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流野精四郎&東澤昭が綴る読書と散歩、演劇、映画、アートに関する日々の雑記帳

ありし世に

2010-02-27 | 日記
 私の仕事仲間のKさんが亡くなった。私と同い年である。急逝としか言いようがない死なのだが、いまだにどうにも信じることができないでいる。
 今週の火曜、大事な仕事の場に姿を見せなかった。職場の部下たちが携帯電話で何度連絡をとっても応答がない。これまでそんなことはなかった。心配した彼らが自宅に駆け付けて異変を発見した。
 どうして・・・という思いは尽きないが、皆の話を総合するとここに至るシグナルはたくさんあったような気がしてならない。残念でならないのはそんな状態でも彼が病院に行くのをかたくなに避けていたことだ。

 一見、取っ付きが悪く、頑固な彼だったが、その彼を多くの人が慕っていた。クマさんのような風貌と懐の深い温かさで若い女性たちにもファンが多かった。私の下で働いていた女性があることで心ない連中から非難された時も何かと庇ってくれていたのを思い出す。

 山登りが好きだった彼は、仲間たちと出かける時も入念な下調べを怠らなかった。さまざまな資料を駆使して事細かにコースを下検分し、アクシデントの際の対応策まで考えていたという。
 その彼が、自分自身の健康には無頓着だったのは何故なのか・・・。

 ごく限られた近親者の方々と一緒にその最後の姿を目にとどめた私には、彼のことをいつまでも忘れないでいる義務があるような気がしている。
 私自身がいつまでこの世にいるかは分からないのだけれど。合掌。

  あはれとも心に思ふほどばかりいはれぬべくは問ひこそはせめ    西行法師

  ありし世にしばしも見ではなかりしをあはれとばかりいひてやみぬる  藤原兼房朝臣

  あるはなくなきは数添ふ世の中にあはれいづれの日まで歎かむ    小野小町


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