新タマネギ

　新ジャガはおいしい。蒸かしても炒めても煮てもおいしい。こんなにおいしい食材がほかにあるのだろうかと思うほどである。

　新米もおいしい。米粒一つひとつが銀色に立っている。佃煮だけのおかずでも食べられるが、おかずがなくても食べられてしまう。

　新ジャガや新米がおいしいのは、むろん新鮮だからだろう。

　今、新タマネギの季節である。家内は「やっぱり新タマネギは違う」と言う。しかし、新ジャガや新米はおいしいと思うけれども、私は恥ずかしいことに新タマネギのおいしさが分からない。

　新タマネギも取り置いたタマネギも同じように感じてしまう。新ジャガや新米がおいしいのだもの、新タマネギもおいしいに決まっている。

　昔、田舎の精神病院に勤めていたころ、周囲にタマネギ畑があった。患者さんが捨てられた新タマネギを拾ってきて、そのままかじっていた。でも、私には辛くて、その味が分からなかった。

　たぶん、おいしいのだろう。辛味に苦手な私は、いまだに新タマネギのおいしさが分からない。