院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

映画製作者の殿様商売

2013-04-23 00:44:23 | レジャー
 名古屋に新しい映画館ができたとテレビで報道していた。座席が振動したり、風が吹いたりして、映画の内容をさらにリアルに体感してもらうのだいう。最近、映画館まで足を運んでくれる人が少なくなったための工夫だそうだ。

 だが、まったく同じコンセプトの映画館が30年前にもあった。すぐに飽きられて潰れてしまった。今回の映画館もリピーターを掴めないだろうことは、ちょっと長く人生をやっている者なら分かる。

 映画館に行かなくった客は、こけおどしの仕掛けでは戻ってこない。映画の見せ方と映画のコンテンツそのものに問題があるのだ。

 まず、映画が始まる前のCMをやめることだ。お金を支払って席に着いてしまえば、CMが延々と続いても客は帰れない。帰れないうえにお金を支払ってまでCMを見たくない。そんなことくらい映画館は分からないのだろうか?

 もう一点、映画が「つかみ」をおろそかにしていることである。「つかみ」とはストーリーが始まると同時に客の心を掴んでしまうことだ。

 小説なら最初の10行で読者の気持ちを掴まなければならない。そうしないと読者は本を閉じてしまうだけだ。漫画なら最初の2,3ページで読者を「先が読みたい」という気持ちにさせなければならない。

 「つかみ」はいま流行の詰まらない芸人たちでさえ行っている。映画には「つかみ」がない。最初のうちは意味が分からない映画が多い。始めの意味が分からない部分は、のちのストーリーの伏線になっているのだが、「つかみ」がないから見るのにエネルギーをしいられる。そのようなことが許されるのは映画館が前払い制だからである。

 前払いしてしまった客が帰れないことを見越しての映画の構成なら、リピーターを掴めなくても当然である。コンテンツそのものが客本位でなければ、映画館が座席を振動させたり風を吹かせたりしても、なんの足しにもならないのだ。