天津風(あまつかぜ) 雲の通ひ路(かよひじ)吹き閉ぢよ
をとめの姿 しばしとどめむ
僧正遍照 「古今集」
[訳] 空を吹く風よ、天女が帰っていく雲の中の通り道を吹き閉ざしてしまえ。あの美しい乙女の舞い姿を、もうしばらく地上に留めておきたいのだ。
NPO法人なごやか本部へ届け物にやってきたところ、理事長が玄関に立って深々と頭を下げている。
相手はミス・エイスワンダーだった。
理事長とともに各地を転戦し、法人をここまで育てた方。
車が見えなくなるまで手を振った理事長は、やがて前掲の和歌をそらんじた。
後ろに控えていた私は、これが彼の言う独座観念というものなのだな、と粛然たる思いがした。