で、自分たちの歩んできた軌跡を見つめなおしながら、自分たちがそこにはもういないということを実感していくんじゃないでしょうか。おそらくそれは見に来てる側にも言えることで、DEPRESSIONというのは僕はDIR EN GREYの軌跡であり、どう見えるかが分からないからこそ_という言葉で表していると。その道のりを見つめながら、また一つ新しい先の未来を描いていけたらなんて思っています。次は11月、故郷福岡で。