goo blog サービス終了のお知らせ 

ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

追悼ジェーン・バーキン

2023年07月21日 | フランス映画

 ジェーン・バーキンが8年ぶり三度目の来日公演を9月6日、仙台でも行なった。昨年、彼女の「無造作紳士」がテレビドラマの主題歌に使われたことでベストアルバムが三十万枚以上売れ、それが今回の時ならぬ(?)来日につながったようだが、それはそれでいいだろう。

※  ※  ※

 実に11年前(1989年)の初公演は、五反田ゆうぽうとで観た。

日本ではひと握りの熱烈なファンというか、マニアの間でのみ知られていた彼女のこと、来日はそれこそ奇跡、もう二度とないだろう―そんな興奮と緊張で、当日は朝から心臓が口から飛び出しそうだったのだが、そのうえ、席に着くと斜め後に(ジェーンの大ファンとして知られる女優)小林麻美を見つけ、さらにクラクラめまいがした。

 一方、前回1991年の再公演(於昭和女子大学人見記念講堂)は、その前年に急死したジェーンの二番目の夫で、彼女に歌手のキャリアを授けた才人セルジュ・ゲンズブールの追悼コンサートという性格のものだった。厳粛な雰囲気の中でしずしずと進行していくステージは、一種忘れがたい印象を残した。

※  ※  ※

 ピンスポットライトを浴びて登場したジェーンは、黒いタンクトップにグレーのカーゴバンツ、バスケットシューズと、いつも通りの超シンブルな服装。一曲目はセルジュの「フォード・ムスタング」だった。

バックバンドは四人編成ながら非常に厚く重い音を出す。この意外な選曲には驚かされたが、二曲目以降は「バビロンの妖精」、「シック」、「コワ」、そして「 無造作紳士」と、まさにベスト・オブ・ジェーン・バーキンだ。その合い間に、アラン・スーションと共作したという新曲や、セルジュの「コーヒー・カラー」、さらにはアップテンポのビート・ボップ調にアレンジした「さようならを教えて」(セルジュがフランソワーズ・アルディに書いた大ヒット曲)など、珍しい曲も織りまぜたリラックス・ムードの楽しいステージ構成だった。

 アンコールを求める拍手に応じ、ジェーンは一人ア・カペラで「ジャヴァネーズ」を歌った。セルジュがジュリエット・グレコのために書いた初期(1962年)の代表曲。グレコやセルジュ自身のバージョンとは違った、素朴さが胸にしみた 。

僕は立ち上がり強く手を振った。さようならジェーン・B 。コマン・トゥ・ディル・アデュー(「さようならを教えて」の原題―「さようならを言うのは苦痛だ」の意)。

(2000年9月)

 

ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「欲望」(1966年)登場シーン。

まだ痩せていた主演のデヴィッド・ヘミングスと。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

指名手配

2023年05月01日 | フランス映画

 NPO法人なごやかの事務局員が困惑顔で報告にやって来た。

さきほど、石巻市の〇〇様と名乗る方から、そちらの理事長さんは映画に詳しい井浦さんという方ですか、という電話がありました。それで私は、映画に詳しいかどうかはわかりませんが、確かに当法人の理事長は井浦と申します、と答えたところ、相手は石巻市で小さな映画館を兼ねたホールを運営しており、今度そこで「太陽がいっぱい」を上映する映画祭を企画している、ついてはひとづてにフランス映画にお詳しいと聞いている井浦さんにトークゲストとして上映後に15分ほどお話ししていただけないか、というお話がありました。どのようにお返事したらよろしいでしょう?

確かに、その井浦は僕のことだと思う。どうやら指名手配がかかったようだね。人前に出るのはいやだけど、求められたらそれに応えるのが僕のモットーでもあるので、お受けする、当日は万障繰り合わせて参加します、とお返事してください。

でも、なにを話そう?

パリでアラン・ドロンと握手した一生の自慢話?

マリー・ラフォレのレコード・コレクションのこと?

原作には、ニューヨーク出身でプリンストン大卒=アイビー・リーガーのフィリップ(ディッキー)・グリーンリーフの行きつけの店がブルックス・ブラザーズだという記述があるって豆知識?

 

フィリップのレジメンタルストライプ・ジャケットを羽織って自己陶酔のトム(ドロン)

 

 

マリー・ラフォレの娘は映画監督になり、孫は女優になった。驚きだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

メルセデス

2023年01月13日 | フランス映画

 今年は珍しく年末年始に少し時間が空いたので、「モンテ・クリスト伯」の映像作品を何本かまとめて観た。

1988年のロシア映画は初見だったが、意外にも拾いものだった。

モンテ・クリスト伯=エドモン・ダンテス役は背が高いだけで、それこそドストエフスキーの小説にでも出てきそうな陰気で古色蒼然たる男優だったが、ヒロインのメルセデスと太守アリ・パシャの娘エデを演じている女優がどちらも適役で、最後までそれなりに面白く観れた。

やはり名作のヒロインは立派でないと、と単純に思う。

(イザベル・アジャーニ似のメルセデス役の女優は若くして世を去っているのだそう。)

 フランスとハリウッドを行ったり来たりした男優ルイ・ジュールダンがダンテスを演じたフランス映画(1961年)は逆に恋人メルセデス役の女優が美しくなくて、かなりの驚きだった。これでは無実のダンテスが14年に渡るシャトー・ディフでの獄中生活に耐えられそうもない。というか、ニヤけ顔のジュールダンは軽薄なピアニストを演じた「忘れ時の面影」が出演作では最も良かったが、線が細すぎて復讐に燃えるダンテスにはだいぶ迫力不足だ。

 

名場面、息子アルベールを決闘で殺さないでと懇願しに現れるメルセデス(3:06:50)

 

BBCのテレビドラマシリーズ(1964年)から、同じ場面(18:14)

 

1998年のミニ・テレビ・シリーズ。ジェラ―ル・ドパルデューと名花オルネラ・ムーティ

同じ場面(16:13)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「マンチェスターとリバプール」

2022年10月31日 | フランス映画

 

 

 好きな女優を尋ねられると10回に8回はマリー・ラフォレと答える。(残りの2回はバルドーとジーン・セバーグだ。)

「太陽がいっぱい」(1960年)で鮮烈なデビューを果たしたマリー・ラフォレだが、彼女はもともと歌手志望だったためか、女優としてのキャリアを築くことにあまり欲を持っていなかったように見える。どこかいつもなげやりで、そこも大きな魅力なのだが。

「マンチェスターとリバプール」(1968年)は「恋はみずいろ」などで有名なアンドレ・ポップの作品で、マリー・ラフォレ最大のヒットとなった失恋の歌だ。

 

「太陽がいっぱい」の初登場シーン。フラ・アンジェリコ(宗教画家)、ギター、ラフォレ、押しの強いモーリス・ロネ。最高だ。

 

マンチェスターとリバプール

 

マンチェスターとリバプール

私は思い出多い名の通りを歩いている

この雑踏の中

見知らぬひとたちの中を

 

マンチェスターとリバプール

私はずっと旅してきた

失くした美しい愛を求めて

私の知っていたあなたを求めて

 

愛してる、愛してる

独り言のようなあなたの声

愛してる、愛してる

私は何度も繰り返し思ったの

 

マンチェスターは悲しみにくれ

リバプールは海の上で泣いている

どうしていいか分らないの

白い船は冬を恐れている

 

マンチェスターは雨の中

そしてリバプールはもう見つからない

今日の霧の中で

愛も失くしてしまった

 

愛してる、愛してる

あなたの独り言に耳を傾ける

愛してる、愛してる

あなたがもういないのは分っているけど

ラララ…

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

声優

2022年06月27日 | フランス映画

 もうずいぶん前の話だ、赤日新聞の第一面に、二基の深海探査船ジュールス号とジム号を搭載したフランスの海洋調査船が来日した、というニュースが掲載された。それを見て、たぶん10万人くらいの日本人がツッコミを入れただろう、それは英語読みせず、ジュールとジムー「突然炎のごとく」の原題で、そのネーミングこそフランスのエスプリを感じさせるものではないか、と。文化部もあるのに、大新聞社も縦割りか。

 テレビ放映された「突然炎のごとく」の日本語吹替版がある。ジュールは富山敬、ジムが堀勝之祐。堀は同じトリュフォーの「隣の女」で主人公ベルナール(ジェラール・ドパルデユー)の声を当てている。隣家に越してきた昔の彼女マチルドへ次第に妄執し狂って行く凄みをよく表していた。マチルドは田島玲子だった。(以前も書いたが、この録画テープだけは捨てられないでいる。)

堀は僕らの世代だと電線マンの声。「隣の女」の吹替版を観るまでこのひとにあまりいい印象を持っていなかったのは、たぶん、スコット・ウイルソンの声を担当していたからだ。旧版「華麗なるギャツビー」の修理工、「傷だらけの挽歌」の強盗団員、「冷血」の殺人犯。

 そういえば、「さらば友よ」では堀がアラン・ドロンを当てているバージョンがある。野沢那智版の方が先で有名だし、ブロンソンは大塚周夫と最強なのだが、堀のドロンに、ブロンソンが森川公也なのもなかなかいい。森川は「ゴッドファーザー」正続編でトム・ヘイゲンことロバート・デュバルを担当した渋い声の持ち主だ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする