坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

小泉悟「リレーション」

2010年07月04日 | 展覧会
小泉悟さん(1983年~)は、沖縄県立芸術大学の彫刻家出身で、楠を素材とした人と自然との関わりをテーマに制作しています。
・掲載作品「北極グマとオーロラの間」2009年
着ぐるみのような感じで人の顔がクマの顔と合体しています。かなり違和感があるはずですが、木彫の柔らかさ、肌合いでしょうか、生命的な温もりが感じられます。
ギリシャ神話から半獣半身の逸話は限りなく、古代ではそれほど大自然界では人と動物とのリレーションが密接に感じられたということでしょう。
現代が失いつつあるものへの眼差しが感じられます。

●小泉悟「リレーション」
 MEGUMI OGITA GALLERY/開催中~7月17日
 www.megumiogita.com

日本人はやはり富士山

2010年07月04日 | アート全般
富士山の山開きとなり、初登頂の日の出の美しい景色をニュースで見ました。
一年のほとんどを冠雪を頂く富士の稜線の優麗な姿は多くの画家を魅了してきました。
横山大観や林武の富士を思い浮かべる方も多いでしょう。最も伝統的で日本的なテーマであり、どの方角をとっても欠点が見つけられない端麗な姿ほど、絵描きにとっては描きにくい、料理しにくい点があるのです。それだけに富士を描くとその画家の力量がそのまま表れてくるということになります。
2年前に、103歳で歿した片岡球子さんは100歳でなお健筆をふるい、枯淡の境地などひっくり返すほど力動感が画面に息づいています。富士も球子流にデフォルメされ、錦絵のような鮮やかな色彩で、日本美術院の牽引力となりました。
あなたはどのような富士の絵がお好きですか。