長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

六段

2010年05月18日 00時15分12秒 | お稽古
 「六段」といっても、将棋の棋士先生のお話ではない。「六段の調べ」。筝曲である。
 作曲したのは八橋検校。この八橋検校が72歳で亡くなった1685年の同じ年、ヨーロッパではバッハとヘンデルが誕生している。作曲家として誕生したのではなくて、赤子としてこの世に生を享けた年である。…えへん。日本の音楽って、すごいんどすぇ。
 この六段の調べは、たぶん、そうとは知らず、知らず知らずのうちに現代の日本人が耳にして、記憶している邦楽のひとつだと思う。何とも言えず美しい旋律で、そこはかとない切なさを含んでいる。
 このメロディは長唄にもよく取り入れられていて、「羽根の禿」とか、「五郎」の上調子や、「助六」でも演奏される。そうそう、記憶も新しい先月、最後に聴いた歌舞伎座の舞台の音楽は、六段だった。そのころ、偶然にも私は、地元の演奏会の「蜘蛛拍子舞」のトメのお役目を頂いて、精魂こめて六段をさらっていた。忘れ得ぬ六段ばやりの平成22年の4月だった。
 長唄における六段は、単独で演奏しないで、主旋律にそえて演奏されることが多い。
 主旋律と副旋律、本手と替え手というような関係ではない。
 不思議なことに、主旋律とは全然違うメロディなのに、一緒に演奏して、なおかつ、すばらしい演奏効果を上げるのだ。たぶん、この使われ方は、西洋音楽理論で武装した方には理解できないかもしれない。
 全然違うものを合わせて、絶妙に合わせちゃうという…日本人の発想、というか、感性って、すごい。

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