それはＭＯＲＡＬＩＴＹ。ＣＯＭＭＯＮ ＳＥＮＳＥでなく。

むかーし。ものすごくむかーーーし。

付き合っていた彼がデートの途中で、とある大きな公共工事の現場に車を駐めた。
国産高級セダンを降りて、彼の設計によるその現場を見ながら、ひとしきり仕事の自慢話しを聞いた。
彼が飲み終わったコーヒーの空き缶を大きな穴に放り捨てた。
「なんてことするの？」
「ここは明日には埋められる。あんな缶ひとつなんでもないよ」
「拾って来なさい」
聞こえなかったように「寒いから車に戻ろう」と手を引かれて車に戻った。
彼の好みのエレガントなヒールを履いていた私は缶を拾いに戻れなかった。

決して悪い人ではない。
むしろ、弱いくらい繊細で優しい人だった。そこが好きだった。
いつも微笑みながら私の話を聞いてくれる、甘い顔も好きだった。
仕事が彼を変える。
虚栄を張っているようで痛々しくもあった。

誕生日には歳と同じ数の深紅の薔薇を届けてくれた。
クリスマスにはフレンチレストランの席をリザーブしてくれた。
彼の好みのラブリーなジュエリーやバッグをプレゼントしてくれた。
私の新しい服や髪型には必ず気が付いて誉めてくれた。

結婚の話しは進みつつあった。彼の父の反対を除いては。

ふたりで決めた将来の夢は、彼の父の前で一瞬で砕けた。彼は逆らえなかった。
スポイルされていたと思いたくはないけれど、確かに彼は親を尊敬し愛していたのだと思う。私に優しいように、両親にも優しい。
「この世のすべてを敵に回しても、私を守ってくれる？」
「君を守るよ。だけど親も、家も、仕事も、今の生活も、全部手放さないよ」
レストランのディナーもプレゼントも、そんなものどうでも良かった。
聞きたいのはそんな言葉じゃなかった。

空き缶を、捨ててしまえるそのMORALの低さにも、
彼を変えたその仕事も地位も父親にも、いくら話しても解り合えないだろう違和感を感じた。

闘うだろう。
きっとこの人と結婚したら、私は多くのものと闘うことになるだろう。

大事なことを見過ごして流されてしまう前に、私は別れることを決めた。
たぶん、向かい合って微笑みながらワインを開けた時に。
「君はきれいにしていれば良いよ」


翌週、私は何年振りかで彼の嫌いなジーンズを買った。

（↑ほんとはここでバイクを買った、って書くとカッコイイんだけどね ）






今年のクリスマスナイト、みなさんどう過ごす予定ですか？

お祭り騒ぎを楽しんでね♪　でも、流されないでね。
あなたの本当に探していた彼（彼女）は、目の前にいるその人ですか？


男性も女性も、欲張りは良くありませんよーー　ってお話しでした。




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