音楽中心日記blog

Andy@音楽観察者が綴る音楽日記

Door Number Two

2008年07月30日 | CDの感想
   
○Walter Becker「CIRCUS MONEY」(2008)
 なぜかあまり話題になっていないようだけど、スティーリー・ダンのかたわれ、ウォルター・ベッカーのソロアルバムがリリースされている。前作から14年ぶり。プロデュースは、ジョニ・ミッチェルとの仕事で知られるラリー・クライン。これがなかなかに良いのだ。

 ここには、近年のスティーリー・ダン作品を直接的に連想させる、癖のある曲が並んでいる。レゲエのリズムパターンを使った曲が多いが、もちろん単なるレゲエではない。もっとひねりの利いたもの。繰り返し聞くたびに、楽曲の魅力がじわじわと沁みてくる。クール。

 リードヴォーカルはすべてベッカー本人がとっている。当然上手くはなく、色気にも欠けるんだけど、これまた繰り返し聞くたびに味わいが感じられてくるから不思議だ。この音にこの声という組み合わせが新鮮に思えるのかも。要所要所で挿入される女性コーラスも効果的だし。

 演奏の方もスムース&タイト。4曲目のギターソロがかっこいいなあと思ったら、弾いているのはディーン・パークスだった。
 その後もところどころで印象的なギターソロが出現するので、またディーン・パークスかと思ってクレジットを確認すると、今度はベッカー本人だったりする。やるなおっさん。

 フロントマンであるドナルド・フェイゲンに比べると、ベッカー氏はスティーリー・ダンでの具体的役割が見えにくい人である。でもこの作品を聴いていると、ああやっぱり彼もスティーリー・ダンだったのだなあ、としみじみ実感するのであった。あたりまえっちゃあたりまえのことなんだけど。

 いつまでたってもスティーリー・ダン的サウンドの快楽が忘れられない人は、とりあえず聴いておいたほうがいいと思います。とりあえずここで試聴されるのもよいかと。


 YouTubeにあった予告編的映像。こんなコミカルなキャラの人だったっけ。