ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

ご利益

2017年08月07日 | 末広がり

  地域密着型ケアハウスを具体的に計画しはじめていたころのこと、県央の施設を見学させていただいた。
あちこちに干し柿が吊るされた、明るい色の外壁の建物に入って行くと、介護職員が押す車イスに乗った上品な女性入居者に玄関で出くわした。
職員でも、利用者でも、『第一村人』が感じの良い施設は総じていい施設であるというのが持論なのだが、なにげなくその車イスに目をやり、驚いて二度見してしまった。
側面の金属製のネームプレートに、八木八千代(注:仮名)と刻まれているではないか。
ああ、奥様、末広がりの素敵なお名前ですね、と声を掛けると、相手の顔がパッと明るくなった。
ひょっとして、米寿でいらっしゃいますか?
すると彼女はウインクしかねないほど茶目っ気たっぷりの表情を浮かべて答えた、
「いいえ、それは昨年終わりましたのよ。」

  この一年半後に発生した東日本大震災に伴う大津波によって、その法人の施設はグループホーム、デイサービスなどほとんどが流失したのだが、少し離れたところにあったケアハウスだけはかろうじて難を逃れ、多くの地域住民たちの避難場所となったと後日報道で知った。
これはきっと、八木八千代さん(仮名)の末広がりのご利益に違いない、と僕は記事を読んでひとりごちた。

コメント
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