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流野精四郎&東澤昭が綴る読書と散歩、演劇、映画、アートに関する日々の雑記帳

本屋さんの危機

2022-06-16 | 日記
赤坂の文教堂書店が27年間の営業に幕を下ろし、今月17日に閉店することが新聞やネットニュースで大きく報じられている。
首相官邸も近いことからかつては歴代首相も訪れた店舗だというのだが、これで赤坂から一般書店が姿を消すことになるとも書かれている。直接の要因は入居しているビルの再開発に伴う閉店ということらしいのだが、昨今のネット販売や電子書籍普及の波が老舗書店にも押し寄せ、これに加えてコロナ禍による外出自粛が店頭での販売に影響を及ぼしたのは間違いないだろう。

こうした現象は、音楽業界のネット配信の伸びや楽曲を聴くためのツールの多様化がCDの売り上げを大きく減少させる要因となったこととどこか似ているようである。とは言え、デジタル配信による売り上げがそれを補完し、音楽業界全体が発展しているのならそれはそれで良いのだが、実際のところはどうなのだろう。

一方、出版業界の状況はより厳しそうである。ネットで検索しただけでも、出版・印刷業界全体の売り上げが減少傾向にあることは疑いようのない事実のようである。
クールジャパンの代表ともいわれるコミックについても、紙媒体のマンガ雑誌等の売り上げは20年前と比べてほぼ半減しているというのだ。その反面、コミックの電子市場は前年比20.3%増で、市場の約9割を占めるまでになっているそうなのだが。

こうした現象には様々な要因があるのだろうし、何よりも各分野の当事者の皆さんが必死にその打開策に頭を絞っていることは十分に理解できるので、外野からとやかくいう必要はないのかも知れないのだけれど。
私自身はあくまで一消費者であり、街の本屋さんを愛する一個人の立場に過ぎないけれど、赤坂に限らず私が知っている範囲でもいくつもの書店がいつの間にかなくなっていることは衝撃であり、実に寂しくてならない。

今日の毎日新聞朝刊のオピニオン欄では、『[本屋さんの危機]つながる場 守りたい』と題した特集が組まれていて、その中で直木賞作家・今村翔吾氏の取り組みが紹介されている。
「文学界の『お祭り男』として出版界を盛り上げたい」という志のもと、今村さんは、全国の書店や学校をワゴン車で巡り、各地でトークイベントやサイン会を開き、読者と交流する取り組みを続けているのである。
今村さん自身、廃業の危機にあった大阪府箕面市の書店の経営を昨年引き継いでいるのだが、それもこれも「リアル書店はなくなってほしくない」という問題意識が彼を駆り立てているのだろう。

こうした試みが市場全体の大きな動向にどれほどの効果を生むのかは分からないが、その志はきっと多くの本屋ファンの胸に届くに違いない。
バタフライ・エフェクトという言葉もある。一人ひとりの地道な取り組みがやがて大きな潮流になると、一人の本屋ファンとして願っている。


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