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長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

半田稲荷

2025年07月07日 11時15分45秒 | お知らせ
今日、明日と新宿区内藤町、四谷の大木戸そばの四谷区民ホールにて、一般社団法人・長唄協会の、夏季秋季合同演奏会が開催されます。
7月8日(火)の秋組に、私ども杵徳会社中も出演致します。
出曲致しますのは文化十(西暦1813)年三月、江戸中村座にて、三代目坂東三津五郎が初演いたしました、月毎に寄せた12題の舞踊からなる『四季詠寄三大字/しきのながめよせてみつだい』のうち、2月の曲「半田稲荷/はんだいなり」です。

当家の曲『菅公』でもしばしばお世話になっている、囃子方の梅屋勝六郎先生の御縁で、舞踊の地方で二度ほど勤めさせて頂きました。
今回は素の演奏で、原曲の持つ飄逸味と、伝統文化本来の温もりのある面白みが出せたら…と鋭意努力中です。





写真は、前年舞台の御礼参りに伺った折の、銀杏の黄葉が素敵な境内の様子です。





お狐さまが七日ばかりの月を見つめる後ろ姿。


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水無月朔日、雨中の蔦重。

2025年06月25日 21時50分00秒 | 美しきもの
本日は旧暦ですと平成七年六月一日となりまして、明け方4時ごろ東の空に月が昇り、宵の7時、お陽様と共に西の地平に沈みます。

さて、昨日初日を迎えました東洋のヴィーナスを描いた鳥居清長の特集展のトピックスを少々。
ご覧いただけますのは、我が学生時代の恩師・横山實(みのる)先生が、半世紀余りの歳月をかけて蒐集されたコレクションの一部です。





歌舞伎好きの方には歌舞伎座の看板絵でもお馴染み、鳥居派の絵師、鳥居清長(とりい/きよなが)。
画業の初めは菱川師宣に似た古雅なタッチでしたが、何が清長を発奮させたのか…創意工夫、奮闘努力して独特の画風を確立するに至りました。

鈴木春信にそっくりの初期の錦絵から、磯田湖龍斎(NHK大河ドラマ“べらぼう”では鉄拳さんが演じました)の雛形若菜にヒントを得た中板、そして、清長の代名詞となる八頭身美人の大板浮世絵まで、清長の画風の変遷が一目で分かる展示となっております。

清長の浮世絵は海外の方に人気があり、日本国内では中々見られない名品の数々、是非お立ち寄り下さいませ。



『浮世絵類考』はその昔、浮世絵のことを知りたい者には必携の書でした。
大田南畝(蜀山人:同じく桐谷健太さんが演じています)が撰し、後年笹屋新七が加筆し、山東京伝(同じく古川雄大さんが演じています)が更に追記し、補足が後の方々の手によって加えられ、今日に受け継がれてきたとのこと、現代で言えばウィキペディアの如き形態で纏められた本なのです。
横山先生の私家本の随筆集、『浮世絵尽くし』。
ご自身の浮世絵コレクションの発端から、蒐集のエピソード、講演会記録、長唄とのコラボライブ企画・UKINEなど、貴重なお話が纏められています。

そして本展では、大河ドラマ『べらぼう』放送の今年に寄せまして、蔦重(蔦屋重三郎:横浜流星さん主演)印の入った三枚続きの大判錦絵や、遠景に至るまで細部が美しく当時の江戸の日常風景を写し込んだ“洗張り”など、4点を特に展示しております。

また、“風流十二気候 きさらぎ”図中に、水野美紀さんそっくりの眉を落とした内儀さんの顔も…



北品川遊興図には、ひょうろくさん? いや、寧ろえなりかずきさん?…によく似た方も…(表題写真の浮世絵をご覧くださいませ)

更に…! 馬面太夫を熱演した寛一郎さんファン必見、永寿堂・西村屋さん(同じく西村まさ彦さんが演じています)板元の、天明三(1783)年刊行、吉原俄の図も目近くご覧いただけます。
浄瑠璃“富本豊前太夫…富本豊志太夫”の連名も胸熱。
長唄(名賀唄)ファンには名見崎徳治、名見崎市太の名前が見えるのも嬉しい。



きもの好きな皆さまには、浮世絵の中の衣装の意匠も目に愉しい一時となりますこと請け合いです。我々はかつて、このような美しく細やかなデザインに彩られた日常とともに暮らして居たのですね…

日曜日29日(日)は夕方5時に閉場しますが、金曜・土曜と、夜7時まで開廊しています。
入場無料です。
炎天の街で一服の涼を…お待ちしております。


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鳥居清長展@武蔵屋画廊

2025年06月16日 02時28分24秒 | お知らせ
一昨年、昨年に続きまして、
今年も横山實先生のコレクション展を下北沢の武蔵屋画廊様にて開催致します。
会期:6月24日(火)〜29日(日)
連日11時〜19時まで開廊しております。

歌舞伎の芝居絵・役者絵の本家、鳥居派の絵師・鳥居清長(とりい/きよなが)の特集です。
今年は大河ドラマ「べらぼう」の影響もあって、浮世絵展が大盛況の模様です。

この、音曲とのクロスオーバーな浮世絵展の抑々(そもそも)は、
10年以前、浮世絵と同時代に存在していた三味線音楽を同じ空間で鑑賞して頂きたい…という願いから誕生したUKINEという企画から始まっております。

展示する浮世絵は、全て江戸時代に製作された本物です。
展示即売会ではございませんので、誤解なきよう、
またチラシ・ポスターに使用させて頂いております図版は、全て、横山實コレクションからのもので、何処かのサイトや他所様の所蔵品を拝借した訳では無い、オリジナルです。

来週火曜日から日曜日まで展示し、また、長唄と謡曲のライブ演奏を致します。
江戸時代に育まれ21世紀にまで幾星霜、人々の手により愛され時空を越えて存在し続ける日本文化に浸っていただけましたら…お時間が許される皆さま、ごゆるりとお過ごし下さいませ。
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謎の青虫 みどりクン

2025年05月31日 09時16分55秒 | ベランダ実記
本日2025年5月31日は、旧暦ですと令和七年五月五日、何と端午の節句でございます。
朝から雷鳴が轟き不穏な空模様…邪気を払うための菖蒲を軒に吊るしている神社やお宅を見掛けると、此方もあやかれそうで、頼もしい心持ちになります。

さて、越冬サナギの記録に取り掛かれぬまま、春生れの母蝶が託した幼虫たちもサナギになって居るのですが、兎も角も私の今現在の最大関心事が、“そは誰人の子なるぞや”問題なのです。



いつもレモンの葉っぱに半身体を乗り出して、機嫌よくこちらを眺めている青虫さんが居ました。
彼は小さい時分から体の色が明るく、薄いカーキ色をしておりました。
若齢からミドリ色とは珍しい…





久しぶりに雲間から富士山が見えた太陰暦皐月二日、
みどりクンが脱皮している場面に居合わせ、はて、どんな幼虫に生まれ変わるのかと、しげしげ眺めておりましたところ、








やっぱり青虫に脱皮したのでした。
ちなみに、レモンアゲハくんが、終齢幼虫に脱皮する直前は↓





クロアゲハさん達が終齢幼虫になる直前のよく育った状態が↓



ダブルの迫力。
それに比べて謎の幼虫さんは↓



終齢幼虫(たぶん)に脱皮した後も↓









今季の当家のベランダには、有り難や、世間でナミアゲハと呼ばれているレモンアゲハの他に、3年ぶりでクロアゲハの幼虫も育っていたのです。



謎の仲良し二人組。
しかし、この若齢から緑な青虫くんはどうも違う種族らしい。
インターネットの検索により、どうやらカラスアゲハの幼虫らしきことが判明。
無事に羽化して己が身分を証して欲しいのですが、先行の蛹達が変色して寄生されていたらしい証左を目の当たりにするにつれ…

無事に育ってね、みどりクンたち……


 



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風薫る5月にもう一つ演奏会があります。

2025年05月10日 09時55分00秒 | お知らせ


おはようございます。
雨の土曜日、皆さまいかがお過ごしですか?
昭和の頃のFM放送番組のイメージでお届けしております。

杵徳会@紀尾井小ホールにご来場下さった皆さま、また、お心を寄せて下さった皆さまに厚く御礼申し上げます。

さて、今月はもう一つ、杵徳社中が参加する演奏会がございます。

5月18日(日)
吉祥寺駅南口徒歩3分、直ぐの武蔵野公会堂にて
午後1時開演(開場は12時半)
午後4時頃 終演予定
全自由席 入場無料

箏曲、長唄取り混ぜまして9番を演奏致します。
我が杵徳会は、藤娘と鏡獅子(上の巻)にて出演致します。

ご来場心よりお待ち申し上げております。
宜しくお願い致します。
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最後の一果

2025年05月09日 06時45分33秒 | 折々の情景
二株あるビアフランカ種のうち、一本に初めて実がなりました。
レモンと呼ぶよりも、枝の掌(たなごころ)の上で桃のような形に実り、見るたびお釈迦様を思い出す極楽浄土な景色が展開し、ベランダの一角で独自な世界を醸し出していました。
まだ完熟していない様子なのですが、葉っぱに新しい食客が訪れるに及び、レモン母胎の負担を考え収穫することに致しました。
パチンと鋏の音がして、檸檬の梢から我が手のひらへ。



ありがとうございます。
おはようございます。
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レモンの花咲く頃

2025年05月03日 06時55分41秒 | 折々の情景
檸檬の木に、実と花が同時に生っている写真を見掛けた。
そのような状態の樹とは果たして実際に存在するものなのだろうか…と漠然とした憧れを抱いていたのだが、実の熟すのを待っていたら、4月の末に花が咲いてしまった。

とても佳い匂いで、毎朝水を上げるたび、我がベランダは至福に包まれる。
遂に趣味の園芸も、アゲハチョウの幼虫たちの食餌の為に檸檬が十数鉢。
昨秋は、2週間毎に30匹程も食客が居たので、夏の終わりに実付きの植木を二つ求め、一つは品種が知れず、形状からリスボン種かと(先週6個収穫済み)。

もう一鉢はマイヤーレモンで、こちらは三つ、加えて当家の一昨年からのマイヤー種からも三つ。
実の重さに鉢が傾いでいたので、もう少し熟すのを待ってから…と思っていたのを、今朝嬉しく有難く収穫しました。



向かって左側の葉付きと大きいのが、お花屋さんから受け継いで育ったマイヤーレモン、右側の後列最右の1個と手前の双子が、私が…と言うわけにはいかない、当家のベランダ生りのレモンちゃん達です。

令和7年の憲法記念日に、平和を考えつつ。
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長唄杵徳会 演奏会のご案内

2025年04月26日 10時41分45秒 | お知らせ
穀雨の候となりまして、きへんの人々…我々日本に住まいする樹木好きな民には、新緑がもこもこと生い育ってゆく嬉しき季節の到来です。

来る5月3日(土祝)、憲法記念日でもありますが、四谷土手を赤坂見附へ下りました、ホテルニューオータニの真向かいにございます、音楽芸術の殿堂・紀尾井ホールにて、我が杵徳一門会がございます。

今回は“長唄(ながうた)を中唄(なかうた)で愉しむ”と題しまして、「鏡獅子」「蜘蛛拍子舞」「楠公」「京鹿子娘道成寺」「俄獅子」など、お囃子入り伝統長唄の名曲11番を、お愉しみやすい短縮版で演奏いたします。

新名取による名披露目もございますので、是非、ご来場下さいませ。

さて、懐かしいプログラムが出てきました。
紀尾井ホールのこけら落とし演奏会です。



平成7年ですから、あれから早や30年。
現在は日本製鉄 紀尾井ホールの名称ですが、当時、新日鐵のご担当の方が、設計段階から当家元・杵屋徳衛へご相談に見えまして、舞台と楽屋は是非とも同じフロアにして欲しい旨お伝えしたのでした。
それは嬉しい事に反映・実現されて、紀尾井小ホールは、邦楽家たちにとりまして心の拠り所となるホームグラウンドの劇場となっております。



全客席250席というのも、マイク無しの生の唄声や三味線の音色を、直にお愉しみ頂くのに非常に適した空間です。

今秋から改修の為に休場になるとのこと、寂しいです。
どうぞこの機会に、日本の伝統文化である古典邦楽をご体感下さいませ。

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すずらん

2025年04月15日 12時23分05秒 | 折々の情景
天気晴朗にして浪高し…
朝から強風にて、ベランダの鳥よけ網がレモン樹の新芽に当たり、気を揉む。
片隅を見遣ると、令和元年に求め、千松・鶴千代と名付けられるも出世魚の如く名を変え、細々と命脈を保ってきた一群れの鈴蘭が、今季も先駆けの1ベルを鳴らしていた。



何かと憂き世、久方ぶりの消息に嬉しき心地して。
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放チョウ大作戦

2025年03月14日 22時20分08秒 | 折々の情景
 これはいかん…
 羽化二日目、お食事の支度もどうにか調って、気がつけば彼の者は、気ままに当家の居住空間を飛び廻り、什器のあちこちに安らい、すっかり居続けの態であった。
 指をひょいと脚先に出すと、私の手に移ってくるほどに慣れてきたのだ。
 これでは手乗り文鳥ならぬ手乗り鳳蝶ではなかろうか…

 一昨年、国書刊行会の創業50周年フェアで『蝶を飼う男』という外国文学を入手した私は、しかし読む間がなく積読のまま放置していたが、もとより、蝶をペットにするつもりもなかった。
 小学何年生だったか忘れた…ある時とても手乗り文鳥が欲しくなり…そのとき既に我が家には犬、猫、金魚、カエルなどが居たのだが、なんとか親を説得して、鳥を飼ってもよいという許可を得た。『ペットの飼い方』というハウツー本を読み込んでいたので、大概の動物の飼い方は心得たつもりになっていた。親鳥を飼い、生まれた雛を手懐ければ、私も夢の手乗り文鳥持ちになれるのだった。

 …しかし、息せき切って小鳥屋さんへ駆けつけた私は、店頭に置かれていた、真っ白で嘴だけが紅いことりの番いに目と心を奪われ、文鳥ではなくその錦華鳥…キンカチョウという鳥を買ってしまった…お店の方がキンカチョウは托卵しない鳥だけど、いいですか?と親切に説明して下さり、母にも念を押されたが、私はどうしてもその白い鳥が欲しくなってしまったのだった。当初の目的の事はままよ、白くて嘴の紅い、あの美しい鳥が手に入るのだ…という悦びの前に手乗り文鳥計画は無力だった。
 結局、自分の指先に小鳥をとまらせて愛玩するという夢は、もろくも崩れた。

 …そんな目先の情動に惑わされがちな自分の性癖を分かっているものだから、生き物の生き死にに関わる立場には決してなるまい…と決めて、小学生以来、ペットを飼うことは無かった。第一、自分の世話さえまともに出来ない私である。



 蝶や、蝶や、汝を如何にせん…
 彼の身の振り方を二日目の晩に考えた。
 ふと、ある夏の夕立の時間帯に羽化して、ベランダに居残っていた一頭がレモンの葉の上で風乗りサーフィンに興じていたことを想い出した。蝶は風に吹かれているのが好きなのである。
 そこで、頂き物のチョコレートの白いリボンにとまったのを、ブランコのようにぶらぶら揺らしてみた。
 どうやら彼もその遊びが気に入ったらしく、じっとしている。



 このまま室内に居ることに慣れてしまっては、自然に帰れなくなる。しかし、外気温が10℃に満たないこの季節に、昆虫を外に出すのは死地に赴かせることに変わりない。
 どこぞの温室で、早生まれのアゲハチョウを引き取ってもらえるところは無いものか知らん……
 それにつけても、還暦過ぎて蝶一匹養う温室の一つも無いとは…甲斐性なしの自分ではある。
 井の頭動物園にもかつては温室が在って、熱帯植物の生い茂る常夏の庭に蝶が飛び交う夢のような空間が存在していた。
 昭和の終わりのバブルの頃、八景島パラダイスに蝶が棲む巨大な温室が出来たことがあった。私にはあこがれの世界で一度行きたいと、新聞記事を切り抜いて持っていたのだが、それも見果てぬ夢のまま、その施設もいつの間にか無くなってしまった。

 ……温室が無ければ、温暖な土地に連れて行ってあげればいいじゃない、と、異次元のマリー・アントワネットが囁く。

 それだ。遠出は時間的に難しいが、関東近県で温暖な土地を探せばよいのだ。
 幸い、当家のレモンアゲハは並揚羽という種族のアゲハチョウであるから、本州に於いて棲息地帯に縛りはないのである。
 思いつく地名に"気温"という言葉を添えて、Google先生のワード検索にかける。
 何という便利なインターネット社会になったものでしょう、今後一週間の天気と最高気温、最低気温の予報が我がたなごころの上に展開する。
 
 

 三日目の昼近く、火災報知機のコードにとまっていた蝶を、彼の寝床である白いリボンで釣り上げて、そのまま、お弁当とともに引き出し式の小函に収めた。
 何かしら感じるところがあるのか、ずいぶんと大人しい。
 お引越し先は、伊豆半島の南端。黒潮の影響で一年を通して温暖で、何より最低気温が10℃前後。凍死の心配もない。

 天城を超え、夕刻、下田についたが、曇り空からの雨が本降りになっていた。
 その日の放蝶は断念して、街なかの花屋で若さまのお食事の手配を。



 …出来ますものは、プリムラ、キンセンカの二種盛り、白菜の菜の花、家より持参のガーベラのようなもの、でございます。
 四日目の朝も雨模様だったが、天気を待って旅程を延ばすことも出来ず、小止みの間に宿を出立した。



 思いがけず菜の花が気に入った様子で、リボンと共にふたたび移動用の箱男となる。
 花壇のような平坦地では雨を凌ぐのも難しいだろうから、丈のある菜の花畑はどうだろうかと、候補地をあれこれ思いめぐらす。
 南伊豆町の里山は、河津桜か桃かアンズか、眼にも心にも優しい景色が広がる。





 モンシロチョウほどには歓んでもらえないかも知れないけれど…嗜好に合うか気懸りながら、昨晩スーパーの野菜売り場で見つけた白菜の菜の花にとまっている彼を箱からそっと取り出し、本物の菜の花に移ってもらった。







 ここなら草間の蔭で雨宿りもでき、激しい海風に遭うこともなく、明日晴れたら、気ままに飛び立つこともできるだろう、と…

 自宅に戻って翌朝は夜明け前に目が覚めてしまった。
 蝶々は無事に過ごしているだろうか…
 西の地平に沈む間際の十三夜の月を見送る。



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ミモザと偽アカシア事件

2025年03月11日 22時20分23秒 | 近況
蜜源植物、という言葉があるそうなのですね。
日曜日は所用の掛け持ちで、蝶の食糧となるに相応しき品揃えのお花屋さんを閲するいとまもなく、稽古の合間に街なか駅近の生花店にて、留まり易い花托の広いものをと、小菊、ガーベラ、アネモネ、そして…ぉぉ、蜜源植物のアカシアがあるではないか! と、チョウが歓ぶ顔(判別できるかはまた別の話ですが)見たさに、取り急ぎ調えました。



しかし、お店では“アカシア”と札が出ていたけれど、どう見てもこれはミモザではなかろうか…
前日の3月8日は国際女性デーでミモザの日と呼ばれていると、日比谷花壇のメルマガにも書いてあったし…
第一、♪アカシアの雨に打たれて…の歌に出てくる華影はこんなじゃ無いし、実を言えばうちの椅子の座布団はアカシアの柄なんですけどね…藤とマメ科の花を足したような形をしているのだ。

一体どうしたことかと、有難きGoogle先生にお教えを乞いますれば…
手っ取り早く言えば、蜂蜜の蜜源植物であるアカシアは単なるアカシアではなくニセアカシアという種類だそうな。
そして、ほわほわの花が咲くミモザの別名が、房アカシア、銀葉アカシアなどと呼ばれるとの事。
都鳥とユリカモメのようなお話。
これにて一件落着。

さて、いち早く冬眠から覚めた当家のアゲハチョウの饗応係としては、賓客の食の加減が気に掛かり…
かの姫君(か若様かは不明)は、居間の天井近い壁紙に同化したまま、月曜日をお迎えに。
せっかく見事に羽化した彼には、せめてこの世に現れた至福というものを味わって頂きたいもので御座る……



困った時の頼もしい心あての花屋さんに、いざ。
早春の鉢物が溢れんばかりに揃って、再び一件落着の心地が致しました。
さて、本日の姫君の御膳は…桜草、マーガレットにフレンチラベンダー、四季咲き撫子、ストック、ネメシア(海蘭もどき)、ローダンセマム(朝霧小菊)の活け造りでございます。



宵っぱりのご気性なのか、室内灯の周りを舞い遊ぶ…





山種美術館所蔵の速水御舟の絵で見たような…まさに友禅作家が写した着物の柄のような形で翔ぶのでした。



花瓶から垂らしたリボンに留まって、月曜日はお休みになりました。
さて、これからどうしたものか…


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蝶屋敷、鳴動す。

2025年03月09日 23時53分45秒 | 近況
西暦2025年3月9日早朝。
迂闊なことに、居間の長椅子の蔭に終齢幼虫が露営(?)していたことを露とも知らず…
この一冬を、彼と共に過ごしていたのでした。
越冬サナギは、寒暖ではなく、昼夜の陽光の差によって季節を知り己が羽化する時を測るらしいのですが、よくまぁ、啓蟄を過ぎたとは言え、こんな季節に…

ともあれ、無事に羽化した蝶を室内に留めることも出来ないので、明るいベランダへの戸を少し開けて放って置きましたら、床に傾いで倒れております。
外気温3℃…瀕死の状態かも、と、指を差し出すと掴まってきたので、再び暖かい居間へ。



観葉植物の鉢の根方で水分補給をしたり、パタパタと自由に舞い遊んでおります。



片付け途中で積んである書誌の凸凹が居やすかったのか、しばしまどろむ本の角。
渡世のため私もそのまま彼を残して仕事に出掛けました。

※上から『没後50年 松野一夫展』図録 北九州市立美術館 2023
2冊目:繊月を見るたび、小学生の時読んだ『空に詩織の…』という漫画のタイトルが想い浮かぶのですが、題とその扉絵の記憶以外思い出せずにいたのが、この正月、迚も気になり始めて、思い付いてインターネットで調べましたところ、鈴木光明先生の掌編である事が判明。私がかつて手にした少女マンガ誌とは違う再編の雑誌でしたが、手頃な価格でしたので入手。50年の時を超えて再読。
3冊目:『古典図説』明治書院
4冊目〜:『季刊 落語』弘文出版 追悼・笑福亭松鶴、❜87新真打とその背景 …昭和の終わり頃、落語と寄席にハマり、当時住まいしていた近所の富士見通りの本屋さんに落語関連雑誌を取り寄せて頂いておりました。ご店主は三遊亭円丈師匠によく似た方でした。

さて、日も暮れて…急拵えではありますが、蝶のお食餌たるお土産を携え家路を急ぐ。



気に入ってくれたようで、ミモザの花房によじ登りジャングルジム様にして遊んでおりました。
はてさて、明日からどうしたものか…

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紅、ふたたび。

2024年12月14日 21時31分07秒 | 近況
 13日の金曜日なので、懸案のスイカを割ることにした。
 雪下の筍…にも等しい珍なる12月の西瓜をどうしたものか…と新たな懊悩の種におびえつつも、甘みが増すかも…と収穫したままの西瓜を天日に干していたらもののはずみで、スイカがころりんすってんてん…と転がって、ベランダの床に落ち、ひびが入ってしまった。
 こんなに可愛らしいものに包丁を入れるなんて…勿体なくて切れない…しかしこのまま西瓜のミイラにするのもしのびなく勿体ない…と無限のモッタイナイの応酬が、有難いことに決着したのである。
 これは天意であろう。

 ずいぶん遠い昔…小学生の頃とっていた学研の科学と学習誌の別冊読み物特集号で読んだのだったか…子どもが海岸で拾ってきた卵ぐらいの丸い石を大切に持っていたが、ある時、屋根に上って「この石は割られたがっているんだ!」と地面に放り投げたら、見事真っ二つに割れて、断面に化石が出現した…という、とある学者先生の短編のエピソードが、ふと、脳裡に蘇った。

 そうなのだ。スイカは割られたがっているのである。
 塩冶判官に遠慮して、やはりここは前日のうちに済ますべきであろう…と躊躇なく包丁で真っ二つ。



 驚いたことに、こんなに小さいのに普通の西瓜と遜色ない大きさの黒い種が出来ていた。
 もっとうらなりの瓜のように白々とした果肉を想定していたのだが、アニハカランヤ。



 まごうことなき西瓜の匂いがして、あの遠くもない灼熱地獄で仏…今夏の甘露のひと時がよみがえる。
 まな板にこぼれた露が甘い。



 国貞だったろうか…西瓜を賽の目に切って供した浮世絵がよぎったが、それほど果肉も無く、ごく普通に櫛切りに。



 手前のギンナンは半田稲荷へ参詣の折頂戴したもの。



 立派な種が八つ、穫れました。
 ふふふふふふ。

 さて、「割れた西瓜に紅を見た…」木枯し紋次郎のサブタイトルになりそうな、まだ暮れないでほしい…片づけに着手する間もなくお正月の支度も出来ないのに…という庵主の気持ちを酌んでか、最後の紅だと思っていた百日草が、またもや、赤い花を咲かせました。



 ちなみにこちらは、先日記事にいたしましたその後の最後の紅↓



 暮れてもなお咲き誇る(単に花柄を摘んでいない…園芸の先生に怒られそうなmy花園…)ジニアなのか、はたまた百八十日草なのか…手摺り際の百日草たち。


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スイカの収穫

2024年12月08日 16時18分39秒 | ベランダ実記
 自分でも訳の分からない状況なので、気を静めるために客観的作業である文章というものをしたためてみむ…と致しまするに、
 先程、うちのベランダで西瓜がとれました。



 きのうは二十四節気のうち大雪でありました。
 この秋口に突如、甘夏の棒苗を一株購入する成り行きになり(この顛末は後日…)、ちょうどよい鉢が無く、根方が土から少々はみだし、上方の根が空気に曝されたままになっておりましたのが、とても気に懸かっておりました…しかし、哀しいかな…季節労働者的演奏会&行事シーズンはshow must go on的に進みます…
 
 ふと、懸案事項の甘夏を植え替えなければ…と思い立ち、鉢を新たに買いに行っている暇がなければ、手持ちの鉢植えで代替できるものはないか…と、ロケットの損傷を積み荷内の別な器具や道具で修理し、乗組員を無事生還させたアポロ13の映画の1シーンが想い浮かんだのです。

 …そこで、実生3年目でありながら、若干大きめの鉢にて育成中のレモン苗(ゆりかご荘の一つ)と、鉢を交換しようと思い付きました。
 その作業は無事済んで……更に、実生のレモンの苗で、ふた粒が密接に生えて、想夫恋や玄宗皇帝と楊貴妃を詠った詩…連理の枝のように育っている鉢へ思いが及び、さてシャム双生児の手術を決断する時が来た…と掘り起こしてみましたら、根が別々に生えており無理なく分けることが出来ましたので、無事に空いていた小振りの植木鉢へ、おのおのを。
 …しかし、何という事、ここへ来て土が足りないことに気がつきました。

 ふたたびNASA地上スタッフの出番です。
 …そうだ、この9月、酔狂にスイカの種を植えてみたプランターに、今は枯れてしまったけれど、余分な土が、あったではないの…!!

 というわけで、ハスラーの手になる撞球の玉の如く、ほぼ奇跡的な顛末ながらもベランダの外界との際の、レモンの鉢の向こう側に捨て置かれておりましたプランターをよっこらしょ、と持ち上げてみましたところ、ゴトン…と、手摺りの向こう側で鈍い音がしました。
 一体何が…そんな錘のようなもの置いてあったのだろうか…鳥が何か運んできたのかしら…
 と、恐る恐る、レモンの向こう側を覗いてみましたら…丸い瓜のようなものが。





 夏も終わって、あだに黄色い花が咲いた…とばかり思っておりましたが、立派に結実していたのでした。
 大きさは、現在生育中のレモンの実よりちょと小さいぐらいです。



 蔓が枯れなければもっと育っていたのかも。
 しかし、植物とはなんと健気なものでしょう。
 負けずにお稽古に励まなくては…

 西瓜を育てたプランターの土を流用するのも申し訳ない気も致しましたが、檸檬にいのちを繋ごうと、二株に分かれた新・ヴィラゆりかごも誕生し、せわしない12月の初旬に暫し、清々しさを補充したのでした。

【追記】
気まぐれに蒔いた西瓜の種から芽が出て花が咲いたのは、いつ頃だったのか…
撮り溜めていた写真を調べてみましたら、
いくつか咲いた花も、終わり際になっていたのを
最後に撮影したのは10月5日のことでした。



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落ち葉

2024年12月04日 16時24分08秒 | 折々の情景
今朝がた、柿の葉鮨にできそうな立派な落ち葉が三枚。
大きさ比較に柿の種を置くのが本筋であろう…と思いましたが、生憎、手元不如意につき、胡桃(クルミ)とアーモンドを添えてみました。

葉っぱが全部落ちたら、棒杭のようになってしまうのかなぁ…と柿の苗の行く末を案じておりましたところ、何と…(*>∀<*)



拡大写真↓



苗から枝分かれした葉っぱが新たに育っていたのでした。
…と言うわけで、柿の苗から柿の木にGrowing upした、血色のよい柿の木の近況ご報告まで。
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