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流野精四郎&東澤昭が綴る読書と散歩、演劇、映画、アートに関する日々の雑記帳

重い言葉

2012-11-21 | 言葉
 新聞のコラムを読んで涙することなどめったにないのだが、何日か前の日経新聞春秋欄に紹介されていた森光子の言葉にはなぜか胸が熱くなってしまった。

 歌手の松任谷由実の対談集「才輝礼賛」に収載されているそのくだりは次のようなものだ。
 松任谷由実が訊ねる。
 「(私は)こんなにステージをやってきて、お客さんも喜んでくれているけど、この先に何があるんですか」
 それに対して森光子が答える。
 「飽きないでください。それだけでいいです」
 34歳年長の女優の言葉にユーミンは、「ズッシリ受け止めました」と応じた。

 「ズッシリ受け止め」ることができたのは、それを発したのが、40歳を過ぎてようやく主役の座をつかみ、その後40数年をかけて「放浪記」という舞台を2000回も演じ続けた森光子だからであり、それを受けたのが20歳そこそこのデビュー以来、30数年も第一線のステージに立ち続けてきた松任谷その人だからである。
 私のように飽きっぽく、何もかも中途半端な人間にその本当の価値は分からないだろう。
 松任谷由実が「ズッシリ受け止めた」その言葉の意味は重い、と素直に思う。


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