長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

八千代獅子

2010年03月15日 01時51分49秒 | お稽古
 箏と三味線と、両方演奏なさる方も多いが、楽器に対する志向性は、はっきり分かれるような気がする。私は箏の音色も好きだが、13本も絃がある楽器なんて、とてもとても使いこなせそうにない。…3本の糸でどんな音でも出せる、単純ながら無限の掛け算の魅力がある。それが三味線のいいところ~♪で、いつの間にか四半世紀を超えて付き合う羽目になった。
 以前、はじめて地唄の曲を演奏する機会があったときに、その微妙な速度の曲運びに、大変てこずった。今でいえば、「イライラする」。まあ、確かに三十過ぎた頃だった。
 長唄は江戸・東京のものだから、テンポもすっきり溌溂としている。それに対して地唄のテンポはどうにも、ゆったりしすぎて間延びしてるような感じで、参った。
 しかし、それが不思議なもので、何度も弾いているうちに、その焦燥ともいえるまったり感が、この上なく快感に思えてきた。あの、ウヴィーン、イン…という揺らぎが何ともいえずいい感じに変わっていったのだ。
 そのとき、東京生まれの谷崎潤一郎が、なぜあんなに上方を愛好するようになったのかが、何となくわかったような気がした。

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