院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

「心がけ」とは何か?

2014-02-16 06:06:10 | 生活
(毎日新聞社刊。)

 私が大学生のころ学生運動(大学紛争)がなけなわだった。学生による校舎の封鎖や授業のボイコット(学生スト)が行われたりした。ストはしばしば期末試験の前に行われた。そのため、試験を受けたくないノンポリ学生(特定の主張がない学生)をも巻き込むことができた。

 私はそれらの行為を「学力がある青年」の「非行」と見ていた。それらの非行は何らかの思想(屁理屈)によって理論武装されていた。「学力がない青年」だと理屈抜きに暴走族のような形でしか非行を行えないが、どちらも目立ちたがりの破壊主義で根っこは同じだと思った。

 だが、学生運動やっている学生たちは、貧困だったり病気でめぐまれない老人など「弱者」に同情的だった。救いがあるとしたらその辺だろうと私は思っていた。

 学生運動に批判的な女子学生が知り合いにいた。彼女は貧困老人や病気老人に対して同情的ではなく、「若いころに博打にふけったりして「心がけ」が悪かったから貧困になるのよ」と言い放った。当時としてはきわめて珍しい意見だった。

 確かに貧困老人の中には、若いころ「遊び人」だった人もいるかもしれない。しかし、病気になったのは不運でしかなく、本人の「心がけ」のせいではないでしょう、と私は女子学生に迫った。そうしたら彼女は、「老いれば病気になることもあるのだから、若いうちから備えておくべきなのよ。やっぱり「心がけ」が悪いのよ」と応じた。

 なんと極端な考え方かと私は思った。女子学生は当時から難病をもっていた。だが現在、彼女には孫もいて、立派にやっている。難病は治っていないが・・。

 彼女の「心がけ論」は、案外、突拍子もない意見ではなかったのかもしれない。