院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

生物の機能を目的論的に説明するのは不可

2014-02-23 04:00:37 | 生物
(角川文庫。)

 上の本を読んでがっかりした。「キリンの首はなぜ長い?」という設問に「キリンは足が遅いから、早く敵を見つけるため」というようなありがちな説明がついている。こういう目的論的な単純な説明ではダメなのだ。

 生態系は何億年という歴史を積んで、すでに「こうあらねばならない」という姿になっているから、目的論的な説明が可能なように感じてしまうのだが。

 すでに毒をもった植物の記事(2012-09-04)で述べたけれども、有毒植物は何かの目的のために毒をもっているわけではない。もともと毒をもっているから、それを食べた動物の数を減じて、結果として捕食者の数を調節しているだけである。

 捕食者はある程度の数が有毒植物によって殺されることによって、異常繁殖せずに健康な生態系が保たれている面がある。このように、キリンの首は長いので他の肉食獣が食べにくく、そのため肉食獣は別の動物を食べ・・・アカシアの木は背が高くても、葉をキリンに食べれられ、アカシアの葉はキリンに食べられることによって・・・というように、生態系は複雑精妙なバランスをとっている。

 子どもに「早く敵を見つけるため」と一対一対応で説明するのはよくないだろう。その先に、ほぼ無限に続く生態系の連鎖があることを、ある程度ほのめかしておかなくてはならない。