Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

蟻地獄

2007年05月31日 | 東京
 日曜日に玉川上水を歩いていて蟻地獄を発見した。樹齢百年以上のクヌギの大木の根元にできた乾燥した穴の中に、三つも見つけてしまったのである。だいたい蟻地獄は乾燥した場所にしか存在しない。かくれんぼで神社の床下にもぐり込んだとき、その地面に敷かれた蟻地獄のあばた模様の絨毯を見たことはないだろうか?円錐状の穴にあやまって落下した蟻は、この穴から這い出そうともがくのであるが、もがけばもがくほど上ろうとする壁面の土が崩れ、外に出ることができない。そしてそのうち穴の奥から現れたウスバカゲロウの幼虫の口に挟まれて、土の中に引きずり込まれ、蟻はその一生を終えるのである。
 なんとなく食虫植物に似ているような気がするが、実はその「トラップ」は異なっている。食虫植物は虫をその香りや味という魅力で「誘う」のであって、欲望に負けて騙された虫がその「落とし穴」にはまる。しかし蟻地獄はただ歩いていて落ちる単なる「落とし穴」である。ようするに自らは穴を掘るだけで、相手の一瞬のすきにつけこんで、食ってしまおうとする「トラップ」なのである。「ハニー・トラップ」が「本能と欲望への敗亡」であるならば、蟻地獄はいわば「拉致・監禁」である。